脳裏に強く刻まれた事を振り返る時、その映像はスローモーションで映しだされることが多い気がする。そのことを音楽フェスティバル「RAINBOW DISCO CLUB 2016」(以下RDC)のアフタームービーを見て感じた。この映像は、あの場にいた人たちの視点を集め共有したようなものだった。だから、その光景を見ていなくても、RDCに参加していたら「そうそう、こうだったよね」とついつい言ってしまいそうになる。

 4月29日から5月1日にかけて静岡県・東伊豆クロスカントリーコースで開催されたRDC。
ハウス、テクノ、ディスコを中心に2010年から開催。2014年までは東京・晴海客船ターミナルで開催されていた(2011年は東日本大震災の影響、2012年は悪天候のため開催中止)。晴海の会場特性もあり、都内はもちろん、関東圏からのアクセスもよく、レインボーブリッジや海を眺められる都会的なロケーションから“都市型フェスティバル”とも呼ばれていた。2015年から会場を静岡県・東伊豆クロスカントリーコースへ移し開催されている。

Text : yanma (clubberia)
Photo : Jiroken、Ken Kawamura、Masanori Naruse、Suguru Saito_Red Bull Content Pool

 昨年のRDCにも参加していたが来場してまず来場者が大幅に増えていることに驚く。昨年の評判がとてもよかったのだろう。その反響が形として現れていた。
 来場者が増える見込みや、昨年の開催を活かして変わったところ、私のなかでは大きく2つ。1つはキャンプエリアが増えたこと、1つはRED BULL MUSIC ACADEMY STAGE(以下:RBMA STAGE)の開演から終演までの時間が変わったことだ。
 まず、キャンプエリアが増えたことで場所取りやテントの密集によるストレスはなくなった。新しく加わったテントエリアで3日間過ごしたが、そこはとても快適だった。会場内にあるメインステージのRAINBOW DISCO CLUB STAGE(以下:RDC STAGE)、セカンドステージのRBMA STAGEともに近く、飲食エリア、トイレにも近い。さらにRDC STAGEのサウンドシステムから直線上にあり、テントにいながらBGMとして聴くには十分すぎる音楽が楽しめた。
 昨年のRBMA STAGEは、RDC STAGEとほぼ平行して進行していたが、今年は時間をずらして進行された。RDC STAGEが21時までに対し、RBMA STAGEは24時まで。昨年は時間がかぶっていることもあり、RBMA STAGEでいいパフォーマンスが行われていても、人が流れていくことが
どうしても難しく、もったいない部分もあったがそれが解消されていた。
RAINBOW DISCO CLUB STAGE。奥に見えるピラミッドがDJブース
 
ブースから見るRED BULL MUSIC ACADEMY STAGE
 
 パフォーマンスではRADIO SLAVE、それとDJ NOBUとTHE BLACK MADONNAによるバックトゥーバックがベストアクトだったように私は思う。RADIO SLAVEは出演キャンセルとなったANDREW WEATHERALLの代わりに急遽決定。あまりに直前だったためWEATHERALLで楽しむ予定だったオーディエンスを前に不利な状況だったに違いない。が、さすがベテラン。開催初日ということもあり体力的にもテンション的にも元気なオーディエンスをのせる、固く派手目な選曲で初日のRDC STAGEのトリの役割をこなした。
 そして、2日目のRDC STAGEで行われたDJ NOBUとTHE BLACK MADONNAによるバックトゥーバックのセット。THE BLACK MADONNAの選曲は全体的にキャッチーで、会場はかなり盛り上がっていたが、曲の抑揚を付けてオーディエンスの感情をコントロールしていたのがDJ NOBUだったように思う。THE BLACK MADONNAが盛り上げたテンションを落とさないように渋い曲でもテンションを維持。合間合間に感情を解き放ったような曲で盛り上げたりと。なにより全出演者が世界をフィールドに活動しているトップアーティストの中で日本人がトリを務めるという意義は大きい。いつもこのポジションンは外国人アーティストだったのだから。
 
初日のRDC STAGEのトリを飾ったRADIO SLAVE
 
2日目のトリを飾ったDJ NOBU(左)とTHE BLACK MADONNA(右)
 
 今年もRDCは成功に終わったと思える。ほかメディアでの評価、終わってからのSNS上での反響。なにより開催中の盛り上がりや、オーディエンスの笑顔の多さが成功の証だと思う。RDCは今後どのように進んで行くのだろうか? そのヒントがピラミッド形をしたDJブースから窺えた。
「いままでのアート・ディレクションの多くに“円”をモチーフにしていたけど、これからは、あのピラミッドのブースみたいに尖っていこうと」(RDCオーガナイザー 土屋マサヒロ氏)

 彼のいう“尖る”ということは、マニアックな音楽をやっていくということではないだろう。世界水準のアンダーグランドミュージックが揃うフェスティバルに、ほかのフェスでは行われていない要素を取り入れて、RDCブランドを高めていこうとしているのだと思う。今年は、話題のグランピングを連想させる設備があったり、地元で取れる食材を調理したグルメがあったり。有意義な空間をプロデュースしているようにもみえる。
 
 来年も開催されるかどうかは、まだ不明だ。だか開催された場合、おそらく今年の評判でまた来場者は増えるだろう。
「今年、10以上のフェスやイベントの手伝いをしたけど、RDCのゴミの少なさは圧倒的でした」(RDCスタッフ)
 この言葉が出るということは、モラルのある大人が集まっている証拠だ。フェスティバルを守るのもオーディエンスの役目でもある。会場や近隣からのクレームにより開催が危ぶまれるケースも聞く。もちろん、主催者側は会場や近隣に迷惑をかけないように注意をはらうが、最終的には来場者ひとりひとりのモラルに委ねられる。RDCに限らず、日本のダンスミュージックシーンには素晴らしいフェスティバルやイベントがある。クラブカルチャー自体もそうだろう。遊ぶ側の行動で私たちが、楽しみ、誇りに思うカルチャーの社会的質を自ら落とす危険をはらんでいることを忘れてはいけない。
 

 

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