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常夏のリゾートへと誘うトロピカルチューン
“シティポップレゲエ”の最前線に迫る


 1980年代に流行した日本のポピュラーミュージックのひとつ“シティポップ”と、ジャマイカで発祥したゆったりとしたサウンドが心地良い“レゲエ”。この2つのサウンドを組み合わせた新たなジャンル、“シティポップレゲエ”のシーン最前線で活躍するフィメールシンガーNatsu Summerが、デビューから1年を迎える2017年7月にファーストアルバム『Hello, future day』をリリースする。2016年にリリースした2枚のEP作品「夏・NATSU・夏」と「トロピカル・ウィンター」では、ラヴァーズロックテイストとシティポップが融合したレゲエトラックを全面的に押し出し、両ジャンルのフォロワーから大きな反響を呼んでいた彼女。今回のデビューアルバムは、すべて新たに書き下ろされた計8曲で構成されており、レゲエやシティポップ、さらにはアーバンブギー調のグルーヴィーポップやエレクトロファンクなど、これまでのサウンドスタイルだけに縛られない新境地も披露していた。


取材・文:Yoshiki Yamazaki
写真:Satomi Namba



ーーこれまでの作品はレゲエを主にフィーチャーした楽曲が多かったですが、今回はまた違ったサウンドアプローチ、というかサウンドの幅が広がった印象を受けました。
おっしゃるとおり、昨年リリースした作品(1st EP「夏・NUTTS・夏」、2nd EP「Tropical Winter」)はレゲエサウンドを基調としていて、ダブミックスなど私が音楽的にやりたかった要素をふんだんに詰め込みました。それでなんというか…、(レゲエサウンドは)結構満足してしまったんですよね(笑)。


ーー当時のダブミックスは主に誰が担当したのですか?
Rub A Dub Marketのe-muraさんなどにやっていただきました。昔から大ファンで、今回のミックスの依頼も、e-muraさんが出演していたイベントに足を運んで直談判しに行きました(笑)。


ーージャケットも印象的ですよね。どなたが担当されたのですか?
ファーストEPのジャケットも担当していただいたのですが、スチャダラパーさんや(((さらうんど)))さんのアートワークを手がけてるCIDER Incさんにお願いしました。ちなみにセカンドEPを手がけたのは、夏の海辺やプールサイドをモチーフとした作品で著名なイラストレーター永井博さん(大瀧詠一などの作品を担当)です。

1st EP「夏・NUTSU・夏」

2nd EP「Tropical Winter」


1st Album『Hello, future day』


ーーNatsu Summerさんのすべての作品を手がけているプロデューサー、クニモンド瀧口さんは一十三十一さんのプロデュースワークなどで知られてますよね。彼とはどのようなきっかけで出会ったのでしょうか?
下北沢にBARFOUT!という編集部とブックカフェが併設された場所があって、そこで4年前に開催されていた「middle & mellow」というイベントで出会ったのがきっかけですね。瀧口さんは当時DJで出演していて、私はライブアーティストとして出演していました。そこから、瀧口さんに音楽的な相談をよくするようになって、結果的にプロデュースをしていただくことになり、ファーストシングル「夏・NATSU・夏」のリリースに至りました。
 
 
ーーそもそもNatsu Summerというアーティスト名にはどのような意味が込められているのでしょうか?
じつは特に意味はなく、瀧口さんと焼き鳥屋で飲んでたときにノリで決まったというか…(笑)。最初は冗談で言っているのだとばかり思ってたのですが、執拗にその名前を呼ぶので「あ、この人本気なんだな」とだんだん思うようになって…。でも私も面白いことがやりたかったので、そういう引っかかりのある名前もいいかなと。ちなみに、私の本名はナツキといって、夏生まれ、また実家が愛媛の海沿いの暖かい環境で育ったということもあって、夏とは何かと関係性が高いんですよね。
 
 
ーーレコーディングは順調に進行しましたか?
作詞/作曲は瀧口さんが担当しているのですが、いただいた歌詞に対して、聴感上の耳障りの良さを求める提案などはしましたが、特に衝突することもなくスムーズに進みましたね。ただ、今回のレコーディングのスケジュールが結構バタバタで…。シングルカットの「恋のタイミング」はあらかじめレコーディングしていたのですが、アルバム収録曲の残りの7曲は本当にタイトなスケジュールで敢行しなければならず…。大体1日1曲ペースでレコーディングしてましたね。
 
 
ーーアルバムのなかで特に4曲目の「メッセージ」という楽曲が印象的で。曲のアウトロ部で急に外人の声とヘリコプターのプロペラ音が鳴り始めるんです。あれはどういった意味合いが込められているのでしょうか?
それは聴いていただいた方の想像にお任せしますということで(笑)。あの曲は、宇宙から地球に不時着陸したロボットが人間に恋をする話なんです。ある日、好きな人ができて、(ロボットが)人間の心を持つようになってしまい、でも帰らなければならないときがきてしまって…といった切ない曲ですね。
 
 
ーー個人的に本作で気に入っているポイントを教えてください。
アルバム全体的に聴いてますが、中でも3曲目の「TA・RI・NA・I」という曲はヘビーローテーションで聴いてます。自分の声も合ってるし、レコーディングもすごく楽しかったんですよね。あと「恋のタイミング」も好きですね。リリックビデオを公開しているのでぜひ観てください。




ーー現在ライブはどのような編成で行われているのでしょうか?
主にオケを使って歌うスタイルですね。たまに管楽器奏者の方と交えてやったりします。でもアルバムの曲もドラムとベースとギターは生演奏なので、ゆくゆくはフルバンドセットでライブしたいですね。ダンサーとかも混ぜてユーミンみたいなライブ編成でやりたいです(笑)。
 
 
ーー現在シティポップレゲエシンガーとして活動されてますが、そもそもシティポップレゲエというシーンはもともと存在していたのでしょうか?
ジャンルとしては恐らくあったんだと思いますが、そういった名称を掲げて活動してる方はいなかったと思います。EPリリース以降、自分のInstagramのアカウントで“シティポップレゲエ”というハッシュタグをつけて写真を投稿し続けてるのですが、検索してもほとんど自分の投稿しかヒットしません。ネットで検索しても、“シティポップレゲエ”でヒットするのはほぼ私ぐらいじゃないでしょうか。
 
 
ーーシティポップレゲエの魅力を教えてください。
このジャンルに限ったことではありませんが、2つの異なるジャンルのファンが同じイベントや空間に居合わせることに魅力を感じますね。特にシティポップとレゲエにはあまり共通点がなかったように思えます。私は人の交流がすごく好きですし、アーティストとして人と人を繋げることに意義を感じるんです。今後私の活動でそういった交流がもっと大きいものに発展していけば嬉しいですね。




ーー東洋化成(日本のアナログレコードプレスメーカー)の工場が好きでよく訪問しているそうですね。
実家の目の前が工場だったということもあり、工場が昔から好きなんです。工場って独特な雰囲気を醸し出してるじゃないですか。一般的な会社とは全然違う雰囲気というか…。命に関わるような危険を伴いながら働いている方たちがカッコよく見えるんですよね。工場というより工場で働いている人が好きなのかもしれません。特に“エンジニア”と呼ばれる人にすごく惹かれますね。動きに無駄がないし、言葉にも重みがあるし、働く姿を見ていて気持ちが良いんです。じつは東洋化成の制服も着させてもらって。すごく嬉しかったですよ!あの格好でいつかライブしたいです!
 
 
ーーそんな東洋化成好きなNatsu Summerさんですが、DJとしてもたまに活動していると伺いました。やはりレゲエのイベントでよく回しているのでしょうか?
じつは初めてDJで出演したのはシティポップ系のイベントなんです。でも当時レコードは数枚しか持ってなくて、しかも全部イギリスのルーツレゲエ寄りのレゲエのレコードだったんです。だからあまりその場にマッチしなくて…。それ以来、幅広いジャンルのレコードを集めていろんなジャンルの曲を回せるようにしてます。特にジャンルの偏りはないですね。
 
 
ーー今後DJの予定とかありますか?
8月5日に渋谷のOTOで瀧口さんと一緒にDJをやります。他にも声をかけていただけたらいつでも回しに行きます。絶賛募集中です!
 
 
[Natsu Summerお気に入りのレコード3枚]



加藤和彦/AROUND THE WORLD(Dub Version)


 
Kenia/Initial Thrill


 
Rita Wright/Touch Me Take Me

ーー昔から歌手になることが夢だったのですか?
そうですね。小さいころから合唱団に入っていたこともあって、歌うことが好きだったんです。あと日本舞踊もちょっとやってました。日本舞踊といっても、地元に土着した伝統的な踊りですが(笑)。あと沖縄に1ヶ月ぐらい住んで民謡クラブで働いていた時期もありましたし、何かと音楽に纏わる仕事や文化に触れていたと思います。大学生の頃は、女の子とユニットを組んで、クラブでライブをやったりしてましたね。ちなみにその女の子がレゲエを教えてくれました。
 
 
ーーNatsu Summerとして活動する前に、海外のフェスティバルでも出演されたことがあるんですよね?
はい。ロサンゼルスで開催されていた「Japan Expo」というフェスティバルに出演しました。アジアだと内モンゴル自治区でも歌ったことがあります。後者はコーラスとしての出演でしたが(笑)。内モンゴル自治区にアルシャンという温泉地があるんですけど、どことなく昔の日本みたいな雰囲気なんです。そこで初めて開催された音楽イベントに出演しました。すごく良い経験になりましたね。
 
 
ーー今後も海外でのご活躍に期待ですね。リリース後のライブの予定はありますか?
7月16日にリリースパーティーを鵠沼海岸の海の家「Beach House Kugenuma」で開催します。本当はバンドセットでライブをしたいのですが、海の家だとそれが難しくて、今回はスティールパンと一緒にやります。リリース後はとにかくいろいろなところでライブしたいです。今回リリースしたアルバムも夏にぴったりなトロピカルチューンがふんだんに散りばめられているので、クラブやライブハウスもそうですがやはり野外で歌いたいですね!

 
- Release Information -
タイトル:Hello, future day
アーティスト:Natsu Summer
リリース:2017年7月5日(水)
レーベル:P-VINE, Inc.
 
[トラックリスト]
01. Hello, future day
02. 恋のタイミング
03. TA・RI・NA・I
04. メッセージ
05. 街あかり
06. その眼差しポーカーフェイス
07. 風のリビエラ
08. ふたりが隣にいること
 
■リリースページ
http://www.clubberia.com/ja/musics/4912-Hello-future-day-Natsu-Summer/