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PLAY, JAPAN! Red Bull Music Academy in conjunction

【Live & Lecture】AFRICA HITECH, AZZURRO, diyTokion, mfp, RLP, Tokyo Basement Boys, [DJ] Fujimoto Tetsuro, re:ill, sauce81

 

毎年、世界各地から厳選された将来有望なプロデューサーやミュージシャンが集い行われるレッドブルが主催するサウンドワークショップ「Red Bull Music Academy 2011」。今年、いよいよ日本で開催される予定だったが、3月11日の東日本大震災の影響もあり、日本開催は残念ながら見送られることとなった。ただ、その後もRed Bull Music Academy関連のイベントは続けられている。今回ご紹介する「PLAY, JAPAN!」は、「ローカルの音楽シーンと共に、音楽の持つ力で人びとにインスピレーションやパワーを届けよう!」というコンセプトのもと、独自のイベントとメディアを通じ、日本のあらゆる地域とその音楽シーンを盛り上げていくプロジェクト。
その「PLAY, JAPAN!」が8月26日に渋谷"SECO"にて行われた。講師を招いてのレクチャーと実際にパフォーマンスを行うパーティーの2部構成になっている。今回は5月に"Warp"よりアルバムをリリースしたAfrica HitechのMark PritchardとSteve Spacekの両者が招かれており、私は、レクチャーとパーティーの両方をじっくり楽しんできた。さらに、パーティーは、アカデミーの卒業生でもあるsauce81のオリジナルイベント「COSMOPOLYPHONIC」とのコラボレーションだったので、それもまた楽しみだった。

当日は、あいにくの空模様だったが楽しみなことがあるとさほど気にならないものだ。会場へ到着しエントランスで翻訳機を借り、レッドブルが制作しているフリーペーパー、CDがプレゼントされた。この2つとも無料とは思えないクオリティーで、レッドブルのブランディングはもちろん、シーンに対する貢献度には頭が下がる。特にフリーペーパーは読み応えがあり、全国のクラブ、ライブハウス、ショップ、レコード店などで配布されているので是非手にとって見てほしい。

会場には、Red Bull Music Academyのロゴが刻印された大きな木製の板が飾られており、そのフロントにAfrica Hitechの2人、Steve SpacekとMark Pritchardが座っていた。それをとり囲うように一般ギャラリー用の席が設けられ、オフィシャルサイトで見ていたレクチャーと同じ雰囲気に、あたかも自分がアカデミーの生徒にでもなったかのような気持ちになる。レクチャーは、予約制となっており、今回も即時で定員に達したレクチャーには、大阪からこのためだけに来たという熱心なファンもいたようだ。意外といったら語弊があるかもしれないが、女性が半分近く占めていたのには驚いた。

スタートまで時間があったので、関係者へあいさつに行くとSECOのスタッフが「GLOBAL COMMUNINATIONSのMarkがSECOにいるよー」っとかなり興奮気味。GLOBAL COMMUNINATIONSは、Mark PritchardとTom MiddletonによるUKテクノのベテラン中のベテランユニット。中でもGlobal Communicationの"76:14"は、アンビエントの金字塔とも称されている。一方、Steve Spacekは、デジタルフューチャーソウルグループと称されたSpacekの中心人物であり天才的MC。その総称通り、ソウル、R&B、ヒップホップといった音楽とエレクトロニクスを掛け合わせジャンルを越境していった。そんな音楽通を唸らせてきた両者が手を組んだ未来派トライバルベースミュージックとでもいうべきか。

レクチャーは、1人の司会がいてQ&A方式で進められていく。Steve Spacekが主に質問に答えていたが、座っているだけでもフロントマンとしてオーラがすごい。一方Mark Pritchardは、職人的などこか物静かな雰囲気をまとっている。質問は、結成までの生い立ちや、音楽的な背景、楽曲制作、アカデミーに関してと進んでいく。あの場にいる人の多くが気になる制作面での質問に関しては、ミキシングにLOGICを主に使用し、アレンジにはLIVEを使っており、さらに最近では、iPhoneアプリのナノスタジオなども使用していると答えていたのに驚いた。アプリに関しては、通常ではやらないことができるため、その偶然性をアイデアにもしているとのことだった。また、今年5月にリリースされた"93 Million Miles"では、150曲の中からベストのものに絞ったときも、曲順も相当考えたと言っていた。「流れもアート」と言う彼らの、徹底したクリエイションへの拘りと、新しい技術をうまく取り込む柔軟性を感じれた。

レクチャーが終わるとパーティーへ移行していったのだが、私は私用がありいったん会場を離れた。ちょうどパーティーが一番盛り上がる時間に友人を連れて戻って来たとき、ちょうどAfrica Hitechのライブがスタートしたところだった。即座に「この音はやばい」と思い満員のフロアの中、少しでもいい音が聞こえる左右のスピーカーの中央に徐々に移動する。トラックメイクをするわけではないので理屈は分からないが、彼らの音は面白い。素材ひとつひとつが特徴的でバラバラのようがだ、曲としてまとまっている。前半のレクチャーで言っていたように、彼らの背景であるアフリカンリズム、ロック、ジャングル、グライム、ダブステップ、ジャマイカン、デトロイトテクノ、シカゴハウス、etc、様々な音楽が入り混じったベースミュージックを形成している。まさに、音楽に対して貪欲で柔軟なイギリスのカルチャーを表した音だと思った。

友人は、終始「やばい、やばい」と言い踊っている。大手企業の作曲をもこなす彼のテンションのあがりっぷりにはびっくりした。トラックメイクの知識があるだけに、彼にしかわからないすごさや音があるのだろう。ただ、フロアにいる人には彼のような専門的な知識は持ち合わせていないが、変わらず盛り上がっている。これが私は嬉しかったりもする。関係者が後ろで腕を組んで分析でもしてる光景や話ばかりしているのではなく、熱狂さずにはいられない音楽的クオリティー。また、あくまでもパーティーなので誰もが楽しめるパーティー感。なかなか両方が揃っているアーティスト、パーティーはないように思う。この日は、友人と共にひたすら踊り、ヒューヒュー言って、音楽について語り合い、音楽に対するモチベーションが非常にあがったパーティーだった。友人も「今日は来てよかった、久しぶりにいいもの見れた」と言ってくれたので、私も誘ってよかった。

「PLAY, JAPAN! Red Bull Music Academy」は10月7日(金)に京都"CLUB METRO"と11月2日(水・祝前日)に東京"UNIT"で開催が予定されている。是非アーティストを目指す方もそうでない方も、音楽の持つ力でインスピレーションやパワーを得てほしい。

Text : yanma (clubberia)