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音楽界の沖縄選抜! NEENEEが新作でみせたチャンプルー的音楽

取材・文:富山 英三郎
写真:
Taichi Nishimaki(ライブ)、難波 里美(談話)
 

 ORENGE RANGEよりYAMATO(Vo.)、MONGOL800よりTAKASHI(Gt.)、RYUKYUDISKOよりTETSUSHI(DJ)、バンドのマネージャーも務めるSEIJI(Ba.)によるバンド・NEENEE。「ニーニー」とは沖縄の言葉で「お兄さん」という意味がある。どこまでもオリジナルな3年ぶりの2nd.アルバム『N2』を発売したばかりの彼らに、その発想の源泉を聞いた。
 
 
※ 


放課後に集まって音楽で遊んでいる感じ(YAMATO)
 
ーーNEENEEとして、メンバー4人でのインタビューは初めてなんですか?
 
TETSUSHI
:そうなんですよ。
 
ーーでは、まずは結成のいきさつから教えてください。きっかけとなったのは、TETSUSHI(廣山哲史)さんのソロプロジェクトであるORIONBEATSなんですよね? その1stアルバム(AWESOME BEATS)に、YAMATO
さんとTAKASHIさんがフィーチャリングされていて。その制作風景を見ていたSEIJIさんが、このメンバーで何かできないかと動かれたと。
 
SEIJI
:当時、僕はTETSUSHIのマネージメントをしていたんです。そのときに、「TAKASHIとYAMATOと一曲ずつやりたい」と言われて動いたのが始まり。とはいえ、もともとみんな顔見知りではあったんですよ。だから制作もどんどんカタチになって、その感覚が気持ち良かったんです。僕の記憶では、レコーディング終わりにごはんを食べているときにはすでに「やりましょう」って感じだった気がします。
 
ーーORIONBEATSで一緒にやったとき、相当いい感じだったんですね。
 
TETSUSHI
:音楽を作ることもそうですけど、一緒に集まってワイワイやるのが楽しかったんですよね。あの感じをまたやりたいなっていうのが率直な動機で。
 
YAMATO:RYUKYUDISKOとは過去にORANGE RANGEのリミックスをお願いしたりしているんですけど。一緒に制作してレコーディングするのは初めてだったんで、新しい空間・新しい時間を過ごせたのが新鮮でした。
 
TAKASHI
:近所の仲間が何か作るから参加するよっていう感じで、「なんでもやりま~す」みたいな。いつものノリというか、自然にやれて面白かったですね。
 
TETSUSHI:TAKASHI
はDJもするから、クラブでもよく会うんですよ。
 
ーーということは、近所の仲間と新しい遊びを始める感じだったんですね。
 
YAMATO
:放課後感はありますね。それぞれの学校(自分のバンド)が終わったあとに、また音楽で遊んでいる感じ。

 写真左からTETSUSHI、YAMATO、TAKASHI、SEIJI
 

「我々世代は、あの映像だけで大爆笑ですよ」(TETSUSHI

 
ーー謳い文句としては「沖縄発のロック・エレクトロニック・ダンスバンド」という感じですが、あまりそういうことでもなかったんですか?
 
SEIJI
:完成系を考えてから始まったわけでなくて。それぞれの持ち味を寄せ集めたらこんな感じになったというか。
 
YAMATO
:「クールでいいね!」、「それ、かっこいいじゃん!」から始まるんですけど、いつの間にかそこじゃなくなっているんですよ。
 
TETSUSHI
:よく言えば進化しすぎ。
 
YAMATO
:気づいたらバカな曲になっているんですよ(笑)。
 
ーー今作では、MVもあるリード曲が『俺オレゴン』という西部劇テイストな曲で。しかも、MVが深夜番組のローカルCM風でびっくりしました。
 
YAMATO
:80年代後半~90年代前半の沖縄ローカルというか、僕が小さい頃に流れていたCMってあんな感じだったんですよ。あの質感はいまだに鮮明に覚えていて、メロディも口ずさめるほど。でも、そもそもは『俺オレゴン』をどうやってハチャメチャな感じにしようか話し合った結果なんですよね。
 
ーーあっ、曲の世界観と映像は別物だったんですね。
 
YAMATO
:そうなんです。
 
TETSUSHI
:我々世代は、あの映像だけで大爆笑ですよ。
 
YAMATO
:ORANGE RANGE含めいろいろなMVを作りましたけど、『俺オレゴン』が自分史上最高。
 
 

ーー『俺オレゴン』の前曲は『GO! GO! 島人!!』という、これまた濃い曲が収録されていますよね。前半はかなりインパクトの強い曲が続きます。
 
YAMATO
:今作から、TETSUSHIも作詞に挑戦したんですけど。ある日、「沖縄あるあるを書いてきたよ」と持ってきて。1st.アルバムのとき自分から「沖縄らしさは出さないでいこう」って言ってたのに、いきなり真逆なことをやり始めた衝撃はありましたね(笑)。でも、歌詞に人の苗字を入れるとか僕にはない発想なので、刺激を受けたし面白かったです。
 
ーー当初は「沖縄感を排除しよう」って話だったんですね。
 
YAMATO
:そうなんですよ。隠れて見えるのはいいけど、全面的には出さないって。
 
TETSUSHI
:ストイックにね。
 
 
いろいろな要素が入っているのがNEENEEらしさかもしれない(TETSUSHI

 
ーー1st.アルバムに比べると今作は肩の力が抜けたと言いますか…。
 
TETSUSHI
:変な方向に行った(笑)。で、ポップにもなってきていますよね。
 
ーーそれは自然とそうなったんですか?
 
TETSUSHI
:そうですね、『GO! GO! 島人!!』は最初にトラップっぽい曲を作ろうとして、そこにカリブの要素を入れて、最終的に島人の世界へと進化していって。だから、いろいろな要素が入っているのがNEENEEらしさかもしれない。
 
ーー1曲の中だけでなく、アルバム全体にさまざまな要素があって。一言では説明できないバラエティ感ですよね。楽曲制作においては、まずTETSUSHI
さんが土台になるものを作るんですか?
 
TETSUSHI
:曲によってそれぞれ。みんなで集まっていろいろな音楽を聴きながら「こんな感じのを作ろう」って。「じゃあ、こういう曲?」って感じで作ってきて、そこに楽器を試しに乗せてみたり。そうやって進化していきましたね。
 
ーーTAKASHI
さんの場合は?
 
TAKASHI
:ギターを弾いて「こんなのどうかな?」って。だから、自分の場合はパーツしかないものもあって。そういうときはTETSUSHIさんがアレンジしてくれたり。僕の場合、基本はすべてギターです。
 
ーー先ほど「放課後感」とおっしゃっていましたけど。曲を作ろうと集まるのではなく、まずは集まって好きな曲を流しながらの雑談が始まるんですね。
 
TETSUSHI
:そういうことが多かったりしますね。
 
ーーアルバム全体としては、明るく突き抜けた昼から始まって、だんだんと夜になって、また朝が来る24時間の流れを感じました。曲順や構成はどう考えたのですか?
 
YAMATO
:まずはNEENEEを知ってもらうために、似たテイストの曲を並べながら流れを作った感じですね。でも、今の24時間聴けるっていう解説はいただこうかな(笑)。
 
TETSUSHI
:結果、いい曲順だったね。入りやすくて、ハマった頃に『Black Water』とか深い曲も入ってくる。

 10月24日に代官山UNITで開催されたリリースライブの様子


すごく勉強になるし経験にもなる(TAKASHI

 
ーー10曲目の『最初で最後のダンス』は、ORANGE RANGEのNAOTOさんが作曲されていますよね。
 
YAMATO
:そもそも1st.アルバム『N1』の段階で、NEENEEに入りたいと言ってたんですよ。僕は「いいよ」って。でも、長男(TETSUSHI)が「まだ早いぞ」と。
 
TETSUSHI
:「NEENEEはこう見えても厳しいから、入るのが大変なんだぞ」って(笑)
 
YAMATO
:でも、ライブにDJとして参加していたり、気づいたらベースを弾いていたり。そういう流れが『N1』からすでにあったので、「曲を書いて欲しい」と投げたらやってくれたんですよ。
 
ーーメインの活動とは違う、別プロジェクトならではの良さはどにありますか?
 
TAKASHI:TETSUSHI
さんが作ってくるシンセの音をギターに置き換える作業があるんですけど。自分では出てこないメロディラインがあったり、ポジションもあり得ない動きになったりするのが面白いですね。すごく勉強になるし経験にもなる。これまでは「真空管アンプにシールド1本だぜ!」ってやっていたんですけど、アンプシュミレーターを使ったほうがいい場合もあるなとか。
 
ーー自分のバンドへのフィードバックがあるんですね。
 
YAMATO
:感覚的には子どもみたいに無邪気に音楽で遊んでいて。それがNEENEEなのかなっていうのがある。
 
 
新しいジャンルを生み出しているような感覚があります(TETSUSHI

 
ーー別プロジェクトになると内省的な表現になるアーティストって多いですよね。でも、NEENEEはよりポップになっているのが面白いなと思うんです。
 
YAMATO
:僕らも、最初のアイディアはディープで陰鬱な音だったりするんですよ。でも、沖縄のチャンプルー料理みたいに、「これもいいね」、「あれもいいね」といろいろな要素を入れていくと自然に明るい部分が足されていく。でも、すべては感覚的なんです。僕らは『N1』が自信となって、それぞれが新しいチャレンジを始めている。TETSUSHIが作詞をしたり、英語を喋れない僕が英語詞で歌っていたり。そういう挑戦によって、さらに個性が際立ってきた気がするんです。
 
TETSUSHI
:可能性をみんなが広げているよね。僕が演奏のことを考慮せずに提案しても、誰ひとり「できない」と言わないのがすごい。まずはやってみる。その姿勢に刺激を受けて、いろんな曲を作るようになれたし。フューチャーベースとか、ダンスミュージックのトレンドを取り入れたりもしていますけど、結果的にはNEENEEのオリジナルになっている。新しいジャンルを生み出しているような感覚がありますね。
 
ーーそれこそチャンプルー的に詰め込まれていますけど、よくまとまりますよね。
 
TETSUSHI
:視覚が狭まれないように気をつけています。そのために、10曲を同時に進めたり。1曲ずつ最後まで仕上げようとすると、よくないことを信じてしまうんですよ。例えば、ある音を作るのに苦労したから無理してでも使いたくなったり。一方で、10曲並べて、あえて途中でも次の曲を進めると大変だった記憶が薄らぐ。そこから戻って作業するとシンプルに考えられるんです。
 
ーーそれはNEENEEならではの作り方ですか?
 
TETSUSHI
:このアルバムを作りながら発見したやり方です。NEENEEの場合、ボーカルもあればギターもあって。さらに、バンジョーやアコースティックギターとかいろんな楽器が入っているんで。そういう風にやったほうが面白いかなって。苦労して作った音でも、苦労を忘れてるから「この音はいらない」ってミュートできる。
 
ーーアルバムのラスト曲『Dream Dream Dream』に、「初期衝動を信じたい」という歌詞があります。最後に、皆さんそれぞれの初期衝動を教えてください。
 
SEIJI
:僕以外のみんなは広く知られたミュージシャンですけど、NEENEEをやるときに決めたのは、バカなふりをして何でも言ってやろうと。相手に臆さず何でも言ってやろうというのが、このバンドをやるにあたっての初期衝動ですね。
 
TETSUSHI
:電気グルーヴをテレビで観て、そこからテクノが好きになってCDを買いに行って。当時は情報もないから、ほぼジャケ買いだったんですよ。最近、そういう感覚がやっぱり大事だなと思っていて。年齢を重ねると、ある音楽が売れている理由をいろいろ考えすぎて。音の使い方がいいのか? メディア戦略なのか? とかね。そんなことは抜きにして、自分にとって好きか嫌いかを大事にするようにしています。それが初期衝動だし、一番正しいと思うんです。
 
TAKASHI
:高校生の頃、インディーズブームの真っ只中で。ザ・ブルーハーツとかハイスタンダードとかが大好きで、あるとき「自分たちでコピーできるんだ!」って知ってからはコピーしまくって何も考えずにやってたんですよ。それが初期衝動ですかね。NEENEEでは挑戦することが多いけど、まずは考えずにやってみて。うまくいかなければ悩んで、それが自分の成長に繋がっている気がします。
 
YAMATO
:最近はデータのやり取りが増えてきたんですけど、ORANGE RANGEを始めた頃はジャムセッションをしながら感覚で音作りをしていたんですよね。「こんなリフを入れよう」とか「ここにアルペジオを使おう」とか会話しながら。NEENEEは、あの頃みたいにスタジオに集まって自分の好きなものとか感覚的な会話のキャッチボールがあって。そこから生まれた音を聴いて、「あの初期衝動を信じていいんだ」と思うようになったんです。自由に何でも取り入れる感覚。あの歌詞は、そういう初期衝動を信じたいという意味なんです。
 
 


 
作品情報
アーティスト:NEENEE
タイトル:N2
発売日:2017年10月25日


TETSUSHIのソロプロジェクト、ORIONBEATSのアルバムをきっかけに結成されたNEENEE。ロック、テクノ、エレクトロニカをベースに強烈な個性同士がぶつかり合う沖縄県産サウンドが特徴。2014年にファーストアルバム『N1』をリリース。今作は、YAMATOが作詞、TETSUSHIが作編曲の中心を担った楽曲だけでなく、TETSUSHIが作詞・作編曲を手掛けた「俺オレゴン」や、NAOTO (ORANGE RANGE)が作詞・作曲で参加した「最初で最後のダンス」、TAKASHIとTETSUSHI作曲の軽快なインストゥルメンタル「Black Water」を含む全12曲を収録。

トラックリスト
01. Kick Ass
02. Go! Go! 島人!!
03. 俺オレゴン
04. JUNK!
05. Don't Stop Me
06. Ding Dong Sound
07. Black Water
08. ずっと・・・
09. COME ON BABY
10. 最初で最後のダンス
11. Memory
12. Dream Dream Dream
 
■公式サイト
https://www.neeneeneenee.com/