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Mysteryland

 「Yesterday Is History Today Is A Gift Tomorrow Is A Mystery」このフレーズはオランダの超人気フェスティバル、Mysteryland 2014のキャッチフレーズである。昨年度、Mysterylandに参加した私は、名前の通りこのフェスティバルの“Mystery”な世界にどっぷりはまってしまった。そして今年のMysterylandは、始まって以来の2日連続開催である。今回のキャッチフレーズは「One day is not enough」私はドキドキを抑えながらこの8月29日、30日を待ち望んでいた。今回、私が感じたMysterylandの魅力を昨年に続き紹介したい。
(2014年度Mysteryland記事: http://www.clubberia.com/ja/reports/2120-Mysteryland/


Photo/text:Atsushi Harada​
http://salon.io/atsushi-harada-photography
  
 今年は2日間の開催ともあって、約13万人の来場があった。また特設キャンプサイトも用意されていた。ステージ数は1日目が合計18ステージ、2日目が17ステージだった。Mysterylandはとにかく、会場、ステージ、モニュメントも規模が大きい。端から端のステージまで歩くと約50~60分かかる。そしてそれぞれのステージ間の通り道には、デコレーションやアトラクションがあふれ、どこもかしこも寄り道したくなる“楽しい瞬間”の連続である。メインステージは、メインエントランスから程近い場所にあり、目の前には大きく真っ赤なモニュメントがそびえ立ち、およそフロアには1万人はいたのではないかと思われる。メインステージはトレンドなトランスミュージックでブッキングがされており1日目の大トリは「Heroes」の名曲を生み出したAlesso。2日目の大トリは18歳でDJ MagのDJランキング(2014年)で4位を獲得したMartin Garrix。メインステージを通ると、大型スクリーンに様々な旗を掲げたオーディエンスが映り出され、世界中からこのイベントのために、人が来ていると感じた。

   
 私がMysterylandを好きなポイントは“音楽”はもちろんのこと、いろいろと仕掛けられた“エンターテイメント性”にある。このMysterylandは生中継を行い、公式ホームページからリアルタイムに世界中のパーティー好きに届けられていた。そして人と人がつながれるように、知らない人同士が写真を取り合い公式ホームページにアップするという取り組みも行っている。写真規制が多いフェスティバルが増えているなかで、写真を通じて人をつなげるという試みは素晴らしいと思った。またアジア風のブースでは、ファンクバンドThe Incredible Stacksと共に皆「フラフープで踊ろう!」という、試みが行われていた。皆が自慢げにフラフープを「どーだぁ」と言わんばかりに腰を回しているのが少し笑えた。
小型のクラブブースでは2000年代のウエストコースト系のヒップホップが流れ、目の前ではゲイダンサーがお互いを挑発しながら艶めかしい動きをしていた。あまりにもしなやかな動きと妖艶な雰囲気に息をのんだ。それに触発されてか、最前列では、ダンスバトルがあちこちで行われていた。
 
 
 個人的にMysterylandの変わり種のエンターテインメントをあげるとデカイ豚のモニュメントである。そこには「授乳を体験ができる」というものである。酔っ払いが頭を突っ込んでゲラゲラ笑っていた光景はMysterylandならではと思った。メインステージの近くに世界中のみんなが大好きなテディベア(身長4メートルはある)が置かれ、このクマちゃん人形に女の子たちが殺到して写真を撮っていた。可愛らしいこと、この上ない。そして印象的だったのは藁の迷路である。青髪の女性が「入れば分かるよ(笑)」言うので、一人で迷路にのりこんだ。ぐるぐる回り中央にたどり着くと、10畳ぐらいのスペースに人が集まり静寂に包まれていた。藁の匂いと、綺麗な空、なによりこのパーティーと対極に思われる静寂があった。アジア人は私しかいなかったから話かけられた。「これが禅なのか? とても不思議な感じだ」と言われた。正直、私にも分からなかったがなんとも不思議な気持ちになった。出口を出る時に青髪の女性に「ニヤリ」とされたのは忘れられない。
昨年、Japanステージを行ったチームAlterego(http://alterego.nu)が今年もステージを展開していた。今年のテーマは黒魔術。ステージを見ると裸体を縄で縛られた女性が、ステージ上に立ち、付き添いの男達に背負われるという衝撃的なシーンだった。この派手な舞台演出にただただ、驚いたと言うしかない…。
 
 
 私が夢中で踊れたのはHyteステージのDubfireだった。真っ暗な室内ステージにフロアを突き刺すライティング。DJの音をつなぐ際に、一瞬フロアが静かになりつないだと同時に歓声が上がる。鳥肌が立ったのを覚えている。またオランダのバンドWicked Jazz Soundsは、ダンスミュージックとグルービーなサウンドを融合していて、私は個人的に一番好きな音楽であった。そして22時30分ごろに最後のエンドショーの時間がやってきた。去年、Mysterylandで衝撃を受けたQ-danceステージに足早に向かった。大トリを飾るDJはオランダの様々なハードコアのビッグフェスでもプレイをしているEvil Activities。ステージには、いったい何万人いるか分からない。撮影をするためベストポジションを目指し、人をかき分けていくが、煌びやかなゴリラのステージからはとてつもないハイビームと煙と爆音を吐き出し、圧巻の迫力に満ちあふれていた。この最後の30分とラストの花火までは、ほとんど記憶が無い。それぐらい没頭してシャッターをきっていた。オーディエンスが手をあげる瞬間、スモーク、照らされるライティング、思い出すだけで、あの時間にまた戻りたいと思う。

 Mysterylandの魅力は山ほどあるし、伝えきれない場面もたくさんある。私がただ願うことはこのMysterylandが、日本に上陸することを心から願っている。そして2016年のMysterylandをもう待ち望んでいる私もいる。