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WONDERVER

ギターロックとダンスミュージックを融合させた音楽性と、さまざまな音色を駆使したハイクオリティなライブパフォーマンスが話題を呼んでいるインディポップバンドWONDERVER。活動開始から約1年にして「SUMMER SONIC」や「BAYCAMP」、「SOUND CRUISING」、「NEW ACTION」などに立て続けに出演し、現在エレクトロシーンとロックシーンの両サイドから大きな支持を獲得している。その注目のバンドが、今年7月20日(水)にファーストアルバム『FLASH』をリリース。フロントマン相澤龍伸のルーツでもある80~90年代のポップス要素をちりばめながらも、現在へと昇華させた進化系J-POPとして注目を集めている話題作だ。その記念すべきファーストアルバムのリリースを控えるWONDERVERのメンバー3人に、アルバム制作に至った経緯や、曲作りに対する意識、またバンドの今後のビジョンなどについて聞いてみた。

Interview&Text:Yoshiki Yamazaki
Photo:Satomi Namba

 

 

  
理想の商品を作るためには今何が足りないのか、というところをから始めた。


ーー今回リリースするアルバム『FLASH』のコンセプトを教えてください。
相澤:既存の曲をリアレンジしてパッケージングするというよりは、「より広い層にアプローチしていく」ということをより明確化したものを作りたかったんです。なので、理想の商品を作るためには今何が足りないのか、というところをから始めました。


ーー逆算的な考えから作品を作り始めたのですね。
相澤:理想のもののイメージをまず最初に固め、それに足りないものを補って作っていきました。アートワークに関しても、従来の作品では村上(Key.)が書いたボタニカル柄の絵をずっと使ってたのですがそれももう変えたくて。僕たちそんな明るい人種でもないし、曲も暗いしマイナーコード多いし(笑)。どうしようかなと考えていたときに、暗闇に光が差しているようなイメージが沸いてきたんです。曲も歌詞も一貫してそのイメージをもとに作りました。2曲目の「BEAM」がリード曲なんですけど、最初はこれをアルバムタイトルにしたかったんです。でもディレクターにも、村上と藤本(Gt./Key.)にも「FLASHの方がいいんじゃないか」と言われて(笑)。どちらにしろどこか真っ暗な場所で光っているような音楽でありたいんですよね。
 

 

 

 

 

商業的に成功することは、音楽がよりよくなっているということ


ーー以前のシングル曲「PRAY」や今回のアルバムに収録されている「ALONE」など、WONDERVERの楽曲からはEDMサウンドの要素が多く見受けられます。そういった部分は意識して作曲されているのですか? 
相澤:「PRAY」に関しては意識しましたね。でもそういうところにギターとかドラム、歌をのせてどこまでバンドっぽくアレンジできるかというところを考えています。クラブサウンド、バンドサウンドどちらか一辺倒にはしたくないし、両サイドのフィールドから聴いて楽しめるものでなければダメだと思っていて。「PRAY」も音源で聴くとかなりクラブサウンドなのですが、実際ライブで生ドラムで演奏するとギターロックになるんです。例えば、DJイベントに呼ばれた際に反響があってそこで需要が高ければそっちにシフトしていくのかもしれないし、ロックシーンで需要が高ければもっとバンドサウンドの強い曲を作っていくんだと思います。そう考えると、どっちでやっていくのがベストなのか自分でもまだ分かっていないのかもしれません。


ーーオーバーグラウンドシーンで活躍していきたいという思いを強く感じますね。
相澤:そうですね。自己満足になるのが一番恥ずかしいことだと思っていて。曲を作るのが楽しいっていう感情などももちろん大切だとは思うのですが、何より多くの人に聴いてもらうことが一番重要だと思っています。「あの人は売れて変わってしまった」とかよくネガティブな意味で言うじゃないですか。でもそれは劣化とか失敗ということではなく、成功だと思っています。商業的に成功することは、音楽がより洗練されているということだと考えています。


ーー曲のストックはどのくらいあるのですか?
相澤:曲というよりは、リフとかサビなどバラバラのパーツがたくさんある状態ですね。僕自身、「こういう曲を作りたい!」って思い立った時に、まずサビから完璧に作り込んでいくんです。出来が良かったらそのまま一曲丸々作れちゃうし、良くなければ途中で飽きちゃうんです。ひとりでDAWで曲を作ってるのですが、机に座ってLogic開いて今作ってる曲のファイル聴いてよくなかったら作る気にならないんですよね。

 

 

 
ーーライブはサポートを含め5人でやっていらっしゃるとのことですが、DAWで作ったものを実際にライブで演奏するとなると音圧などの調整などが難しそうですね。

相澤:そうですね、ライブハウスによっても変わってきますし…。当日のリハーサルのみの限られた時間のなかで、PAさんと相談しながら音を作らなくてはならないので大変です。リハーサル中に僕がフロアに下りて曲のバランスを聴いたところで、曲によってその都度変わってしまうし、全部をコントロールできないので、マニュピレーターか乗り込みのPAに早く同行してもらえるようになりたいですね。


ーーライブでは全曲同期を使用しているんですか?
相澤:曲によって使っている状態ですね。リードのリフやシンセサイザーの目立つフレーズとかはなるべく人力で出したいんです。それ以外で補えないもの、例えばタンバリンの音とかパッドのシンセの音とかは同期で流しています。
藤本:他のバンドと比べると同期の音数は少ないですね。
相澤:そうだと思います。最近クラブイベントに呼ばれることも増えてきたのですが、見え方としては普遍的なポップバンドでありたいんです。お洒落な感じもいいのですが、もっと中高生などの若い層にもとっつきやすいようなわかりやすいバンドでもいたいので。同期の使用率をあげたりサポートメンバーを増やしたりすると、エレクトロニカなサウンドに偏ってしまってバンドサウンドからどんどん離れていってしまう。そうじゃなくて、もっとフィジカル性の強いバンドでありたいんです。


ーーターゲット層を中高生などの若い層に設定することに何か意図はあるのでしょうか。
相澤:中高生というのは例えで、“意識して音楽を聴いていない人”みたいなニュアンスなんです。ちゃんと自分でディグして音楽聴いてる層に向けていいものを作っても、入り口が狭いし人口も少ないのでなかなか届かないんです。言い方は悪いかも知れないんですが「音楽はなんでもいい」という層に良いと言われるものでないと僕は嫌なんですよ。わかる人だけがわかって「優れてるね」といわれたところであまり嬉しくなくて。音楽が大好きな人以外の人たちにも届かなければダメだなといつも考えています。
 

 

 

 

3人の上音をどこまで音源に近づけられるかが一番重要


ーースタジオではどのようにリハーサルを行っているのですか?
相澤:まず、「Massive」や「Sylenth」などのソフトシンセを複数組み合わせてひとつの音色を作るんです。そこで組み合わせたサビ、Aメロ、Bメロで使用する音をあらかじめMIDI音源用ソフト「MainStage」にセッティングし、スタジオで同期を流しながら出音の音量バランスを調整します。さらに、他の曲との音量バランスも調整したり、音を切り替えるタイミングを考えて、物理的に切り替えることが難しければ曲のアレンジを考え直します。なのでセッティングだけでかなりの時間がかかっちゃうんですよね。でも、3人の上音がどこまで音源に近づけられるか、というところが一番重要なのでこの作業はすごくシビアに行っています。最近でも、新曲を1曲演奏するためのセッティングだけで5時間ぐらいかかりました(笑)。5時間かけて音量を調整した後、練習に入るといった感じです。
藤本:オーソドックスな編成のバンドだと、ギターをアンプに挿してすぐ演奏開始できますが、WONDERVERだとそうはいきません(笑)。


ーー同期を使いだした当初はどのようにライブを行っていたのでしょうか。
村上:当時は同期を出すためにMacを使ってたんですよ。
相澤:ライブの時、僕が自分のセッティングが終わったらわざわざドラムのところへ行ってMacを立ち上げて同期を走らせる準備をしてたんですけど、今ではRolandの「SPD-SX」というドラムパッドに同期をアサインして、クリックもドラムのところにだけ流れるように設定するなど、かなり効率的なセッティングができるようになりました。


ーーでは同期の流し方やライブのセッティングは、今後さらに変わっていく可能性がありますね。
相澤:そうですね。使用している回線がかなり多いので、将来的に減らしていきたいと思っています。いざセッティングしてみるとライブハウスの回線が足りないこともあるので(笑)。ライン回線だけで10回線あるんですよ。加えてベースのライン回線、ドラムのマイク回線、2人分のギターアップ用のマイク回線、コーラスマイクの回線など…、一回のライブで20回線以上使うことになりますね。いつもライブやるたびにPAさんに謝ってます(笑)。
 

 

 

ーー同じシーンで活躍されているMARQUEE BEACH CLUBさんとは、お互いの曲をリミックスし合うほど親交が深いですよね。普段から仲がいいんですか?
相澤:そうですね。MARQUEE BEACH CLUBがリリースした7インチシングル「eye」には僕のリミックストラックが、僕たちのニューアルバム『FLASH』には、MARQUEE BEACH CLUBのリミックストラック「HEART」が収録されています。聴いてる音楽が大体一緒なんですよね。彼らも聴いてる音楽が全体的に暗い(笑)。メンバーみんな大好きだし波長も合うし、本当にいいバンドだと思っています。親交が深いバンドって彼らぐらいですね。もちろん他にもいいバンドはたくさんいますが、見ててもあんまり嫉妬とかはしないんです。すごいなぁって思っても、悔しいとかはなくて。でも彼らを見てると嫉妬心が生まれてくるんですよ。
藤本:確かに見てて悔しくなるようなバンドはMARQUEE BEACH CLUBぐらいですね。

■ALONE (MARQUEE BEACH CLUB Remix)

 

 

 

あまりどこかのシーンに属したくないと思っていて、良くも悪くも孤立していたいんです。


ーーエレクトロポップシーンの今後のビジョンなど、周りのバンドとディスカッションしたりする機会はありますか?
相澤:全くしません。同期とか打ち込みを使うようなバンドのシーンって、すごい閉鎖的なんですよ。自分から何かアプローチして変えていこう、っていうようなバンドは見たことがないです。そもそも群れでシーン変えようみたいな動きがあまりない。みんな外からの見え方、見せ方をすごくよく考えていると思います。それこそギターロックバンドとかは4バンドぐらい集まって楽しい企画やろうぜ! みたいなイベントをよく見ますが、こっちでは「得るものがないのであればやる意味ないでしょ?」みたいな空気を感じます。


ーー今後の展望について教えて下さい。
相澤:あまりどこかのシーンに属したくないと思っていて、良くも悪くも孤立していたいんです。「あのバンドは他のバンドと違うよね」みたいな感じでいないと、ずば抜けて飛び出すのは難しいと思うんです。どこかに属してしまったらそこから抜け出せなくなってしまうような怖さもあります。という意味でも、クラブシーンでもなく、インディバンドシーンでもないような立ち位置でいなければならないと思ってます。人気はもちろん欲しいんですけど、良くわからないものでありたいかもしれないですね。いろんなところで見かけるバンド。渋谷のclub asiaでDJと共演してると思ったら新宿Loftでギターロックバンドと共演してる、みたいな。


ーー最終的な目標は何でしょう?
相澤:幕張メッセで2デイズワンマンとかできたらいいんじゃないですかね。そのレベルに達してたら多分人生で何にも困ってないですよね。現実的に言えば…早くワンマンイベントやりたいです…(笑)。…規模の違いがすごすぎて泣きそうです(笑)。
 

 

 

 
- Release Information -
タイトル:F L A S H
アーティスト:WONDERVER
リリース:7月20日(水)
レーベル:VYBE MUSIC
価格:2,041円

[トラックリスト]
1. H E A R T
2. B E A M
3. A L O N E
4. W O N D E R
5. M E L L O W
6. G H O S T
7. B L U E
8. A L O N E(KAMEDA TAKU from OWARIKARA Remix)
9. H E A R T(MARQUEE BEACH CLUB Remix)

■リリースページ
http://www.clubberia.com/ja/music/releases/4761-F-L-A-S-H-WONDERVER/