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Fake Eyes Production

待望の初音源となるヴァイナルリリースに続き、ブルックリンの新鋭=Loveskillsの日本企画盤をリリースするなど、DJ MAARとShigeoJDの二人からなるプロデュースユニット=Fake Eyes Productionの動きがいよいよ活発になってきた。DEXPISTOLS活動休止の真相からあの大物DJとの逸話、さらには2人がハマってるという某ユニットの話まで語っていただきました。

Interview:野村アリマサ
取材協力:恵比寿SPUMO

 

 


- 苦悩とかを見ているだけに「Cover Me」を聴いたときの感動が格別だった。– ShigeoJD



- まずは今回、Loveskills『Multiplicity/Pure』がDJ MAARさんのレーベル〈ARCUS〉からリリースされた経緯をお聞かせください。

M(DJ MAAR):Shigeoくんが元々リチャード(Richard Spitzer。Loveskillsは彼のソロユニット)と友達で、日本で出せないかって相談されて。レーベルは〈ARCUS〉があるし、せっかくだから自分たちのリミックスも入れようっていうことで。

S(ShigeoJD):最初にリチャードからもらった『Multiplicity EP』のヴァイナルは日本だとおそらく自分が持っている一枚しかなくって、いろんな人に聴かせてみたんだけど、MAARが一番反応良くて。

M:最初はちょっとポップ過ぎるかなと思ったんだけど、聴けば聴くほど純粋にいいアーティストだなって。

 

 


- 音だけから判断すると、ブルックリンのシーンから出てきたのも意外な感じですよね?

S:リチャードとはここ5年くらいの付き合いなんだけど、何年か前にThe SAMOSの3rdアルバム(2012年発売の『Crystallized』)を持ってNYに遊びに行ったときに彼がかなり悩んでて。NYのシーンってやっぱり競争が凄いらしくって、シアトルに拠点を移そうとしてたんですよ。でも結局、NYで踏ん張って『Multiplicity EP』を完成させた。そうした苦悩とかを見ているだけに「Cover Me」を聴いたときの感動が格別だったというか。そこで何か力になれないかなと思ったのが、そもそもですね。ライブもギターレスだけど、ライブ感があって面白くって、これは見せ方もかなり研究したんだなと。


- PVも面白いですよね?

M:謎のレオタードのお姉ちゃんが踊る、80’s感満載のね(笑)。

 

 

 

- Fake Eyes Productionとして他のアーティストのリミックスを手がけたのは初めてですよね?

M:そうだね。原曲が良過ぎて、かなり難しかった。

S:どうやったらその良さを害さないで、自分達のテリトリーに持ってくるかっていうところがね。

M:ポップ過ぎず、地味過ぎず。3テイク作って、ミックスやマスタリングも10回以上直して、結局最初に戻ったっていう(笑)。本当に苦労したんで、いろんなジャンルの人がかけられる感じには仕上がってると思います。


- 「Cover Me」以外で気に入ってる曲はありますか?

M:俺は前半が好き。あと、The SAMOSのリミックスも。

S:自分はフェイズ(MCのPhase Future)が参加してる「Genorate」。“Wake Up”って言いながら自分が一番眠そう、みたいな(笑)。

M:曲順はリチャードの意向もあるだろうから、あえてそのままにして、一応「Cover Me」のオリジナルで始まって、「Cover Me」の自分たちのリミックスで終わる構成にしてあります。

 

 


- 楽器を通じた会話に近いのかもしれないね。それはもちろんその場にいるオーディエンスも含めての会話。- DJ MAAR



- Fake Eyes Productionとしては今回のリミックスの他にヴァイナルでリリースした『Fake Eyes EP』と、あとはライブやDJとしての活動をされてますが、ユニットの音楽性をお二人の言葉で説明するとどんな感じでしょう?

M:既成の楽曲を使うけど、DJってある意味ナマモノで、そこにShigeoくんの生楽器のナマモノを掛け合わせて、違う概念のナマモノを作る、みたいなところでオリジナリティを追求しています。毎回、ナマモノならではのサプライズやアクシデントもあるし。

S:例えるなら、一人が波を起こして、もう一人がサーフィンするみたいな関係っていうか。

M:インプロ(ヴィゼーション)とか、楽器を通じた会話に近いのかもしれないね。それはもちろんその場にいるオーディエンスも含めての会話。それと個人的には、DJだけで表現できることの限界も感じてて。相棒を変えることによって音楽家としての高みを求めたというのはDEX(PISTOLS)の活動休止にももちろん関係していますね。


- DEXPISTOLSの活動休止のお話を伺う前に、そもそもMAARさんはハウスのDJとしてキャリアをスタートされてますよね。“芝浦GOLD”のメインフロアで最年少でDJされてますし。

M:18歳のときにやらせてもらえるチャンスがあって。ただ、すぐにクローズしちゃったんで、結局メインフロアでは3回きり。当時のレジデントだった(高橋)透さんに挨拶しに行ったら「天才って言われてるらしいけど大したことないな。ガッカリだよ」って言われたのはハッキリ覚えてる(笑)。こっちはろくに試聴もできないレコードでDJしてるのに。あのときは泣きそうだったな(笑)。


- そのあと、“ageHa”のオープンのときにDJ EMMAさんと一緒にレジデントを務められると。

M:EMMAさんが立ち上げた事務所に一時期所属してたことがあって。照明係とかもやったし、曲も作ったし、ずいぶん働かされたよ(笑)。ただ、EMMAさんとの出会いは“芝浦GOLD”よりもずっと前なんですよ。同級生のM.S.K.と当時の“CAVE”(のちのMODULE。MODULEも現在は閉店)に遊びに行ったことがあって。下(の階)でサルソウルに初期のAngel Moraesを延々混ぜてかけたりしてるDJがいて、もうめちゃくちゃカッコよくて。それがEMMAさん(笑)。DEXの何でもありのスタイルの原型みたいなものはEMMAさんだったりしますね。EMMAさんは俺のことを弟だと言ってくれているみたいですけど、父親のいない俺にとっては親父みたいな存在ですね。


- そのあと、DJ EMMAさんの元を離れるわけですが。

M:当時は俺も生意気だったからね(笑)。同じ事務所だと、当然ブッキングの奪い合いにもなるし。ちょうど同じ時期にDEXをスタートさせたっていうのもあって。


- それから10年ですか。

M:よくやったよね。元々DEXのコンセプトはお互いに好きなものは全く違うけど、嫌いなものは近いっていうところからスタートしてるんだけど、10年も経つと嫌いなものも違ってきちゃってね。DEXとしてこうあるべきという姿を演じ過ぎちゃって、気付いたら自分のやりたかったものからも離れ過ぎちゃってて。人に消費されるくらいなら自分たちの手で終わらせたいな、っていう思いもあったし。それに、自分たちはヒールのつもりでいるのに、いつの間にかヒーローになっちゃってて、そこにも違和感を感じてたしね。一緒にやってきたDEXの分子というか、若い連中も巣立ってるし、そういう意味ではやりきった感もある。

 

 


- 自分たちの近いところにいる人が同じように面白がってくれてるので、そうした手応えというか、そこには希望を持ってますね。- DJ MAAR



- そういった若い人たちというか、最近のシーンについてはどう見ていますか?

M:全世界的に四つ打ち回帰になってきてるし、また面白くなってきてるとは思う。ネットレーベル系も元気いいし。TAARに教えてもらった〈TREKKIE TRAX〉とか。海外だと〈PAN〉も面白いな。


- そういえば、お二人で水カン(水曜日のカンパネラ)のライブに行かれたそうですね。

S:水カンはMAARに教えてもらったんだけど、結構ハマってますっていうか、リミックスしたい(笑)。


- コムアイちゃんはスケボーキング知らなかったらしいですね。

S:さすがにあの世代はもう知らないでしょ(笑)。でも、「ナポレオン」は久々に新鮮に聴けたな。自分も久々にまたラップしたいなと思ったくらい。

M:俺は「千利休」が好き。「新茶摘まないつまらないやつに用はない」だぜ。最高でしょ。

S:願わくば、フィーチャリングしたいです。

 

 


- それでは、水カンからのオファーを待ちつつ(笑)。今後のFake Eyes Productionのヴィジョンをお聞かせください。

S:まずは年間3枚を目処にヴァイナルを切る予定で、アルバムも制作中です。海外への展開も視野に入れてやりたい。

M:DEXを始めたときもそうだったんだけど、今回のFake Eyes Productionも自分たちの近いところにいる人が同じように面白がってくれてるので、そうした手応えというか、そこには希望を持ってますね。


- 個人的には若いバンドのプロデュースとかしてほしいです。

S:もちろんご縁があれば。

M:あと、3年後くらいにはクラブをプロデュースしたい!


- それ、EMMAさんも全く同じこと言ってましたよ(一同笑)。




- Release Information -

アーティスト:Loveskills
タイトル:Multiplicity/Pure
レーベル:ARCUS
価格:¥2,160(税込)

[トラックリスト]
01. Cover Me
02. Flash In The Dark
03. Ex-Files
04. Genorate feat. Phaze Future
05. We Say Love
06. Turbulence
07. Luna
08. White Diamonds
09. Pure Crystal
10. Chanel
11. Fine Lines
12. Point Of View
13. White Diamonds (The Samos Remix) - bonus track
14. Cover me (Fake Eyes Production Remix) - bonus track

■クラベリア内リリースページ
http://www.clubberia.com/ja/music/releases/4623