INTERVIEWS
>

TOMO HIRATA

 
-僕はEDMって簡単に言うとスタジアムダンスミュージックだと思っているんですよ。だからアメリカみたいに大きな会場で大きなフェスティバルをやるような国ではシーンが盛り上がるんだと思います。 -

 
- まず、EDMに関して伺う前にHIRATAさんの音楽遍歴を教えて頂けますか。

もともと僕は、Satoshi Tomiieさんに憧れて80年代後半からハウスを作っていて、90年代にUKのレーベルから12インチをリリースしました。その時、日本人でハウスを作っていた人って、Satoshi Tomiieさん、福富 幸宏さん、大阪の天宮志龍さんぐらいしかいなかったと思います。
 
- Tomiieさんに憧れてということは、当時の彼のようなトラックを作られてたんですか?

僕は、Satoshi Tomiieさんが国際的にブレイクしたことに衝撃を受けて音楽を作り始めたという感じなので、ソウルフルなことをやっていた人が好きだったというわけではなくて、もともとはニューウェーブ系が好きだったので、少しテクノっぽい音楽を作っていました。

  - 現在EDMをやられていますが、その前はどんなジャンルをやられていたのですか?

エレクトロですね。大沢伸一さんとやっていました。大沢さんとって言うとおこがましいですけど、大沢さんのお手伝いをしていました。1曲コラボもしています。その前は、サイケデリックトランスをやっていました。Raja Ramのレーベルから1曲出してます。ただ、サイケデリックトランスからエレクトロの間に2、3年休んでいるので、僕がエレクトロをやっていた時期からしか知らない人もいますね。流れを説明するとハウスから入って、90年代前半はハウス、プログレッシブハウスです。そしてUKハウスみたいなものが好きになって、90年代後半はUKハードハウスが日本で流行っていたのでそこにいって。速いBPMの流れでトランス、サイケデリックトランスにいったら終着点に着いてしまった感じがあったのでそこで2、3年休んだんです。その休んでいる時期に大沢さんに声をかけていただいて、何か一緒にやりましょうと言われたのでエレクトロを始めた、という感じです。
 
- では、HIRATAさんがEDMに傾倒するきっかけはなんだったのでしょうか?

昔トランスをやっていたのでシンセの音だったり派手なものが好きだったんですよ。TIESTOがDiploと一緒にやっていたりして、そこで今のEDMとの接点はできていたんです。でも音楽シーンとして1番大きなきっかけと言うのは、2009年にDavid Guetta(写真右)がアメリカで大ブレイクしたことでエレクトロハウスがアメリカのビルボードのトップ10に入る状況ができて、そこからエレクトロハウスがメジャーになったという現象が非常に面白いと思って。ヨーロッパでは、80年代後半からダンスミュージックは隆盛を極めていて、00年代になって逆にバブルが弾けたと言われているのに、今までそこに関心を示さなかったアメリカでは、2009年になって突然ビルボードにエレクトロハウスが入る状況が生まれた。そこから関心を持ち始めて、アメリカで開催されているダンスミュージックフェスティバルに何十万人という人が集まっているという記事を発見したんです。アメリカはすごいことになっているんだと思ったのがEDMに入るきっかけだったかもしれないですね。
- 曲というよりはシーンの盛り上がり方がきっかけという感じでしょうか?

そうですね。アメリカ人は、今頃気がついたんだっていう衝撃(笑)。

  - 今年のグラミー賞では、ダンスミュージック系の部門をEDMが制覇してましたしね。ちなみに、グラミー賞のサイトにアップされている記事でiLOUDの編集長である谷上さんの記事を読んだ時にEDMを「ダンスミュージックが不毛の地アメリカで起こっているムーブメント」と表現していたのが印象的でした。デトロイトやシカゴがあってむしろダンスミュージック発祥の地とも思えるのですが、HIRATAさん的に、それはなぜだと思いますか?

アメリカはダンスミュージック発祥の地なんですけど発展させたのはヨーロッパです。アメリカではずっとアンダーグラウンドで日陰な存在でした。アメリカのメジャーなラジオで、シカゴハウスがかかるのはあり得ないくらい、ヨーロッパとの温度差は大きかったと思います。基本的にはアメリカにメジャーなダンスミュージックシーンはなくて、マイノリティな存在だったと思います。メジャーなダンスミュージックというと、ヒップホップになってしまうんですけど、クラブミュージックとは少し違う線だったと思うので。そこで突然4つ打ちのハウスみたいなものが、メジャーシーンで流行りだした現象がすごく面白かった。クリエイターという立場から音楽的に分析するんですけど、アメリカで流行っているEDMって縦ノリなんですよ。ヨーロッパで今まで流行ってきた音楽って基本的には横ノリなんですね。EDMになって登場人物も今までのハウス、テクノとはガラッと変わったというところも興味を持ちましたね。

  - 確かに。イメージ的にはロック色が強いかと。

そうなんです、僕はEDMって簡単に言うとスタジアムダンスミュージックだと思っているんですよ。だからアメリカみたいに大きな会場で大きなフェスティバルをやるような国ではシーンが盛り上がるんだと思います。

  - 今年、Ultra Music Festivalのプレパーティーが日本で開催されますが、本国のUMFに行かれたことはありますか?

ないです。「Tomorrowland」だけです。
 
- 「Tomorrowland」はどうでしたか?

語弊を恐れずに言うとEDMってもともとは白人音楽なんです。実際に行くとわかるんですけど。
 
 
- Swedish House Mafia以降は、トランス、エレクトロハウスの影響が強くて、ヒップホップからの影響はほとんど無いと言ってもいいと思います。-

 
- 僕は、2012年ごろからEDMを意識しだしたんですが、アーティストでいうとRihannaやPitbull、LMFAOみたいな黒人音楽とダンスミュージックが合わさったものをたくさん聞いたイメージだったんですが。

David Guettaがやったことがそれだったんですよ。彼がやったのは、白人音楽であるヨーロッパのエレクトロハウスとアメリカのR&Bやソウル系の黒人ボーカリストを混ぜることだったんです。そこからアメリカでブレイクしたのは事実なので、EDMがブレイクしたきっかけに黒人音楽が絡んでいるのも事実なんですが、ベースとなっているのはエレクトロハウスなんです。日本では大きく誤解されているところなんですけど、UMFやTomorrowlandの客席に黒人はほとんどいないです。UMFやTomorrowlandはYOUTUBEの中継もあるので見てもらえれば分かると思います。これが、EDMは白人音楽であるということを証明していると思うんです。どちらかと言うとアメリカでは今までエモを聞いていたような人たちにうけています。日本ではDavid Guettaのイメージが強いので、彼が起用したNE-YOなどから、EDMイコールNE-YO、RIHANNAみたいな誤解が生まれています。ビルボードであったり、メジャー系の音楽雑誌が考えるEDMはそれです。でもそれは、エレクトロニックダンスポップだと思うんです。

※写真は、12/20にageHaで行われるUltra Music Festivalのプレパーティー「Road To Ultra Japan」 - EDMの中でも細分化されているということでしょうか?

考え方としてです。BLACK EYED PEAS、RIHANNA、Pitbullなんかは、エレクトロニックダンスポップだと思うんです。だからDJがダンスフェスティバルで彼らの曲をプレイすることはないですよね?例えばUMFやEDCやTomorrowlandの会場でメインステージのDJが何をかけているのかを見てもらえればわかると思うんですけど、そこにブラックミュージックの要素はほとんどありません。やっぱり基本がエレクトロハウスなんですよ。Swedish House Mafia以降は、トランス、エレクトロハウスの影響が強くて、ヒップホップからの影響はほとんど無いと言ってもいいと思います。

  - HIRATAさんが仰られたエレクトロニックダンスポップではない方のEDMは、アメリカでまだ変わらず人気があるのでしょうか。

どこを見るかによると思います。例えばEDMをラジオプレイ中心の音楽と見る人は、BLACK EYED PEASのようなビルボード系を見ていけばいいと思います。ただ、国際的にEDMといった場合にみんなが思い浮かべるのは、多分Hardwell(写真右)やAviciiだと思うんですけど、彼らはエレクトロニックダンスポップとは関係ないです。David Guettaは関係ありますけど、彼も自分のDJセットでは、基本的に自分の曲以外にポップな曲をかけるということは無いです。日本だとディスコ箱のDJとかはポップなものばかりかけるじゃないですか、求められてる部分も大きいと思いますが。でも、それイコールEDMみたいになっているんですけど、それは誤解だと思います。海外のビッグダンスフェスティバルのメインステージでDJがかけている音楽が、今国際的にはEDMと見なされている音楽です。日本ではトップ40に近い、ビルボードっぽい音楽に見られているので僕としては歯がゆいところですね。

  - すごく納得しました。EDMに関してはメディア側も様子を見ている感じがします。最初、「EDMってジャンルが人気らしいよ、でも本当にブームと呼べるものなの?」と私達も実際に思っていましたし。

レコード会社さんとかは、そんなに売れないので軽く引き気味ですよね。ディスコ箱系も一段落の兆しがあります。それがなぜかというと、僕に言わせれば当たり前で、もともとがブラックミュージックでないものをブラックミュージックの客層に向けて売ろうとしても、それは売れないと思います。今までBPM100くらいのヒップホップを聞いてきたような人たちに、いきなりBPM128のエレクトロニックなハウスを聞かせてもピンと来ないに決まっているわけで、根本的にマーケティングが間違っているんです。だからディスコ箱系のDJの人たちも、黒いR&Bが好きっていう女の子にBLACK EYED PEASが1番黒いところなんですよっていうDJプレイをしちゃったら、お客さん減りますよ。そこが根本的に間違ってる。
 
 
- オリジナルを作ってそれを世に出していけるっていう環境が無いとEDMのDJの基礎ができないのでレーベルは絶対にやらないといけないんです。若い子に曲を作る動機をつけないといけないというところからレーベルは始めました。  -
 
- 今レギュラーイベントは何本くらいお持ちですか?

今メインでやっているのは”ageHa”と”AIR”と”double tokyo”なんですけど、来年から”module”で平日のイベントを始めます。なので計4本ですね。月曜日は、やはり感度の高い美容師さんたちもいるのでEDM系に行きたいんですけど、月曜日にそういったパーティーが無かったので。世界的に流行っているエレクトロハウス系のEDMっていうのは日本では普及していないっていうのが現状だと思います。なのでこれからまだまだくると思います。ただ、エレクトロニックダンスポップの方は一段落した感はありますね。

  - ハコによってコンセプトを変えたりされますか?

変えますね。”ageHa”は基本的に”ageHa”さん主導でやってるんですけど、会場が大きいのでよりリアルなスタジアムダンスミュージックとしてのEDMを伝えられるというところで、海外のできるだけビッグネームなDJを呼んで開催をするっていうスタンスです。”AIR”ではデイタイムなので未成年を中心にやっています。EDMのファンって30歳越えた人はほとんどいなくて10代の子が非常に多いので彼らの受け皿を作りたいというコンセプトです。”doubletokyo”は、オープン当初からEDMのハコとしてやっていきたい、国際標準のEDMを日本にも伝えたいというコンセプトだったのでそれでご協力できるところがあればというところで一緒にやっていて、これも国際標準のEDMに近づけたいので海外のEDM DJのプレイをみんなに聞いてもらおうというコンセプトですね。

  - 若年層がクラブから減ったという声を多く聞きますが、AIRのパーティーの場合、10代でも入れますが、集客面で実際のところいかがでしょうか?

10代の子も来ますよ。僕が若くないので(笑)、20歳のオーガナイザーと一緒にやっていて、DJも僕以外は20代前半の人が多いです。彼らの友達周りから浸透させて、EDMが好きな若い子たちを集めていくという狙いでやっています。

  - レーベルも運営されていますよね?

若い子たちの間では、僕たちの年代の人が考えるよりEDMの人気が高いんです。若いDJはみんなEDMをやりたがるんです。こういう状況下で海外のEDM DJを聴いてもらえれば一発でわかるんですけど、EDMのDJってオリジナルがないとだめなんですよ。極端なことを言うと自分のオリジナルでセット半分組めるくらいじゃないとダメなんです。なのでオリジナルを作ってそれを世に出していけるっていう環境が無いとEDMのDJの基礎ができないのでレーベルは絶対にやらないといけないんです。若い子に曲を作る動機をつけないといけないというところからレーベルは始めました。

  - そのシーンは、エレクトロのシーンに少し似ているなという印象を受けました。エレクトロのシーンがよかったのは、オリジナルを出そうとして若い子が頑張って曲を作っていたとことだと思うんです。ハウス、テクノのDJの人って曲を作っている人が少ない印象があります。

人の曲繋いで味を出しますっていうのが基本ですよね。たぶんハウス、テクノとエレクトロの間には大きな断絶があって、そのキーパーソンは2ManyDJsだと思うんですよ。彼らが名前でも現しているとおり、今までのDJがつまらないと思ってあれを始めたわけですよね。つまらないと思った理由っていうのは、「なに人の曲つないでんだよお前ら、俺なんかこんな大技できるんだぜっ」てことだと思うんです。彼らはSoulwaxというバンドもやっているわけで、ミュージシャンシップもあるわけですよね。そこには、大きな断絶があって、彼ら以降のエレクトロ、EDMの人たちっていうのは基本的には、曲も作るし人の曲をつなぐだけでは満足しない人たち。従来のテクノ、ハウスの人には、人の曲をつなぐことや、6時間セットできるんだぜみたいなところを売りにしている人もいますが、それはターンテーブルでつなぎが難しかった時代の話だと思うんですよね。今はラップトップでDJを始めたら、3日もあれば64小節のロングミックスとか楽勝でできちゃうわけですよね。こんな時代において、人の曲をつなぐだけのことにどれだけの意味があるのかっていうのは考えなければいけないと思います。エレクトロは、EDMのきっかけにはなっていると思いますよ。だからEDMのDJはマッシュアップをたくさんかけますよね。あれはやっぱり2ManyDJs以降のものだと思います。

  - それを経て今後はどうなっていくと思いますか?

日本ではEDMシーンが落ち着いてしまった感があるんですけど、海外はまだまだ伸びています。どこで伸びているかっていうとエレクトロハウス系の音楽として伸びているわけです。なので本流のEDMがこれから日本でも流行っていくと思います。従来のテクノ、ハウスとは一線を画したところで流行ると思います。
 
 
- 流行っているからEDMとかじゃなくて、ちゃんとJay Zくらい突っ張ってほしい。俺はやんねえぞみたいな。 -
 
- HIRATAさんは何年前からEDMに注目されているんですか?

現象として強力だなと気がついたのは、David Guettaが当たった時にもちょっとは感じてましたけど大変なことになっているなと思ったのは2011年ですね。

  - 日本の現場でDJされていて、日本でもムーブメントが来ているなと実感しますか?

現場レベルでは、パーティーの数が増えているなっていうのは感じます。あとは若いDJでEDMをやっている子が非常に多いですね。昔だったら最初にテクノやハウスのDJを始めるところをEDMから入ってくるっていう人が非常に増えていると感じます。ただそういった状況がEDMの大ブームにつながっているかっていうとまだ起きてないなって感じますね。
- ちなみに若い子の中で人気のアーティストっていますか?

通だとHardwellとかで入り口の人だとAvicii(写真右)ですね。
- 人を引き込む魅力って何なのでしょうか

基本的には、スタジアムダンスミュージックなので客席とのコールアンドレスポンス的なものがあるわけですよ。ヒップホップとはニュアンスが違ってどちらかというとロックコンサートに近いかな。一緒に歌ったり手拍子したり手を挙げたりすることで一体感が生まれるんです。それは内面を追求するテクノとは対極で。なのでよりマスメディアに広がっていくきっかけさえできればあっという間に大きくなると思います。大きい会場だとよりパワーが強いので。

  - このムーブメントが、昔のサイバートランスが流行った時と似ているという声も聞くんですが、それはどどう思われますか?

トランスの客層の方が国際的なEDMの客層に近いです。そういう意味ではサイバートランスのブームに近いという考え方は間違ってはいないと思います。本来はEDMを日本に上陸させた段階でレコード会社さんがターゲットにすべきところは、ポストヒップホップではなく、昔トランスを聴いていたようなお客さんだったと思います。あと日本だけの特殊な現象で、ヒップホップのDJがコアなEDMをかけるんですよ。世界中どこでもこんなことは起きていないです。アメリカで若干あるかもしれないですけど大きなダンスフェスティバルのメインステージにヒップホップ上がりのEDM DJが上がるということはないです。僕は1人も知らないです。これは単にトップ40の影響だと思います。みんなもとはトランス、エレクトロ、エレクトロハウスです。STEVE AOKIとかはエレクトロだし、Tiesto(写真左)はトランスだしAviciiはハウス、エレクトロハウスだし、David Guettaもエレクトロハウスだし。Hardwellはトランスですよね。

  - Skrillexはどうなんでしょうか。

Skrillex(写真右)は少し系統が違っていて、彼らがやっているのはブローステップっていうダブステップの中でもちょっとロッキンな方向の音楽です。彼はもともとはエモロックバンドやっていたんですよ。そういうエモの影響が強いと思います。なのでKORNとかと一緒にやったりするんですよね。たぶんヒップホップと関わりがあるとすればアメリカのPretty Lightsっていうユニットが唯一そういうことをやっているように見えますけどメインストリームの動きではないですよね。そこも日本でEDMが流行らない理由の1つで、本来はエレクトロハウスやトランスをまわしていたような人が開拓しなければならないところをなぜかヒップホップの人が手がけているので客層とずれてしまっていると思います。従来のヒップホップの客層にすると、いきなりEDMをかけられてもこんなんじゃなくて普通にNE-YOかけてよってなりますよね。たまにEDMについての取材があるんですが、いつも最初にお話しするのがYOUTUBEにUMFやTommorowlandなどの動画が上がってますから、まずどんなお客さんか見てくださいと。そうすると今の日本の状況が世界とはずれているのがわかりますから。あとそういったフェスティバルで回しているDJがもともとどういう系統のDJか確認してみると、100%エレクトロかエレクトロハウスかトランスです。ヒップホップはいないんですよね。そうすると源流がどこなのかわかりますよね。

  - では日本では誤解されて広まっているということなんですね

僕は思惑だったんだと思っています。レコード会社やCDショップからすると日本のクラブミュージックっていうのはヒップホップ、ブラックミュージック系の方が安心して売れるんですよ。今までの実績があるので。なのでそっち側に持っていこうとしたんだと思います。アメリカで今EDMがブームになっているきっかけっていうのは、ヒップホップの売り上げが落ちてきたからなんです。ヒップホップの売り上げがマイナス何パーセントになっていて、EDMは+30パーセント強なんですよ。なぜそんな状況になったのかというと、ブラックミュージックのヒップホップが落ちてきたんだったらホワイトミュージックで売り上げを確保すればいいじゃないかという発想があるからなんです。アメリカ人はその辺はドライなので、今までJay Zを聞いていた子たちにDavid Guetta聞かせようとは思わないんですよ。これで新しくマーケット開拓できるならこれでいいじゃんというところだと思うんです。なのでEDMを黒いと解釈すると間違った方向にいってしまうんです。音を聴いても黒くないじゃないですか、全然トランスのほうに近いと思います。

  - フィーチャリングのボーカルを見てしまうと、そういう誤解が生まれてしまいますね。

そうそう、フィーチャリングNE-YOとかになるとみんなブラックミュージックだと思ってしまいがちなんですけど、それはそういう色を付けているだけで母体はエレクトロハウス、エレクトロ、トランスです。日本で一段落したと言われるのは、ブラックミュージック系の曲が減っているからですよ。昔に比べるとフィーチャリングNE-YOとかが減ってきているんですよ。それはなぜかというと、よりエレクトロハウスっぽい方向に流行が動いているから。今年はDimitri Vegas, Like MikeとHardwellがすごい人気でしたけど彼らはどちらかというとトランスとかエレクトロハウス。Dimitri Vegasなんかはちょっとトライバルが入っていたりしますけど。そういう方向も流行でボーカルものっていうよりはトラックものが流行っていたんですね。だからトップ40系の人はかける曲が少なくなってきていると思います。

  - ヴァイナルに限っての話になってしまいますが、ヒップホップの人から新譜でいいのは減ってきているという話も聞きます。

たぶん、それもEDMをかけるようになった1つの理由かもしれません。アメリカでメジャーなヒップホップが元気が無いのも原因ですよね。アメリカのヒップホップシーンが落ちていてEDMが伸びているので、リリースされるものもEDMが多くなるわけです。ひょっとするとみなさんしょうがなくEDMをかけ始めたのかもしれない。僕からするとヒップホップのDJが、Aviciiなどをかけているのは違うと思ってしまいます。ヒップホップが好きなんだったら魂を売るようなことはやめようよって思います。ヒップホップが好きならヒップホップをもっと大事にしてほしい。流行っているからEDMとかじゃなくてちゃんと、Jay Zくらい突っ張ってほしい。俺はやんねえぞみたいな。
 
 
■clubberia features
EDMというムーブメントの実態