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クラブスタッフ女子会#01 彼女たちが働くクラブという場所

 今回の記事の主役は女性クラブスタッフだ。取材に協力してもらったのは、写真左からちむさん(Organ bar)、しおさん(AOYAMA ZERO)、NANAさん(AiSOTOPE LOUNGE)、タマさん(LOUNGE NEO)の4名。彼女たちはクラブの何に魅せられて、職場として選んだのだろう?
 
 
――この座談会はしおさんからの持ち込み企画なんですよね。
 
しお:クラベリアさんでもクラブスタッフにフォーカスした記事をやってもらいたいなって思って。私たちはクラブお女子会という名で3年くらい活動していて。マックスで集まると16人ぐらい。それで、クラブを練り歩いたり。企画のことをLineで、みんなに送ったら大好評で。今日はそのメンバーから、この3人に声をかけて。
 
――クラブスタッフってクラブが好きだから働いているはずだから、クラブの魅力を語ってもらうのに一番相応しいんですよね。それで、みなさんの話からクラブの楽しさが読者に伝わればいいなと思って。まずは、自己紹介も兼ねて働いたきっかけから教えてください。
 
しお:青山ZERO副店長をやってます、しおです。バーでお酒も作りますし、クラブ業務の全般を担当しています。働いたきっかけは、友達がOATHで働いていて、それを見てすごくかっこいいと思ったことからスタートします。その友達が自分と遊んでいる時とは違う表情で、知らない人と接しているのを見て単純に羨ましいなと思いました。それでZEROの前身であるLOOPで遊んでいたこともあって、LOOPの求人広告を見て応募したんです。
 
NANA:新宿2丁目AiSOTOPE LOUNGE、ALAMAS CAFE、AiiROCAFEの3店舗でマーケティング/プレスを担当してますNANAです。長年新宿2丁目やゲイミックスのクラブパーティで遊んでた経緯もあってadvocates(のちにArcH)にアルバイトで入りました。AiSOTOPE LOUNGEの前身、ArcHがオープンするときに、プレスに就任し、それで今に至ります。十何年、LGBTの皆さんと新宿二丁目を盛り上げたい一心で共に日々過ごしています。
 
タマ:渋谷clubasia、LOUNGE NEOのマネージャー、VUENOS、Gladのクラブタイムを統括していますタマです。私は、もともとライブハウスが好きで、高校/大学で周りにバンドをやっている人が多かったのでclubasiaにもよく遊びに行っていました。大学以降、飲食店のバイトで生活してたときに、バイト先が閉店しちゃって。それで、お金もなくなって、あてにしてた年末ジャンボも外れ……。そのときに求人誌でclubasiaの求人を見て、ライブイベントの裏側も楽しそうだなと思って応募してアルバイトとして働き出しました。
 
ちむ:宇田川Organ Barでスタッフをしている、ちむです。普段はバーやエントランス、たまにブッキングもお手伝いさせて頂いています。私は、地元の仙台にいるころからオーガナイズやDJをしていました。昼の仕事の転勤で上京することになり、東京でもDJ続けたいなと思って。先輩にオススメのクラブを聞いたら、それがOrgan Barだったんです。普段は四つ打ちのイベントやクラブにしか行かなかったのですが、今まで自分が聴いてこなかった音楽が流れていました。初めて来たのにお店の人とか演者の人やすごく優しくて。“東京でもアットホームなクラブがあるんだな、ジャンルが違ってもこういう感じならいいな”と思いました。実は働くつもりはなかったんですけど、先輩にDJバーで働きたいと相談をしてたら「もうOrgan Barでいいだろ!」って酔った勢いで店長を紹介されて。勝手に面接日を決められて...今があるって感じです。
 
――働いていて楽しいときを教えてもらえますか?
 
しお:パーティーの一員として迎え入れてくれる瞬間は、嬉しいし楽しいです。クラブでの時間ってその場にいるみんなで作っていくものだと思うので。
 
NANA:みんなで作っていくってことだと、新宿2丁目ってドレスコードがあるイベントが多いんです。レズビアンのイベントで浴衣女子がテーマだとしたら、スタッフはみんな、自発的に浴衣を着て出勤するんですよ。店の中からも一緒にパーティーを作っていく。このあいだ「フンドシナイト」っていうゲイナイトを開催されたのですが、みんなフンドシで働いたときにオーガナイザーも喜んでくれました。男性オンリーなので、働いてるスタッフは、もちろんゲイだったり男性なんですけどね。
 
――なかなか特殊なドレスコードですね(笑)。でも、一体感を作るってそういうことですよね。タマさんは働かれて長いですけど、何かありますか?
 
タマ:常連さんが来てくれていると嬉しいです。安心感というか。それで常連さんが楽しんでくれるパーティーは、後になっても話題にもなりますよね。乾杯の頻度も上がるし(笑)。うちは4店舗あるので、LOUNGE NEOのお客さんが「今日VUENOSも行ってみたいんだけど」みたいなパターンもあるので、普段円山町で飲んでいる方々にはいろいろ助けていただいています(笑)。
 
しお:自分が働き始めたときは、クラブだけでは食べていけないから、昼は行政書士の手伝いとして働いてました。「今回作成した書類で訴訟の手続きを踏むことができたよ!ありがとう!」とか言われても、人を不幸にしている感覚があって(笑)。だからこそ純粋に「ありがとう」って言ってもらえるような仕事に就きたい気持ちがありました。

AOYAMA ZEROのしおさん


――じゃあ、スタッフ同士でよく出る共通の会話とかありますか?
 
タマ:先輩に「出会いはあるけど実りがない」っていう名言を頂いて早14年なんですけど(笑)。
 
一同:笑
 
タマ:最近結婚ラッシュありましたよね。
 
NANA:男性スタッフのね(笑)。
 
しお:合同結婚式みたいなのもありましたよね。これからするのかな?
 
タマ:そろそろこちらにまわってきても…(笑)。でも、意外と仕事の話ばかりなんですよね。
 
しお:そうそう。そこまでお互いのプライベートは知らないよね。
 
NANA:結局、仕事の話ばかりですよね。何が盛り上がってるのかとか、風営法がどうだとか。
 
しお:周年行って記憶なくした、とかもね(笑)
 
NANA:お互いの記憶の確認ですね(笑)
 
しお:あと、どこどこに入った新しいスタッフが面白いらしいとか。
 
――最近だとありました?
 
タマ:最近ではないですけど、名物スタッフは、OATHのジュンヤとかかな…。
 
しお:ジュンヤは、酒がとても強いから付き合って飲んでるとこっちが潰れてしまう。”クラブ業界の影の酒豪”みたいな…。なんかそういったキャッチコピーが付く人、多いですよね。私たちも影で付けられているんでしょうけど(笑)。最近「塩さん怒らせたらマジで怖いぞ」って言われるんですよ。こんなはずではなかったんですけどね。入りたての時は、永遠のアイドルでいたかったのに(笑)
 
NANA:たとえば“塩ちゃん”から“塩さん”に変わった時があったよね? DJやイベンターから(笑)。
 
しお:そうですね、初めて会う際に挨拶すると、「あ、噂では聞いてます」みたいな。どんな噂が流れてるんだよっていう(笑)

AiSOTOPE LOUNGEのNANAさん(左)とLOUNGE NEOのタマさん(右)


スタッフに聞く、参考にしたいクラブでのマナー

――では、次にクラブでのマナーについて聞きかせてください。読者のみなさんには、是非参考にしてほしいポイントですね。
 
NANA:どこのクラブもそうだと思うけど、DJブースの前で踊らずに写真撮ってたり、動画撮ってたりするのはどうかな~と。
 
しお:そのあと壁側でずっとアップロードする人とかも。
 
タマ:たまにiPhoneにイヤフォンさしてクラブにいる人いますよ…。
 
一同:いるいる!
 
しお:注意したことがあるのは、動画を勝手に配信してる人。行動に移す前に少し考えないといけないことを普通にしちゃうのが、今の感じかもしれないですね。
 
NANA:実際に遊びに来てくれた人よりもSNSとかで気軽に現場を観れちゃうのは、どうかなと思いますね。
 
しお:作り込んだデコレーションとか、アップされちゃうと行く楽しみが半減しちゃいますよね。
 
タマ:でもいい面だと、ネットレーベル系のSNS発信力はすごいですよ。この前もイベント名がTwitterのトレンドに上がってました。その逆だと、SNSが発達し始めて気軽にリストに名前を入れられるので、プロパーで行くっていう感覚がなくなったことですかね。
 
NANA:「◯◯のゲストで言ってくれれば入れます」ってポストするやつね。
 
しお:「◯◯のゲスト価格が最安値!」とか(笑)。
 
――ゲストで入れることって以前はメチャクチャかっこよかったんですけどね。
 
ちむ:初めてOrgan Barでやる演者さんで、挨拶もなくそのまま入って来られると困ります。お客さんだと思って「入場料◯◯円です」って声をかけると「俺、演者だけど」みたいな感じを出されるのが…。歴史の長い店なので、私も店長によく聞いて勉強はしてるんですけど。私の経験が浅いからこそ失礼しちゃう時もありますけど、自分は有名なんだって、ぐいぐい来る人とか困っちゃいます。
 
――それはちょっと困りますね。大人なんだから優しくあってほしいですね。
 
NANA:その日の出演者に渡したドリンクチケットを違う日に使ってる人いますね。出演じゃない時に遊びに来てくださるのは嬉しいのですが…(笑)。
 
一同:いるいる!
 
タマ:スタッフは、今日この色じゃないんだけどな…って思ってますから(笑)。
 
NANA:あとは、機材関係じゃない? ブース越しに乾杯とか。飲み物こぼれたら機材が壊れてしまう。
 
しお:私たちスタッフは命がけでカルチャーを守っているので、心の通った人と一緒にお仕事したいという気持ちが大前提にありますね。


Organ barのちむさん


ーーでは最後に、皆さんの働かれているクラブの魅力を教えてください。
 
ちむ:仙台でもイベントを主催しているのですが「東京行ったらOrgan Bar行くよ」って言ってくれる人がいるというのは嬉しいです。須永辰緒さんをはじめ各界の大御所の方々がレギュラーで回しています。Organ Barはジャズ、ロック、ヒップホップとかいろんなジャンルが毎日聴けるのも魅力です。これは私が得られたことですが、音楽の知識も広がったし、DJとしての活動も増えました。あと、organbarは、ほぼ年中営業しているのでorganならやっているだろうと皆さん朝方にかけて、くれたけビルに集まってくれます。常連さんは本当に多いですね。クラブスタッフになって良かったなと思います。
 
しお:私たちも、他の箱に行くと自分たちがどういう風にみられているとかを感じることが多くて。最近、九州のクラブに行ったとき、現地のDJの人たちがみんな「DJ NORIさんとかがやってるZEROのブースでDJをするのが夢なんです」って言ってくださって。DJ NORIさんをはじめ有名なアーティストさんがレギュラーパーティーを持っているので、知らないところで東京のZEROという名前は広がっているんだなと。
 
NANA: ArcHからの話になるんですけど、もともと新宿2丁目のクラブって他の東京のクラブと横の繋がりが希薄だった印象があります。ArcHの1周年のときに大沢伸一さん、翌年にはFPMの田中さんが出演してくださった。そういう名だたるアーティストの方たちが2丁目がどういう街で、ゲイカルチャーがどういうもので、っていう理解があって出てくれたことによって、2丁目のクラブシーンがどんどん表に出て行ったように感じます。だからそういった第一線で活躍されているアーティストの方たちが、ゲイカルチャー含めLGBTを理解してくれているっていうことに関してすごく感謝しています。
 
2丁目でとくに特殊なのがJポップのパーティーが多いことで、そのなかでもアンオフィシャルなんだけど本人公認のパーティーもあります。安室奈美恵さんが遊びに来てくれたり、中島美嘉さんがサプライズでライブをしてくれたり。そういうアーティストに新宿二丁目というこの場所だから訴えたい、ここだからライブをする、ここだから遊びにくる、っていう人たちに支持されていることに感謝しています。地方のLGBTの方たちが、「いつかAiSOTOPE LOUNGEに行ってみたい」だとか、地方で活動しているDJの方が「いつかAiSOTOPE LOUNGEでDJをしたい」とかそういった言葉をもらえるのも嬉しいです。
 
タマ:うちは4店舗が別々のパーティーをしています。私が担当しているclubasia、LOUNGE NEOはオールジャンルやっているので本当にゴリゴリのブラックミュージックもあれば、アニソンのイベントもやってるし、アイドルイベントもあります。まずそれが一番の魅力ですね。つぎに働く側の私視点ですけど、この仕事をしていなかったら、そういった趣向のまったく違う人たち、世代がまったく違う人たちと日替わりで関わるなんて経験できなかったと思うんです。私が働くクラブの魅力というか、出会いがクラブの一番の魅力だと思います。
 
しお:私たちは、お客さんが喜んでくれる事をやりたいなっていう考えがあります。なので、きっかけは何でもいいので、遊びにきてほしい。私たちも喋れば面白いし、一緒に飲めるし(笑)。
 
――じゃあ、お女子会の記事読みましたって人には、しおさんからショット1杯プレゼントみたいなことも??
 
しお:そうですね、ショットを酌み交わして始まる会話なんていっぱいあるので!


 

AiSOTOPE LOUNGE
新宿区新宿2-12-16 セントフォービル1F

クラブミュージックと密接な関係にあるゲイカルチャー。クラブカルチャーの根源的な魅力を楽しめるクラブ。姉妹店のALAMAS CAFÉ、AiiRO CAFÉもハシゴしながら楽しむのも◎
http://aliving.net/

 

AOYAMA ZERO

渋谷区渋谷2-9-13 AiiA ANNEX Bld.B1F

ハウスを中心としたクラブ。DJ NORIをはじめ松浦俊夫、Dazzle Drumsなどがレギュラーパーティーを持つほか、Dimitri From Parisなどの世界で活躍するアーティストも出演している。
http://aoyama-zero.com/


LOUNGE NEO
渋谷区道玄坂2−21−7 第八矢澤ビル5、6F

真っ白く湾曲した壁が珍しいクラブ。音楽イベントを中心に多種多様なパーティーが開かれているクラブ密集地域円山町にあり、2002年のオープンから今年で15周年を迎える。
http://www.loungeneo.com/venue/

 
Organ bar
渋谷区宇田川町4-9 クレタケビル3F

宇田川町にオープンし11月で22周年。レコード番長 須永辰緒が以前プロデュースをしていたことでも有名。平日、週末問わず毎夜大物DJが出演している。
http://www.organ-b.net/