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BOOM FESTIVAL 2016

 ポルトガルのイダーニャノバで2年に一度開催されているBOOM FESTIVAL(以下:BOOM)は1997年から今年で19年、11回の開催を数え、ハンガリーのOZORAと並びサイケデリックカルチャーを中心とする野外フェスティバルとしては世界最大級を誇る。
Text&Photo:小張正暁 (DANCE ON THE PLANET / ageHa / DFY inc.)

 


BOOM FESTIVAL オフィシャルサイト
https://www.boomfestival.org/

BOOM FESTIVAL Youtubeチォンネル
https://www.youtube.com/user/BoomWebTv

BOOM FESTIVAL Facebookページ
https://www.facebook.com/boomfestivalofficialpage/
 
 私たちはこの夏、ハンガリーOZORAフェスティバルの後、スペイン・マドリードでレンタカーを借りて450kmの道のりをポルトガルへと向かった。オープニングセレモニー
前日の8月11日から8月17日の最終日。更にその翌々日19日まで9日間滞在した。

 このフェスティバルには「ゲストカントリー」と呼ばれる制度があり、幸いにも2016年は日本がその対象国に選ばれ、500人の無料招待枠が用意されて、多くの日本人が参加した。

 2014年の膨らみすぎた集客に対する反省を元に、2016年は33,333枚に限定された前売りチケットは販売と同時にソールドアウト。そのおかげもあって滞在中は至って快適に過ごすことができた。もちろん、野外で1週間をこえるテント暮らし、灼熱でのポルトガルは砂埃など過酷だったのは間違いないけれど、そこにはかけがえのない感動が溢れていた。

 そこで、BOOMに参加したBOOMER(=ブーマー/BOOMに参加した人は自らのことをそう呼ぶ)との思い出を振り返りつつ、
次回2018年の参加を目指す未来のBOOMERたちへの足がかりになればと、このリポートを残すことにした。  
 
会場の規模ってどのくらい?

 
 大きな湖のほとりに広がるBOOMの会場は「BOOM LAND」と呼ばれる。至る所にデコレーションが配置され、会場全体が体験型のアート作品になっている。ステージはサイケデリックトランスを中心にしたメインステージである「Dance Temple」。トランスに加えテクノもかかる「Alchemy Circle」。ライブ中心の「Sacred Fire」。そして「Chill Out Stage」と4つのフロアを軸に、トークセッションのステージやヨガなどのワークショップなどが配され、夕方になると湖のビーチに突然仮設のDJブースが出現したりもする。

 「ハンガリーOZORAより遥かに大きい」と言われることの多いBOOM。そこで、エリアマッブとGoogleマップの縮尺を合わせて比較画像を作ってみた。意外なことに想像していたよりもBOOMは大きくなかった。いや、OZORAも大きかった。というべきか? そこでさらに代々木公園と隣接する明治神宮を並べて見ると、思ったよりも代々木公園と明治神宮も大きかった。

 BOOMもOZORAもキャンプサイトの端からメインステージまでおよそ2キロ弱。徒歩で30分ほど。フジロックよりも歩く距離は少ないかもしれない。けれど1日に何度も往復はできない。1週間という滞在型のフェスにおいてこの距離感が適切なのだろう。

 フェスの期間中、ひたすら歩き続ける人々の姿を見て「このフェスは歩く部族のギャザリングなのだ」と思い至った。踊り続け、よく食べ、歩き続ける1週間。体は引き締まり、健康になるばかりだった。
 
 
キャンプスタイルの違い


 OZORAとBOOM、会場の大きさは一見大きく変わらないように思えるが、会場のキャパシティーという意味では確かにBOOMの方が収容力は大きい。何故ならキャンプのスタイルが違うからだ。OZORAは基本的に車を横付けして隣にテントを張れるオートキャンプスタイルが主流であり、多くがオートキャンプ可能のエリアとなっている。

 一方、BOOMもCaravan Parkと呼ばれるオートキャンプエリアが設定されているものの限定的で、基本は日本のフェスのように駐車場に車を停めて、そこからテントや荷物を運ぶスタイルが主流である。マドリードからレンタカーで向かった私たちも、結果的にオートキャンプエリアに入ることはできず、駐車場からの道のりを、荷物を引きずり、農作業のトレーラーを乗り継ぎながらキャンプエリアを目指すこととなった。

 ちなみに、今年本数が拡充されたバスツアーは会場中まで入って乗り降りできるのでとても便利だったそうだ。私たちも次回はバスツアーを使ってみようかと考えている。

 とはいえ、私たちには修行のような道のりだったけれど、それも今となってはいい思い出である。エントランスの丘からの下りてくるトラックに乗り360度全天球動画の撮影にチャレンジした。

 
 
 その他にも会場各スポットを360度全天球写真で記録してきたので、ぜひ見てほしい。下記URLはその写真。

■Dance Temple
https://theta360.com/s/nWImF5Gl2rpRhwZvmg7OSVjOu

■Alchemy Circle
https://theta360.com/s/coT3LsT7NjbBpKWl1Fo2TA1yu

■Chill Out
https://theta360.com/s/iWXd9VTHiGYGDO7NwIweduOrU

■The lake
https://theta360.com/s/iDLV2V6ykpGVAVI1masR3YOG4

■Info Stand
https://theta360.com/s/fdalLrb6lzmaIzYxdpPDZp6Wq

■Central Plaza
https://theta360.com/s/cduitvUUBQnF3NyPHYgb9mAlA
 
 
BOOMでの生活

 
 基本的に昼間は暑くてテントで寝ているのは無理なので、私たちは昼型の生活をしていた。皆で朝ごはんを食べ、1日の行動スケジュールを相談する。Wifiが繋がるという噂もあったが、全然繋がらず、失くすのも馬鹿らしいので携帯は車に置いてきた。携帯を使っている人なんてほぼいないし、腕時計すらしている人の方が少ない。

 昼になると、まずはメインステージの「Dance Temple」に繰り出しフロアの様子をうかがう。Dance Templeは真ん中に柱がない独特な構造に布製の天幕がたなびき、フナムシやカブトガニを思わすようなフォルムをしていた。この屋根からはミストシャワーが降りまかれていて外に居るよりも涼しい。だからだいたい昼はフロアで踊り、夜はしっかり寝る。

 食事はフードコートのような出店エリアがあり、1皿6〜10ユーロ。ピザもその場で生地をこね、窯で焼く本物!! 何を食べても美味しいけど、ピークタイムは結構並ぶので、私たちは自分たちで料理をすることも多かった。

 ドリンクは、水が1ユーロ、ビールが1缶2ユーロ。OZORAもそうだがヨーロッパのフェスは飲み物が安いから重い飲み物を買い込んでいく必要はない。

 さらに、BOOMでは、24時間オープンのスーパーマーケットにATMまで存在している。スーパーマーケットはクレジットカードが使えるので、高額なユーロを持って無くすことを心配する必要もない。

 またフードのゴミ箱やバーの壁面にまで花の寄せ植えポットがデコレーションしてあったのにも感動した。ここまで細部に想いのこもったフェスティバルは見たことがない。

 そして、特に感動したのはトイレである。構造用合板でハンドメイドされたトイレは常に清潔に保たれ、不思議と匂いが溜まらない構造になっていた。トイレットペーパーが外にあって、必要な分だけとって並ぶ。というシステムも素晴らしい!!!しかも、きちんと皆順番待ちをしていてズルをするような人もまったくいない。客層の良さにも静かに感動してしまう。

 シャワーは各キャンプサイトにあり男女共用。ビーチでもシャワーでも裸の人も多いので特に気にもならない。ただし、シャワーが使える時間は限られているので時間を選んで入る。(深夜は使えない。おそらく水の使いすぎ防止のため)水シャワーだがOZORAに比べると冷たくないので、十分快適だった。

 また湖での水浴びも楽しい。人が多いエリアは多少水が汚れていたが、友人たちは離れたエリアで毎日湖に浮かんで遊んでいたそうだ。
  
 
トランス専門メディア「Trancentral」によるリポート

 
 この夏、OZORA、BOOMとステージに入れさせてもらい取材をしてきたが、アーティストに帯同するカメラマンの中にトランス専門の海外メディア「Trancentral」のスタッフの顔があった。「Trancentral」はレーベルやブッキングエージェンシーの垣根を越えて、アーティストたちのSNSを始めとするオンラインプロモーションを行う会社であり、日本では見られないその分業形態に大変感銘をうけた。彼ら「Trancentral」が今回のBOOMを取材して制作した映像にDANCE ON THE PLANETが日本語訳を付けさせてもらったものがこちらである。

 
 
  世界中の最新トラックからライフスタイルまで、サイケデリックシーンの情報ゲットするなら「Trancentral」は要チェックであることは間違いない。

Trancentral Website: http://trancentral.tv
Trancentral Youtube: http://bit.ly/TrancentralSubscribe
Trancentral Facebook: https://www.facebook.com/TrancentralTV
 
 
自律する意思によって創られた夢の国


 大きな湖のほとりに2年に一度、3ヶ月だけの街ができる。そして世界中から人々が集まり、1週間にわたって人生の祝祭を共有する。このフェスティバルを特徴付けているのは、協賛などの力をかりず、商業主義に陥ることのない自律したコミュニティーが、未来への確かな意思と計画性をもってこのフェスティバルを作っている。ということである。これはOZORAでも同様であるが、BOOMはそこにスピリチュアルな要素とコミュニティーの力をバランス良く取り入れているように思えた。そして、その強い意志は「BoomLand Crowdfunding」として実を結ぼうとしている。
https://madeinboomland.org/crowdfunding/

 私たちがショップエリアで休憩をしている時、一人の女性がこのクラウドファンディングについて説明をして回っていた。その時の動画が以下にある。

 
 
 彼女はボランティアスタッフのキャロライン。私はゲストカントリーとして招待してくれた感謝を込めその場で50ユーロを寄付した。そして、去る9月28日、BOOM FESTIVALはBoomLandを国から購入した。BoomLandはついに”私たち”の土地になったのである。

 

 
 
 
音楽と祝祭


 と、ここまで肝心の音楽についてほとんど触れなかったが、やはりこのフェスティバルの中心にはサイケデリックトランスがある。なかでも今回のBOOMで最大の注目を集めたのはAce Venturaによる5時間セットであったことは間違いない。10月にもageHaのパーティーに来日してくれた
Ace Venturaだが、普段のパーティーはヘッドライナーでピークタイムを受け持つのが常である。それが5時間となれば、長いストーリー性と緩急巧みなセットが求められるわけで、しかも2年に1度の大舞台で、意気込みはアーティストもオーディエンスも並々ならないものがある。実際、今回の2時間目あたりのテクノ的な展開には目を見張るものがあったし、5時間プレイしつつ踊り続けるAce Venturaのエネルギーにも度肝を抜かれた。アーティスト自身が挑戦し、愉しむ。フェスティバルとは”祝祭”であり、その本来の意義を思い出させてくれる5時間セットであった。
 
 また、私が撮影したなかではAJJAのライブセットの素晴らしさも際立っていた。今までAJJAといえばダーク系のトランスアクトという印象が強かったが、それを良い意味で覆すオリジナリティー溢れるサウンドであった。AJJAもまた年明け1月21日にageHaで開催される「O.Z.O.R.A. One Day in Tokyo 2017」で来日するので、この動画で予習しつつ楽しみにしていてほしい。

 
 
 
 
 
 
陽気で優しい人々と驚きの日々


 BOOMに集まる人々はとことん優しい。地の果てのようなところまで楽園を求めてやってきた人々は自分が何をすべきか? よく知っている。再会の歓喜、日常の微笑み。日本からやってきてBOOM LANDに降り立つと、それが同じ星の出来事であることを信じられない気持ちになる。そして、事実、日本では考えられないような多くの光景に出くわす。
 
 
 
 
 
BOOMで出会った日本人たち

 
 最後に、今回のBOOMで出会った日本人BOOMERたちの写真を載せて今回のレポートの締めくくりとしたい。今回、フェス中に出会えない多くの友人がいた。果たして、500人の招待枠のうち、実際何人の日本人がBOOM LANDまでたどり着いていたのだろうか?次回、BOOMフェスティバルは2年後の2018年夏。今年よりも多くの日本人BOOMERに出会えることを願っている。

We are LOVE。
愛のために、愛に生きよう。あるがままに!!