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常夏の国のフェスティバル
Ultra Singapore体験記

取材・文:Yanma
写真:aLIVE Coverage、Yanma



 6月10日、11日に「Ultra Singapore」が開催された。会場となるのはシンガポールの5つ星リゾートホテル、マリーナ・ベイ・サンズの隣にある特設会場。本稿は今年2回目の開催となる「Ultra Singapore」の体験レポートだ。
 
 本題に入る前に、少しだけシンガポールや文化に触れておきたい。日本からの所要時間は成田空港から直行便で約7時間。シンガポールだけでなく東南アジアにおける有数のハブ空港でもあるチャンギ空港に到着。空港から「Ultra Singapore」の会場までは車で約20分程度。取材班が利用したホテルもシンガポールのナイトライフの中心地クラーク・キーの周辺。ホテルからマリーナ・ベイ・サンズまで車で約10分、空港までも約25分程度。とても小さな都市なのでタクシーでの移動がオススメだ。フェスティバルだけでなく夜のシンガポールも楽しみたいのであれば、クラーク・キー周辺の宿を取ると便利だろう。クラーク・キーはシンガポール川の周辺にレストラン、バー、クラブが並ぶエリア。世界的にも有名なクラブZoukもこのエリアにある。物価は日本よりも高く感じるだろう。理由としては、とくにお酒を飲食店で頼むときには、ビール1杯で10〜15 S$(S$=79円 ※6月12日の相場より)が相場だった。クレジットカードが利用できる店舗は多多いので、支払いはクレジットカードの利用をオススメする。ちなみにタバコは1箱1000円強する。だからといってタバコを国外から持ち込むと1本あたりに税金がかかるのでご注意を。


川沿いに飲食店などが立ち並ぶクラーク・キー

 さて、ここからは「Ultra Singapore」について。日本と大きく違ったのが、シンガポールの来場者は普段着が多い。日本のようにみんなで同じ格好をして遊ぶグループはほとんどいなかった。なので「Ultra Singapore」に日本のノリで行くと、逆に浮きすぎてしまうのでご注意を。では、どの様なファッションかというと下記のスナップを参考に。
 また記念撮影も控えめな様子も覗えた。Ultraのロゴ前で記念撮影はするものの、長蛇の列ができるわけではなく、数枚撮って各ステージへと向かっていた。日中は暑いためかオープン直後はまだ来場者も少ない(日本だとオープン前から列ができているが)。早い時間帯は天井があるResistanceに人が集まり、夕方前からMain Stage、Live Stageも賑わってくる。また、初日はスコールにも見舞われた。外にいると一瞬でずぶ濡れになってしまうが、気温自体は高いので寒さは感じない。気をつけたいのは、会場の地面は土なので汚れてしまいやすいこと。土が落とせる場所はないので、帰り道に恥ずかしい思いをしないよう、極力汚さないことをオススメしたい。

 
  • 左:Graciaさん(フィリピン在住) 右:Isa Solomonさん (シンガポール在住)
    「フィリピンにはまだULTRAが来てないからシンガポールに遊びに来ました。夢のような空間で音楽を聴きながら楽しんでます! 楽しみなのはDash Berlin、Tiësto、Hardwell、Nicky Romero、Steve Aoki」
  • 左:Paulさん(オーストラリア在住) 右:Haraさん (オーストラリア在住)
    「ULTRA Singaporeは初めて。来年はUMF(マイアミ)にも行く予定です。来年ULTRAがメルボルンでも開催されるのですごく楽しみ。ULTRAのファンなのでいろいろな国に行くのも楽しんでいます」
  • 左:ゆかさん(シンガポール在住) 右:じゅんさん(シンガポール在住)
    「土曜日、日曜日、両方参加します。Main StageのアーティストよりResistanceに出ているアーティストが好きで、昨日一番楽しかったのはSasha & John Digweed。今日はDubfireが楽しみです」


会場は直線上にMain Stage、Resistance、Live Stageと並んでいる。会場も広すぎず、ステージ間の移動が楽なのも嬉しい。


会場から見えるのはマリーナ・ベイ・サンズだけではない。そのほかの高層ビルにも取り囲まれている。


オープン直後のVIP、VVIPエリア。後半になると高級シャンパンがひっきりなしに開いていた。


 Main StageではTiësto、Hardwell、Nicky Romero、Steve Angelloなどが出演していたが、2日間で一番、盛り上げていたのが、Steve Aokiだった。日本を代表するアニメ『Ghost In The Shell』のSteve Aoki Remixで登場。そこからベースミュージックをメインに90分パフォーマンスを行ったが、トピックが3つも! ひとつ目はステージに一般客を上げさせたこと。本人がステージから指差して指名した人が約10人ほど。ただ、我も我もとなるのは想像がつくとおり、ステージに上がれない人も溢れていた。ふたつ目はセットの途中で映画『タイタニック』の主題歌「My Heart Will Go On」が流れて、LEDのスクリーンに、あの有名なシーンが流れる。こういう映像を使って大丈夫なの?と不安になったが登場人物の2人の顔がSteve Aokiになっており会場からは大きな歓声が(笑い声)。そして最後は「Cake Me」。Steve Aokiがケーキを持ち出すと、ステージ前方は自分のほうに投げてとアピール合戦。ひとつ投げ、ふたつ投げ、みっつ投げ……あれ、いつまで投げ続けるの?と気づいたときには遅し。正確な個数は数えきれなかったが10個近くは振る舞っていた。


Cake Meのときの再前列の様子。肩車をしている人をよく見るが、いったいどれくらいの長くしているのか気になり無作為に5組を計測。2分以内が1組、4分以内が3組、5分以上が1組。腰痛持ちの筆者からしたら羨ましくなる肉体だ。

 もうひとつ「Ultra Singapore」のハイライトといえばPendulumのライブだ。2日目のLive Stageのトリを務めた彼ら。序盤から代表曲の「Witchcraft」や「Blood Sugar」、「The Prodigy - Voodoo People (Pendulum Remix)」を披露し盛り上げ、圧倒的な存在感を示していた。一方、ベテランならではの安定感を示したのがSasha & John Digweed。ブースに立った二人は目も合わせずに淡々とプレイ。音数も少ないが、それでもひとつひとつの音に注意が行き、結果ハメられてしまう。これはもはや魔法かもしれない。この3組のアーティストは9月に開催される「Ultra Japan 2017」にも出演するので、また見たいと思っている。

 「Ultra Singapore」は、シンガポールで開催して今年で2年目だが、現地の音楽シーンにも変化をもたらせていると語るのは、シンガポールを活動の拠点にし、Live Stageに出演したMYRNE(メイリーン)。

写真がMYRNE

 「今までシンガポールにフェスは1つか2つくらいしかなかったけどULTRAはワールドワイドな雰囲気をもたらしたと思う。もともとシンガポールの人々ももっと多くのパフォーマンスを見て楽しみたいと思っていたと思う。またシンガポールのアーティストの活動のサポートにもなっている。シンガポールの音楽シーンはまだ小さいけど、こういうフェスがあることで皆がよりインスパイアされるし、シンガポールの音楽シーンをいい方向に導くと思うよ」
 
 MYRNEの楽曲はスロウなビートでメロディアスなものが多い。彼が初めて音楽を作ったのは17歳のころ。現在はリリースもしており「Get It All」や「Brand New」もiTunesでも人気楽曲だ。Zouk Singaporeでレジデントのパーティーを抱えている。
 
「Zoukは、ほかのクラブに比べていろいろな種類の人を惹きつける魅力がある。まだまだ踊りたいって思っているような年上の人も、元気いっぱいの若い人も、そこまで音楽に詳しくない人にもね。Zoukでいい曲がかかっているのを、みんな知っているからね。男女比は同じくらいかな。ジャンルはトラップが主流だけど、ヒップホップ、フューチャーベースも人気だよ」
 
 そんな彼が勧めていたローカルアーティストは、Gentle BonesやShigga Shay。Shigga Shayは同フェスのLive Stageに出演している。そこに筆者のオススメも加えさせてもらうとMYRNEもそうだが、インドネシア・ジャカルタ出身(シンガポールではないが…)Rich Chiggaのライブも「Ultra Singapore」で観て面白かったので付け加えておきたい。


 「Ultra Singapore」を訪れて目から鱗が落ちたのが「Ultra」が作っているアフタームービー。「Ultra Japan」の映像を見ていると美しいけれど、どこか外国人から見た日本、作られたものといった印象だった。しかし、いざ自分が外に出てみると、映像の世界がリアリティーのあるものとして押し寄せてくる。空港から美しい街並みを通りホテルへ。ホテルからマリーナ・ベイ・サンズを臨む「Ultra Singapore」へ。アフターはシャワーを浴びてクラーク・キーへ。旅とともに、開催国の文化とともにフェスが楽しめるというのが「Ultra」の醍醐味なのだろう。あの映像の世界はノンフィクションなのだ。「Ultra Japan」だけに参加していると、この魅力には気づけなかった。空港に着いたときから、それぞれの「Ultra」は始まっていた。





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