INTRODUCTION


古くはアンダーグラウンド・レジスタンス(UR)としての活動から現在に至るまで、偉大なテクノアーティストとしてその名を多く知られるJeff Millsだが、現在の彼の活動は音楽に留まらず、シネマやビジュアルなどこの10年間、近代アートとのコラボレーションを積極的に行いDJや楽曲制作活動以外にも偉大な功績を構築している。
2000年、フリッツ・ラングの傑作映画「メトロポリ ス」に新しいサウンドトラックをつけてパリ/ポンピドゥーセンターで初公開したこ とを皮切りに、翌年スタンリー・キューブリック監督「2001年宇宙の旅」にインスパ イアされた「MONO」というインスタレーションを制作。2004年には自ら制作したDVD 「Exhibitionist」の中でDJプレイの様子をあらゆる角度から捉えるなど、DJカル チャーに新しい一石を投じる出来事となる。DVD「Exhibitionist」はHMV渋谷店で洋 楽DVDチャート1位を獲得し、テクノやダンスミュージックの枠を超えるヒットと なったのは記憶に新しい。2005年には、フランスの映画会社MK2から依頼を受けバス ター・キートン監督主演のサイレント映画「Three Ages」のサウンドトラックを手掛 ける。映画から6本のビデオアート作品を制作してパリ/Geroges-Philippe et Nathalie Valloisギャラリー、仏ノルマンディー地方の美術館/Musee des Beaux-Artsに展示。またJosephine Bakerを題材にしたビデオ作品はパリ/グランパレ FIAC2005(フランス現代美術見本市)においても展示した。2005年7月には、フラン ス南部のUNESCO指定遺跡 Pont du Gardにおいて仏モンペリエ交響楽団との共演を果 たし、Jeff Mills作品のクラシック・オーケストラバージョンを披露。1万人を超え るオーディエンスを前に人種、世代、音楽ジャンルの壁を超えたテクノの新しい価値 観を提示する歴史的パフォーマンスを行った。2007年にオープンしたパリの博物館 Musee du Quai Branlyでは、「African Disapora」のエキシビション音楽を担当。こ の年、エレクトロニック音楽界初の受賞となるフランス政府より日本の文化勲章にあ たるChavalier des Arts et des Lettresを授与。2008年、フューチャリスト・マニ フェスト100周年記念として開催されたパリ/ポンピドゥーセンターでの展示では、唯 一現存のアーティストとしてオーディオ・ビジュアル作品を提供するなど21世紀の偉 大なアーティストとして歴史に名を刻む存在となっている。

今回のClubberia Featuresでは近代アーティストとして進化を遂げているJeff Millsの活動に着目し、同名アルバムのために作られた『X-102 Rediscovers The Rings Of Saturn』というビデオプログラムについて、そして自身がシカゴで手がける『GAMMA PLAYER CHICAGO』というセレクトショップについてインタビューを行いました。















X-102
TRAILER










1991〜1993年、Underground Resistanceのオリジナル・メンバー「Jeff Mills」、「Mad Mike Banks」、「Robert Hood」がX-101、X-102、X-103とユニットネームを変えながら、ベルリンのトレゾアレーベルと共同で作品をリリースし活動する。1992年には、コズミックテクノの傑作とされる「X-102 Discovers The Rings Of Saturn」をリリース。アナログ盤には、大きな土星がスリーブに描かれターンテーブルの中心から外側へと逆回転に溝が掘られおり、太陽系を惑星が回るようにレコード針が動く仕組みのギミックが織り込まれていた。そのリリースから16年後の2008年6月、『X-102 Rediscovers The Rings Of Saturn』として新たに4曲を追加、伝説のアルバムが再発された。2008年のバルセロナSonar Festivalにおいては、「Jeff Mills」、「Mad Mike Banks」による「X-102 Rediscovers The Rings Of Saturn』のLiveパフォーマンスが行われテクノの歴史に残る一夜となった。このLive時のバックに流れていた60分程の映像作品を「Rediscovers The Rings Of Saturn」として再編集しパリ、ロンドン、トレノ、シカゴと世界各地の映画館、ミュージアムなどで上映を行い絶賛されている。主な内容としては、米NASA宇宙衛星探査機の開発プロジェクトに携わるドイツ人博士とX-102(Jeff Mills+Mad Mike Banks)による共同作品。NASAの惑星探査機から送られてきた土星を中心とした太陽系惑星の最新映像をベースに、場面や転回ごとにリズムを合わせサウンドトラック形式でエディットした未知なる宇宙を探求する壮大な作品となっている。 「X-102 Rediscovers The Rings Of Saturn」CLAUDIA CASSIDY THEATER IN THE CHICAGO CULTURAL CENTERでの上映後、AXIS RECORDSにてJeff Mills単独インタビューを行った。

ー土星や太陽系惑星の繊細な映像と宇宙空間や惑星の回転を音楽で表現することで広がるサウンドスケープの世界に圧倒されましが、この上映に対しての目的や映像をクリエイトするにあたってのコンセプトについて聞かせて下さい。


このアルバムを最初にリリースした当時、このような宇宙の存在や惑星とのコネクション、または、それらを知ることや研究することがわたしたちの未来に繋がっているのではないかと考えていました。X‐101名義で最初にリリースしたアルバム「Sonic Destroyer」に収録された曲「Rave New World」のタイトルにあるように1991年〜1992年にかけてMad Mike Banks、Robert Hoodと共にヨーロッパをライブツアーするなどヨーロッパのレイブカルチャーシーンへ積極的に参加している時期でした。1991年にUnderground Resistance が「Nation 2 Nation」のアルバムをリリースした頃には、音楽業界的にレイブカルチャーが終わりかけてきている状況でもあったのです。そのような状況の中で「Discovers The Rings Of Saturn」は、リリースされました。今回、映像をクリエイトするにあたってのわたしの考えですが、とにかく与えられた最新の土星を中心とした宇宙映像とその情報を忠実に再現しようと注意を図りました。土星は、太陽系の惑星の中でもミステリアスな存在でありバイオレンスなイメージのある惑星です。それは、音楽で例えるならばリーサルでアグレッシブな感じとでも言うのでしょうか。

ーパリ、ロンドン、トレノでの上映と今回、AXIS RECORDSのホームタウンであるシカゴダウンタウンにあるCLAUDIA CASSIDY THEATER IN THE CHICAGO CULTURAL CENTERで上映された感想はいかがでしたか?


とてもハッピーでスペシャルな夜となり喜んでいます。今回の上映は、テクノを題材としながらもダンスイベントではなかったので客席には、年配の方の姿もありました。会場となったカルチュアルセンターのプログラムの一つということもあり、上映内容に興味を持って足を運んだ方も居たのだと思います。上映を終了してからは、簡単なパネルディスカッションも行いました。まだ正式には、決まっていませんが私の育ったデトロイトでも上映しようかと検討しています。







日本のファンも心待ちにしていると思いますが、日本での上映予定はあるのでしょうか?


もちろん上映したい気持ちはありますが、まだ何も決まっていません。もしかしたらMad Mike Banksのところへは、オファーがきているのかもしれませんね。




バルセロナSoner 2008では、X-102としてUnderground Resistance の盟友Mad Mike Banksと久しぶりに同じステージに立たれていかがでしたか?


1992年のリリース時にも「Discovers The Rings Of Saturn」のツアー計画はありました。今回のリリースに関して最初は、ステージでのパフォーマンスを想像していませんでした。Liveパフォーマンスに関しては、ブロードキャストすると捉えて取り組んでいます。X-102でのLiveをまた行うことがあればバルセロナSonar Festivalとは内容の違った、もっと手の込んだLiveパフォーマンスを行いたいですね。

「X-102 Rediscovers The Rings Of Saturn」の再発盤リリースに関しては、いかがお考えですか?


毎日、衛星からの映像が地球へ送られて来ています。土星には、まだまだ未知なる世界が存在していますから今回のマスタリングは、最新情報のアップデートであると考えています。


X-102は、Mad Mike BanksとのユニットですがUnderground Resistanceのメンバーとは、現在どのような関係にあるのでしょうか?


1992年にUnderground Resistanceを離れましたが、現在でもメンバーとはコンタクトがあります。Underground Resistance以外のプロジェクトも実は、長いタームで考えられているのです。今後、様々な新しいプロジェクトがスタートする可能性があるかもしれません。


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