INTERVIEWS
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DJ YUMMY

フィメールDJの先駆けとしてハウスムーブメントの普及に貢献し、日本のダンスミュージックシーンを牽引してきたDJ YUMMY。その彼女が出産というしばしのブレイクを経てシーンに戻ってきた。活動のピッチを上げ始める彼女、その目には何が見えているのだろうか?

Interview:Masami Eda
Photos:Hideyuki Uchino

 

 

ーークラベリアのインタビューは約4年ぶりとなりますね。
お声かけくださって、ありがとうございます。

ーー前回の登場は、2013年のミックス作品『Electronic Donutz Mix』のリリースタイミングでしたね。DJや制作はもちろん、レーベルDonutz Traxの運営、クラウドファンディングを用いたアナログレコードのリリースなど、活動は多岐にわたっています。新たなアクションを起こす秘訣みたいなものはありますか?
自分の心のフィルターに引っかかる仕事って、待っていてもなかなか来ないんですよね。だから自分で行動して、ものを作って、どんどん投げかけていかなきゃダメだと考えていて。そうした動機で生まれたのが、フォトブックとミックスCDをセットにした『Y.mag』だったり、DJ AMIGAさんと企画した両A面のカラーヴァイナル「Camelia/Can’t Tell」でした。

ーー漫画『とんかつDJアゲ太郎』の連載コラムも大変好評ですね。
先ほど言ったような活動を続けていくなかで、出会いが出会いを生んで『とんかつDJアゲ太郎』のコラムのお話をいただきました。本当に偶然のタイミングでのお話でしたね。

ーーYUMMYさんのことをDJ YUMMYとしてではなく、コラム「おしえて!ヤミー先生」のヤミー先生として先に認知している若いファンもいるでしょうね。
作者の小山先生が経験談とか思い出話をどんどん書いてほしいと言ってくださり、それもありがたくて。毎回楽しく書かせていただいてます。

ーーインタビュー取材で話す機会はあっても、技術をレクチャーしたり、解説したりする機会ってあまりないですもんね。
ちょうど妊娠中で仕事をお休みしていた時期と重なっていたこともあって、DJに関係する本をたくさん読んだりして勉強したり、偉大な諸先輩方にお話を伺ったり、今までの自分を振り返る、いいきっかけにもなりました。

ーー『とんかつDJアゲ太郎』アニメ化もされましたし、クラブカルチャーの裾野を広げる大きなニュースだったと思います。
おかげさまで読者の方にもご好評のようで、今も続けられています。魅力的なキャラクターもいっぱい出てきますし、単純に漫画として面白いと思うので、人気が出たのも頷けます。若い読者さんがダンスミュージックに興味をもってくれるきっかけになったらとても嬉しいですね。

ーー2014年末の突然の活動休止についてですが、休止には何か理由があったんでしょうか?
数年前からSNSが加速度的に普及して、個人で活動するアーティストのプロモーション方法も変わってきて、そのスピードにちょっと追いつけないなと感じることがあって。ずっとフリーで活動してきましたし、少し休みたいと考えるようになったのが一番ですね。

ーーたしかに女性がひとりで、しかもフリーでやっていくには過酷な世界だと思います。
若い頃は自分の体調管理を後回しにして現場を詰め込んじゃうんですよね。ただ、無理をして音楽を続けられなくなっては元も子もないので、長い目で見たときにどこかで一度リセットしなければと思っていました。それが私の場合は結婚のタイミングだったというわけです。

ーー出産も経験されて、ものの見え方や感じ方は変わりましたか?
クラブへ単純にお客さんとして遊びに行ったり、マイペースに曲を作ってリリースしたり、職業としてのDJから距離を置いたことで、改めてDJの魅力を再発見できた気がします。

ーーズバリそのDJの魅力とは?
音楽の良さって、その人だけがもつ経験や物差し、世界観をもって感じられることだと思うので、そういう体験を引き出すことができるのがDJの魅力の1つだと思います。時代が変わっても年齢を重ねても色あせないし、そこに本質があると信じています。

ーー10年以上も第一線を走ってきたわけですからね。先日のDJ KYOKOさんとの対談でもお話に上がってましたが、引退の時期とか考えたりするものですか?
音を出す面白さを知っているから辞められないですね(笑)。私自身から引退という言葉を出したことは今まで一度もないですし、いただいたオファーに全力で応えたいという気持ちは昔から変わらないです。

 

 

 
ーー自身の出演以外でもクラブの現場に足を運ばれているようですが、ここ数年の変化みたいなものは感じますか?

いろんな界隈が生き生きしているように感じます。今はシーンが潮目にあると感じていて、人の動きも興味深いです。

ーー潮目とはどういったものでしょう?
東京もダンスミュージックをやるための環境がようやく整ってきたように思います。いい箱がいくつもあるし、アーティスト/DJの地道なロビー活動の末に風営法の改正が実現したり、「TDME(Tokyo Dance Music Event)」のようなカンファレンスが始まったり、DJやダンスミュージックについての知識交換が営利/非営利問わず積極的に行われるようになっています。謎のベールに包まれていたDJの怪しげなイメージが薄れて、良くも悪くもありふれた肩書きになりましたよね。昔は自己紹介でDJと言ってもあまり話は広がらないことが多かったんですけど、今は「どんな曲かけるの?」、「どこで回してるの?」と聞かれるようになったんですよ。これって大きな変化ですよね。

ーー先日、ご自宅でお子さんを抱っこしながら練習されている姿をFacebookの配信で拝見しました(笑)。
ありがとうございます(笑)。子どもの存在はいつも私の感覚をニュートラルに戻してくれます。私は母が大好きでしたので、今となって生前の母に学ぶことはとても多いです。それに、自分の仕事や振る舞いをこれからずっと見せていくという責任も感じています。子育てを経て、また元の現場に戻るのはもちろん簡単なことではないとは思いますが、ゆっくりファンの方々と一緒に成長していきたいですね。

ーー最近はどの辺りのジャンルをプレイされているんでしょうか?
あまりアッパー過ぎず、ずっと親しんできたハウスやテックハウスをメインでかけられる現場にお声をかけていただくことが多いです。

ーークラベリアの「Party AWARD 2016」でも1位に輝いていた、Masters At Workの来日公演を筆頭に、昼間のパーティーやイベントも増えてきました。大型のダンスフェスティバル以外にも多様な楽しみ方を提案できるということが、先ほどのお話に出てきた「環境が整ってきた」ということかもしれませんね。
Masters At Workの来日公演は私も遊びに行かせていただきましたが、とても雰囲気のいいパーティーでした。かつてのクラバー大集結みたいな雰囲気で(笑)。私自身、そういった大人の方が集まるパーティーからお声がかかることも多いので、他にバンドの出演があれば、DJもそれに合わせて生音を多めにしてみたり、ジャンルよりも1曲ごとのストーリーや情景を気にした選曲を心がけたりしていますね。

ーーお気に入りのアーティスト、動向を気にしているアーティストはいますか?
2000年頃のプログレッシブハウスのエモーショナルなエッセンスをセットに取り入れているハウス系のアーティストが気になってます。

ーー具体的には?
プログレッシブハウスとはまた違うかもしれませんが、Keita Sanoさんのライブセットは興味深かったです。あと、Henry Saizのライブセットもスゴく良くて。やっぱりエピックな世界観のダンスミュージックが一番自分のツボにハマっているんだなと再確認しました。

ーーちょっと意外な感じがしますね。
昔から野外で踊るのが大好きなので、スケール感があるダンスミュージックという共通点があるかもしれません。昼間にオープンなスペースで開催されるパーティーはクラブとはまた違った良さがありますよね。

ーー今後の活動の展望について教えて下さい。
やはり制作には力を入れていきたいですね。100の言葉で語るより、1曲仕上げることのほうが意味がありますし、30代はたくさん曲を作ってアルバムも出したいです。あと、今までの何倍も伝える努力をしていきたいです。

■オフィシャルサイト
http://funkasia.co.jp/artist/953/