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Globus Mix Vol.4

Daniel Bell
Globus Mix Vol.4

世界一信頼されているクラブ系ウェブサイトの一つである、Resident Advisorによる「2000年代ベストMIXCD50」で2位の栄誉を受けたタイムレスクラシックがTresorより2010年、遂に再発される。不朽の名画「カッコーの巣の上で」内の、精神科医とジャック・ニコルソンとの会話のサンプルからスタートするこのミックスCD。オリジナルのリリースが2000年という事を踏まえると一種異様ともいえる趣のトラック群が並んでいる。どんなDJがその時分にFARBENやLOSOULを自分のミックスCDに収録し、またそれらをNICK HOLDERといったUSディープハウスと並列で語っていただろうか。どんなDJが、今ではミニマルハウスの特大クラシックとなったProblemKidsのトラックにその頃着眼していただろうか。そんな特異なセレクションを、細かなジャンル分けやカテゴライズは不要とばかりにDanielBellは雄弁に、完璧なまでの説得力で一つの旅にまとめあげていく。最後の楽曲Shake「Detroit State Of Mind」が終わるとき、これはDanielBellただ一人が持つフィルターを通した「ハウスミュージック」だったと分かるはずだ。精神科医「君は自分で自分の精神に問題があると思うかね?」ジャック・ニコルソン「全然思ってないね。」なぜイントロにこの会話のサンプルを持ってきたのか?

 

私は本人に尋ねた事がある。彼は「なぜそんなことを知っているのか?」と驚きながらもこう答えた、 「自分では"普通だ"と思ってやってる事でも、 周りから見たら"おかしい"と言われることってあるだろう。本当におかしな人ってのは、得てして"自分は普通だ"と思ってる事が多いんじゃないか、と思ってこのサンプルを使ったんだ。」

 

このミックスCDは、DBXの名で全く誰もフォロワーたり得ない「おかしなこと」をやり続けた男の、おかし過ぎる、そしてクールすぎる作品だ。リリースから10年を経て今こそ聴かれるべきDanielBellの金字塔。

 

(written by yone-ko)