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Joel Martin

 
- 今でもBrickの『Dazz』(Big Apple Productionsのサンプリング作品)を聴いたときの衝撃は忘れられないね。この作品は僕には思いもよらないアイデアだったから、イントロを聴いた瞬間に「これはすごい!」って圧倒されたよ。 - 
 
- まずは自己紹介をお願いします。

こんにちは、Joel Martinです。DJであり、フィルムメーカー、アメリカのヴィンテージクロージングの収集家です。イギリスの歴史あるミュージックライブラリー"De Wolfe Music"のアーカイブとリイシューを担当している傍ら、Matt "Radio Slave" EdwardsとエレクトロミュージックデュオQuiet Village(時にはMaxxi & Zeusという名義もあるけど)で制作活動を行っています。最近では<Black Cock Records>のGerry RooneyとVelvet Season & The Hearts of Goldというデュオでの活動も始めました。
 
- あなたはミュージックライブラリーで働いている事もあり、高名なレコードコレクターと聞きました。そのエネルギーはどこから来るのですか?

「音楽への愛」それだけだね。僕はいつも1人でまるで儀式に臨むかのようにレコード収集をするんだけど、それは本当にパワフルな出来事なんだ。その間は袖なんか捲っちゃって、隠された宝物を探すような気持ちでずっと掘り続ける、気付けば何時間も(1日中って事もしばしばだね)あっという間に過ぎ去ってしまっているんだ。インターネットが普及してきたっていう事もあって情報はあっという間に広まるようになったから、最近は誰も知らないような場所やモノを見つけるのは難しくなったよ。それでも一生懸命に探し続ければ、きっとそれは報われると思ってるよ。
- あなたがレコード収集を始めたのはいつ頃の事でしょうか?その頃のエピソードや、レコード収集を始めたきっかけなどがあれば、そのエピソードも教えて下さい。

それまでも音楽は好きだったんだけど、レコードを集めはじめたのは12〜13歳の頃だったかな。はっきりとした記憶はないんだ、でも初めて買ったのがヒップホップのレコードだった事だけはよく覚えてる。それを機に音楽の聴き方ががらりと変わったんだからね。本当に素晴らしい体験だったよ!プロデューサーたちが今までのやり方を一新して、他の人のビートや音源をサンプリングしたりカッティングしたりして音楽を作っているって気が付いて、とにかく片っ端から安くて面白そうなレコードを買い漁るようになったんだ。そのほとんどは中古のレコードだったけどね(僕はまだ学生だったから本当にお金がなかったんだよ)。

それからはいつもレコードの事ばっかり考えてた、他には何も考えられなかったんだ。本当にたくさんのレコードに巡り会ったけど、今でもBrickの『Dazz』(Big Apple Productionsのサンプリング作品)を聴いたときの衝撃は忘れられないね。この作品は僕には思いもよらないアイデアだったから、イントロを聴いた瞬間に「これはすごい!」って圧倒されたよ。<Bell Records>からリリースされたSapoのアルバムを買った時の事も良く覚えてる、1987年のロンドンの南にあったハウスレコードショップの在庫一掃の時だったね。ジャンルとかそういった境界線を決めないでとにかく何でも聴いたよ、OsmondsとかMy Drumとかまで聴いていたんだからさ。
- あなたにとってヴァイナルレコードの最大の魅力とは何ですか?

素晴らしい古いレコードはアンティークの領域にあると思ってるんだ、言うなればヴィンテージワインみたいなものかな。ワインと同じように、それぞれが独特の匂いを持っていて(特にアメリカのは本当に匂いがするんだよ!)。洗練されたハイファイなサウンド、あのヴァイナル独特のサウンドを絶対に忘れちゃいけないと思うよ。LPというフォーマットはさらに特別だね、古いLPには素晴らしいアートワークが絶対に伴っているだろ。CDやMP3には哀しいけどそういう部分がないからさ。
 

- 一方で自分のフィールドの中だけで、断片的な人から借りたような情報が蔓延しているという事も言える -  
- あなたの新たなプロジェクトVelvet Season & The Hearts of Goldは同じくディガーとして知られるGerry Rooneyとのユニットですよね。VS&THOGの結成の経緯やコンセプトについて教えてもらえますか?


Gerryとは本当に長い間の友達なんだ。エリッククラプトンの60歳の誕生日パーティー、"Fabric"で開催されたStussyの25周年パーティー、ヘルシンキの「Flow Festival」、本当にいろんな所で一緒にDJをしてきたよ。僕らの感覚は本当に近いものがあって、一緒にスタジオワークを始めるのは自然な成り行きだったんだ、特に何があったって訳じゃない。2人ともジャンルという枠を超えて本当にいろんな音楽が好きだし、それをクリエイションで表現したいという想いがVS&THOGのコンセプトの根底に流れている。強いて言うならダンスミュージックは決まったテンポやサウンドを強要される必要はないって事がコンセプトかな。オープンマインドで音楽を楽しめば、僕らの言っていること、やっていることの意味はきっと分かると信じているよ。
- VS&THOGは、LN-CC(ロンドンのアパレルブランド / セレクトショップ)が満を持して始めたリミックスシリーズの最初のリミキサーにも抜擢されましたよね。LN-CCに代表される音楽とファッション、アートといったクロスオーバーのカルチャーは現在のロンドンのムーブメントだと思うのですが、あなたはそれをどのように捉えていますか?

今の若い子たちは昔よりずっと教養的になってきたと思ってるんだ。インターネットの普及で彼らはクリック1つで音楽、ファッション、アート、その全てを文字通り「ダウンロード」できるからね。この変化は若い子たちが教養を深められるという意味では言うまでもなくいい事なんだろうけど…。一方で自分のフィールドの中だけで、断片的な人から借りたような情報が蔓延しているという事も言える。そういう情報の選び方は陥りやすい選択かもしれないけど、僕は絶対にしないようにしているよ。
 - 少し話しは脱線しますが、今のロンドンのクラブ、フェス、レコードショップはどんな状況なんですか?特に2012年以降のオリンピックを機に変わった部分などはありますでしょうか?日本も2020年にオリンピック開催が決まり、皆気になっていると思うのですが…。

今でもロンドンは住む価値のある場所だよ!確かに素敵なクラブというのは以前ほどは見なくなっちゃったかな。でも代わりにワンオフのウェアハウスパーティーや深夜営業の認可を取ったバーが増えてきたんだ。ちょっと前まではロンドンの西端のエリアだけがパーティーの中心地だったんだけど、徐々に東側にシフトしつつあるね。8年くらい住んでいるけど、街の様子は本当にがらりと変わったよ。コーヒーショップやオーガニックフードのお店、ヴィンテージクロージングの倉庫は数えきれないくらい増えてきたし。その中にある街の小さなクラブは最近できたばっかりだけど、シーンに大きな活力を与えていると思う、例えば"Dance Tunnel"とか"Alibi"とかね。そういえば最高のレコードショップが2年前にオープンしたんだ。名前は"Kristine"、古いレコードのストックからダンスミュージックの新譜まで何でも売っていて、毎週本当にたくさん山のレコードが入荷されるんだ。アシッドハウスなんて聴いた事ないような若い連中がヴァイナルを求めてやってくるんだよ!
- ありがとうございます。LN-CCのリミックスシリーズに話は戻りますが、今回共演する瀧見憲司のバンドBeing Boringsも最初のリミキサーとして共に選ばれていましたよね。彼とは一昨年の来日の時の「Freaks Village」でも共演したと思いますが、どんな印象がありますか?

初めて彼に会ったのは日本に旅行に行った時だったね、それからずっと仲のいい友達だよ。彼のやっているレーベル<Crue-L>は常に高いクオリティーを維持して運営されているし、一緒に何かをするはすごく楽しいね。"Secobar"で再共演できるのはすごく嬉しい事だし、素敵な音楽に溢れた楽しい一夜になる事は間違いないよ。以前に一度だけ彼の変名プロジェクトLuger E-GoのリミックスをQuiet Villageで手掛けた事があって、その流れから一昨年の「Freaks Village」での共演の時に、彼の秘密のプロジェクトで僕とGerryの作品をリリースしてくれないかっていうオファーをもらったんだ。憲司と僕らのやっていることは関連性もすごくあるし、彼のアーティストとしてのセンスはすごく尊敬していたから、すぐにOKをしたよ。僕らは憲司に2つの作品を提供したんだけど、これはもともと自分たちの為に作ったものでリリースするつもりはなかったんだ。でも、憲司にならこのリリースを任せてもいいと思ったし、世界中の人たちとこれを共有できてすごく嬉しいよ。

- 誰かと一緒に制作するというのは自分には思いも寄らないアイデアが生まれてくるんだ。そして完成した楽曲を正直に評価する事ができる。-  
- 日本のダンスミュージックシーンについてどういう印象を持っていますか?


僕にとって日本はダンスミュージックシーンの最後の砦だと思っている。日本の人たちはパーティーに対してすごく真摯に取り組んでいるからね。サウンドシステムにしてもフライヤーデザインにしても、彼らはどんな要素にも手を抜かない。日本のクラウドたちもすごくいい人ばかりだよ。今まで聞いたことない音楽にもオープンマインドだし、ただ騒ぎ立てるようなクラバーもいない。ちゃんとDJのプレイにも反応してくれるし、本当にプレイするのが楽しいよ。イギリスでも日本人のダンスミュージックのレコードも徐々に見るようになってきたけど、まだ僅かだし偏りがあるように感じるかな。僕は幸運にも日本に行く機会をもらって、友達にプレゼントされて知ることができているんだと思う。イギリスに戻る時はいつもレコードの山を抱えて帰ってる事になるんだけどね(笑)。コストが高いという理由もあって、ディストリビューターたちは日本からレコードを輸入する事にすごく慎重になっているから、イギリス国内で見つけるのはすごく難しい状況だよ。本当に彼らはもったいない事をしてるよね、そのせいでキラーチューンを山のように見逃しているんだからさ。
 
- 今回の来日、そして前回の来日もソロでの来日になりますよね。多くの人は(残念にも)あなたの事をQuiet VillageやMaxxi & Zeusの1人という印象が強いと思います。なぜデュオでのリリースにこだわっているのですか?自身のソロプロジェクトの計画などはありませんか?

自分のソロプロジェクトの予定はまったくないよ。なぜなら同じ意識を共有したパートナーと一緒に楽曲を制作をするというプロセスがすごく楽しいと感じているからね。誰かと一緒に制作するというのは自分には思いも寄らないアイデアが生まれてくるんだ。そして完成した楽曲を正直に評価する事ができる。これはいいね!ここは正直好きじゃないなって具合にお互いに話しながらね。マットもジェリーも自分たちのディレクションがどこに向かっているかをよく分かっているんだ。そして、今の音楽の限界を超えようって本気で思っていて、大きな成功に繋がっているんだと思うよ。
 
- ではQuiet VillageやMaxxi & Zeus、VS&THOGでのリリース予定などがあれば教えて下さい。

最近マットと僕でAlex from TokyoがコンパイルしているY-3のコンピレーションに曲を提供したばかりだよ。(この曲はY-3のWebsite http://www.y-3.com/jp/#/music/ からフリーダウンロード可)ジェリーとはVS&THOG名義で自分たちのレーベル<Lucky Hole>から2枚の12インチのリリースを予定してるね。これはMountain of OneのMo Morrisの新しいプロジェクト"Zsou"のリミックスも収録されている。同時に<Lucky Hole>の兄弟レーベル<Golden Hole>からCougarman & General Zのエディットの12インチリリースも決っているよ。あとは<Who Knows?>というレーベルからエディットのリリースでしょ、NYCのレーベル<Golf Channnel>からMindfairのリミックスを出す事も決っていて、今はその制作を しているところだよ。
 
- ありがとうございました。最後に来日を待ちきれない日本のファンにメッセージをお願いします。

日本のみなさん世界でも類を見ないくらい、パーティーと音楽を楽しもうという姿勢でいてくれるのですごく嬉しいです。日本でプレイできる事を本当に楽しみにしています。アリガトウ! 
 

- Event Information -

タイトル:
REAPROJECT presented by REALROCKDESIGN

開催日:
10月11日(金)

会場:
東京・SECO

時間:
23:00~

料金: 
当日¥2,000

出演:
[Space and Visual Design]
REALROCKDESIGN

[featuring DJs]
JOEL MARTIN (Quiet Village / UK)
KENJI TAKIMI (Crue-L)
DJ NOZAKI (HOT10TOT10)

■SECOオフィシャルサイト
http://secobar.jp/
https://www.pioneerdj.com/ja-jp/product/software/wedj/dj-app/overview/