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GELMATICA 2010

【UNIT】[LIVE] LUSINE (GHOSTLY INTERNATIONAL), JOSEPH NOTHING, JIN HIYAMA (BLANK RECORDS), MITSUTO SUZUKI (SQUARE ENIX MUSIC), [DJ] RAYNOLD (TRENTON), GLMN,【SALOON】[DJ] Alex Einz (Phonika), Aosawa (Red Box), Ditch (op), Pige (Organza), Raha (Ooooze), Salmon (WC), Tez (Raft)


第2回目「ゲルマティカ」― エレクトロニックミュージックとメディアアートの祭典は、5月15日代官山UNITで行われた。ソニックとビジュアルエクスペリメント(実験)への情熱に突き動かされ、ことのほか東京のさまざまなオーディエンスと共有したいと願うニューヨークのメディアアーティスト、アレクサンダー・ゲルマンは、ほかでは見ることのない独特の、プロデューサー、DJ、ビジュアルアーティストのラインアップをつくりあげ、協調するオーディエンスのスピリットとともに、クリエイティブな一夜を演出した。

DJネーム「Glmn」で知られるアレクサンダー・ゲルマンが、エクレクティックなオープニングでキックオフした。早いテンポとスローなテンポの間をスイングし、メローからインテンスなエネルギッシュまで、自身が好きなBrian Eno、Richie Hawtin、Estroe、Apparat、Slam、Ed Chamberlainなどのコンポジションをプレイ。続くアーティストたちが創造的表現のスペクトラルを広げられるように土台をつくった。次のラインアップ、Mitsuto Suzukiはライヴステージ。アンビエントなサウンドスケープにJ-ポッブを微かに加えた見事なブレンド、心弾むソニックジャーニー(旅)へと誘った。続けてJoseph Nothingはポップを最高潮へと構築。ヴィンテージのゲームサウンドカードを使い、自身のエネルギーと姿勢を貫いたディストーションサウンド(特有の歪んだサウンド)をつくりあげた。セットにはカイカイキキのAya Takanoのビジュアルライブを伴い、完成させた。

海外からの2人のゲスト、Ghostly Internationalの LusineとTrenton RecordsのReynoldは、プログラムの心臓部だった。LusineはメローでIDMとテックハウスのトラックを穏やかにプレイするので、ラウンジで早めの時間帯が持ち分とされてきたが、この日は夜中のパワフルな演奏で爆発した。歓声、空中を埋め尽くした腕、誰一人体を動かさずにはいられず、彼のグルーヴにはまった。Reynoldは実験的で抽象的なチューンで始め、穏やかなダウンテンポへと繋げ、徐々にダンスフロアを最高潮に高めた。セットは、Reynoldの最大ヒットの1つ、美しくムーディーなテクノトラックに父親がジャズ調のキーボードのラインを録音した「Craft」のロングバージョンでクライマックスをむかえた。締めくくりは、ファン待望のJin Hiyamaのライブセット。彼はVJのTakcomとともに、ハイエネルギーなヴァイブスをReynoldから引き継ぎ、さらに推し進めた。ベースの複雑なテクスチュア、刺激的で軽快なシンセとドラムが空間を制覇した。彼が創る純粋な音は、スクリーンに映し出されたビビッドで幾何学的なビジュアルでより強固なものとなった。Jin Hiyamaが描いた有機的で具象的なペインティングを切り分けて断片を使った、ダイナミックなビジュアル演出だった。

こうした時間が流れている間も、下のフロアのSaloonでは東京で人気のパーティーのショーケースが行われていた。Phonica、Red Box、Chaos、Organza、Ooooze、WC、Raftは、ゲルマンが描く「Party of Parties」の実現に自分たちのレジデントDJを送り込んだ。全体を通して、「ゲルマティカ」は魅力的な客層を引きつけることに成功したといっていいだろう。音楽通、パーティー通、ファッションへの意識が高いクリエイティブ層。オーディエンスは、精神と創造の真実の融合を目の当たりにし、それを手にとるように感じ取った。アーティストたちは、オーディエンスの強く協力的なフィードバックを得て、最高の演奏を届けた。心躍るソニックとビジュアルの刺激、一体化した空気、クリエイティブな対話、忘れることのできない特別な夜となった。昨年のデビューからさらに引きつけてやまない内容へと邁進、「ゲルマティカ」は毎年のカレンダーから外せないインターナショナルなエレクトロニックイベントとしての地位を確保した。

 

Text : S.G. / Photo : Mogi Dai