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KORE KOSMOU

昨今では、映画音楽(「ムカデ人間」のサントラなど)に注力し、その姿をフロアで見かけることこそ少なくなってしまったが、90年代のトランスシーンにいた人ならご存知のベテランアーティストHoleg Spies。 彼はホラー映画などと相性の良い旋律を軸に、他のアーティストたちとは一線を画したDJプレイで人気を博す傍ら、2001年の三池崇史監督作品「殺し屋1」の映像インスタレーションを行うなど映像と音楽のコラボレーションにも精通。 Spies名義でのライブではVJをメンバーに含んだ形で活動し話題を呼んでいた。
 そんな彼を中心に、ゴアトランスと名称されはじめる音律の第一世代的サウンドの草分け的存在だったアーティストThierry Gottiと、世界中のファンに新鮮な驚きを与え続けているカリスマテクノトランスユニットX-DREAMのボーカリストとして知られるAriel Electronにより結成されたバンドKORE KOSMOUが、今年2月10日(水)にファーストアルバムをリリース。この注目すべきアルバムリリースのタイミングで、本バンドのプロデューサーであるHolegとシンガーソングライターを務めるArielに本作についての話を聞いた。

 

 

「KORE KOSMOUのサウンドは、さまざまなジャンルのバックグラウンドを持つ協力者たちの手によって、どこにも属さない唯一無二の非常に異なる架空の映画のサウンドトラックのようなアルバムへと仕上がっていったんだ。」Holeg

――それぞれがトランスシーンの黄金期を築いた音楽人なわけですが、今回このようなスタイルで、このメンバーが集結し活動に至った経緯を教えてください。
Ariel(以下A): Holegが、ある日「今楽曲を作っているんだけれど、これに参加してもらえないかな?」と私にコンタクトしてきてくれたの。実はHolegから連絡がある1年位前に、Johnny Deluxeと一緒に作った曲を彼に聴かせていたのね。その曲の要素を元に、SpectralのThierryとEast Bay Rayがギタリストとして参加して、今回のアルバムにも収録されている「Dream Agent」という曲に進化したの。彼が私を誘ってくれて最初に作った曲は、今回のアルバムの5曲目に収録されている「Children of the Stars」という曲で、ある意味KORE KOSMOU始動のきっかけとなる運命となったわけだけれど…。そんな感じでなんとなく、私とHolegが意気投合して、1年ぐらい方向性を模索しながらお互いのアイディアを持ち寄りながら曲作りをしていたのよ。それを気に留めてくれた友人のVlad Quigleyが、私たちのためにロゴをデザインしてくれたの。私のなかにあるアイディアを、周りのクリエイティブな友人たちと共有しながら具現化していくプロセスは夢のようなひとときだったわ。また、歌詞/散文の多くは、私たちの個人的かつ実生活での状況をダイレクトに反映させていたから、製作の過程は非常に個人的なものになっていた。さらに私たちが伝え、発信したいサウンドにより近づけるためのさまざまな議論をHolegと重ねながら、理想に近づけるために必要と思われる人たちに声をかけたの。John Kleinも、そのために声をかけた1人よ。彼とは親しかったというだけでなく、彼のサウンドは完璧でこちらで多くを語らずとも意向を汲み取り仕事をこなしてくれわ。そんなアルバム制作作業を1年程した後、Thierryがメインメンバーとして参加するようになってくれたのよ。私とThierryのロックに対する考え方が完全に一致していたから、彼との音楽談義はすごく楽しかったわ! また、Patrick Savageは、Holegの映画音楽制作時のパートナーなんだけれど、Holegとパトリックは素晴らしいチームワークで非常に頼もしい。皆、本物の表現に忠実ながら、誰もが素晴らしいパフォーマンスをしてくれた。Patrickはキープレーヤー的存在でいてくれたし、Holegはすべての楽曲において視覚的なキャンパスに思い描きながらサウンドスケープを作り上げてくれる天才だった。すべては、私のアイディアをHolegと作り上げてできた軸にさまざまな才能が集まってきてくれて、気が付いたらKORE KOSMOUというプロジェクトになっていった、という感じかしら…。

――ダンスミュージッククリエイターとして認知されているあなた方が、このようなアルバムを作るに至ったコンセプトや発想を教えてください。

Holeg (以下H) :僕とアリエルだけで始めた頃はとてもシンプルなものだったんだ。意図的に「こういう方向にしたほうが売れる!」とかは一切考えず、「ただ自分たちが好きな音楽を好きなように作っていこう」というものでしかなかった。だから、自分たちが今いるシーンのことや、マーケットのことなんかはあまり意識しなかったんだ。そういった制作過程が成り立った理由は、各曲自身が独自のアイデンティティを際立って持っていたからだと思う。だから当時はアルバムを作るということもまったく想定していなかったんだ。ただ感じたまま、アーティスト同士の団結力のみで2年間かけて曲を作っていた、という感じかな。また、KORE KOSMOUのサウンドが映像的に聴こえるのには理由があって、僕は2006年から映画音楽の制作を手がけるようになっていたのだけれども、その際に知り合ったバイオリンの名手Patrick Savageとの作曲作業がKORE KOSMOUがの楽曲にものすごく影響を与えているのだと思う。特にアルバム1曲目の「WE CAME HERE」と、2曲目の「STOLEN LIGHT DREAM AGENT」はPatrickと一緒に制作していて、映画のサウンドトラックをすごく意識しているのが聴いていてわかってもらえると思うんだ。こうやって KORE KOSMOUのサウンドはクラシック、映画音楽、パンク、グラムロック、サイケデリックテクノ、バッドケイブなど、さまざまなジャンルのバックグラウンドを持つ協力者たちの手によって、どこにも属さない唯一無二の非常に異なる架空の映画のサウンドトラックのようなアルバムへと仕上がっていったんだ。


――今回のアルバムを聴いた際の第一印象が、「映画のサウンドトラックとして相性が良さそう」だったのですが、そういうことだったんですね! Holegのプロデュースらしさを随所に感じました。

H:そこに気がついてくれていたのは光栄だよ。


 

 


「「STOLEN LIGHT DREAM AGENT」は私がこれまで作詞をした曲のなかでは最短記録で、わずか5分でインスピレーションが降りてきて書き上げた詩なの」Ariel Electron


――KORE KOSMOUとはギリシャ語が起源のようですが、命名に関する由来やエピソードがあれば教えてください。
A:KORE KOSMOUは「コスモスの聖母」を意味してるの。Holegが私に楽曲制作参加の誘いをくれた時、ちょうど「Kore Kosmou」という創世神話に関する秘伝書を読んでいたところだったの。だからKORE KOSMOUのロゴデザインやビジュアルイメージを見てもらうとわかると思うけど、古代エジプトやローマの影響を受けているの。そしてKORE KOSMOUはギリシャ語で「93の羽を持った翼」という意味を持っていて、93という数字は「WILL&LOVE」(欲望と愛)を意味する数字でもあるわ。


――今回、音楽的に影響を受けたアーティスト、ジャンルなどがあれば教えてください。
A:今回の製作に関しては、皆とアイディアを共有することはあっても、音楽的な影響を外部から受けていることはなかったわ。特に「RIDE」と「ABRACADABRA」に関してはそれを強く感じるわね。また、「STOLEN LIGHT DREAM AGENT」は私がこれまで作詞をした曲のなかでは最短記録で、わずか5分でインスピレーションが降りてきて書き上げた詩なの…。どの曲をとってもこれは私たちの完全なオリジナルで血であり肉であるのよ。私たちKORE KOSMOUの神話なの。


――今回参加したリミキサー陣が出してきた楽曲に関してはどうでしたか? 印象的な作品、何かエピソードがあるものがあれば教えてください。
A:すべてのリミキサーに感謝してるわ。お世辞ではなくどの曲も素晴らしい。もちろんお気に入りの曲はあるけれど、それは私の心のなかにしまっておく秘密にするわ。

H: 今回リミックスに参加してくれたアーティストは、全員古くからの友人ばかりなんだ。すべてが友情から成り立っているのが今回のKORE KOSMOUのアルバムだよ。そんな彼らが、自分たちの思いのままにリミックスを手がけてくれた。それがテクノというジャンルに囚われず、さまざまな要素がクロスオーバーされた結果を生んだんだと思う。すべての音楽に愛を感じるよ。

――最後にこれからの展望などを聞かせてください。
A: まだ詳細は言えないんだけれど、伝説的なビッグネームのプロデューサーの元、私はパートナーでもあるX-DREAMのJANと一緒に新しいプロジェクトを進行中なの。もうすぐ正式に発表できると思うから、楽しみにしててね! あとは、ソロプロジェクトとしてディープなアバンギャルドエレクトロニカを製作中で、そこでは自身で絵と詩も手がけていて、さらに息子がピアノで参加しているの。それから、L.A.出身のロックバンドともプロジェクトを進行中。これはStoogesとDevoとAnn Clarkをクロスオーバーさせたようなものになりそうね。私はロックンロールの攻撃的なセックスアピールに立って攻める感じが大好きなのよ。

H:僕は数ヶ月前からSPECTRALのThierryと共にMOONSTONE PROJECT名義でダンスミュージックシーンのフィールドに戻りつつあるんだ。このプロジェクトは、90年代のSPECTRAL、SPIES自身のテクノトランスアンセムトラックと未発表曲をベースに、Thierryがギターを弾き僕もキーボードとテルミン、生の楽器を駆使した形でのライブ要素を取り入れ、DJとしてもJuno ReactorやTim Schuldtと製作した未発表曲を披露しながら、今年1月のセルビアでのプレイを皮切りに2017年夏のポルトガルのビッグフェスまで長期にわたってツアーを敢行するよ。このほかにもう1つ、これは2016年の末には全てのコンセプトが完成して始動する予定なんだけど、出版社、ボーカリスト、デザイナー、振付師などさまざまな人たちとの共同作業で作り上げるエレクトロポップのプロジェクトにJAIAのYannisとSPECTRALのThierryと共にOLOWEXという名義で参加するよ。

――2人とも精力的に自身のやりたいことを続けているようで何よりです。続報を楽しみに待っています。

 

 

- Release Information -

タイトル:KORE KOSMOU

アーティスト:KORE KOSMOU(www.kore-kosmou.com

レーベル:WAKYO RECORDS (www.wakyo.jp )

発売日:2016年2月10日(水)
iTune Music Store / Beatport 他にて配信。


[トラックリスト]
1. WE CAME HERE
2. STOLEN LIGHT DREAM AGENT
3. DREMA AGENT
4. ABRACADABRA
5. CHILDREN OF THE STARS
6. CHEROKEE WITCH
7. ETERNAL RETURN
8. RIDE
9. TABOO
10. WE CREATE REALITY
11. TABOO (Holeg Spies remix)
12. CHILDREN OF THE STARS (Lambwool remix)
13. DREAM AGENT (JAIA remix)
14. CHILDREN OF THE STARS (X-Dream remix)
15. ETERNAL RETURN (Deedrah remix)
16. TABOO (Denial of Services remix)
17. CHEROKEE WITCH (Magnetik remix)
18. ABRACADABRA (MASA remix)
19. RIDE (Club mix) / by Holeg Spies
20. CHEROKEE WITCH (JOUJOUKA “Taboo” mix)
21. CHILDREN OF THE STARS (Funky Gong remix)
22. CHILDREN OF THE STARS (Radio edit)by Holeg Spies
23.RIDE (Asteroidnos & YUTA Remix)

■リリースページ
http://www.clubberia.com/ja/music/releases/4702-KORE-KOSMOU-JAPANESE-DELUX-EDITION/
https://www.pioneerdj.com/ja-jp/product/software/wedj/dj-app/overview/