2013-06-17 UP

DJ Nori

DJというものを見つめ直した時、DJ Noriにたどり着く。何千、何万というレコードの中からその夜のために数百枚を選び、さらにその中から現場では最善の曲を選んでかける姿は職人そのものだ。キャリア30年を超えても、シーンの前線で活躍するDJ Noriが1974年に設立されたニューヨーク・ディスコ・サウンドのトップ・レーベル〈Salsoul〉の楽曲のみのミックスCD『BACK TO MY ROOTS』をリリースする。Loleatta Hollowayから始まりLoleatta Hollowayで幕を閉じるこの約80分にも及ぴ、さまざまな感情を喚起させるミックスについて話を聞いた。

Text & Interview : yanma (clubberia)

- Loleatta Hollowayから始まりLoleatta Hollowayで終わるこのミックスは、ディスコミュージックの持つ暖かさや愛情、寄り添ってくれる音楽性といった、ディスコミュージックの魅力を再認識させてくれるものでした。今作を作るにあたっての、ご自身の中でイメージや引き出したかったものなどはありましたか?

1番気を使ったのは、音の流れですね。音の流や、曲を殺さないようにするというのが前提で。入れたい曲はたくさんあったんですけど、いろいろやりながらこの結果になりました。すごいスムーズな音の流れかなって思いますよ。
 

ミックスの最後に収録されたLoleatta Holloway / We're Getting Strongerは、未だに高い人気を誇る

- 曲を殺さないっていうのは、具体的にいうと。

グルーヴ感を壊さないことかな。やっぱりピッチの問題だったり、かけている曲の音色と次の音色の相性だったりという部分に気を使いながら。無理なミックスをするなら曲が両方とも死んでしまうから。それだったらミックスしない方が、そのまま空気を持続できるので。
 

- 曲の流れに関して、すごい好きな部分がありました。それは、「Thousand Finger Man」から「212 North 12th」へのミックス部分です。聞く側の感情と同期するとでも言うのでしょうか。

ミックスっていうのは、いろんな意味での重要性があると思います。逆に意味が無かったりする部分もあったりはするんですけど、このミックスCDに関しては、曲のポイントを生かすことを大切にしながら作ってましたから。
 

-今回は、Salsoulの作品のみを使用してのミックスでしたが、縛りありの制作はどうですか?

縛りがある中でもSalsoulなんかは、無限に曲数がありますよね。その中から選ぶ大変さはありますけど、 ある意味、一色に集中できるからやりやすい部分もありますよ。いろんな色があるんじゃなくて、Salsoul 一色で作れるっていうのは、楽しい作業でした。
 

- 今回は、全てご自身の所有されるSalsoulのレコードからセレクトされたそうですが、ご自身にとってSalsoulというレーベルは、どういったレーベルですか?

僕にとっては、基盤的なレーベルですね。DJを始めたころからあるレーベルです。同じSalsoul でも70年代のSalsoulと80年代のSalsoulでは音も違うんですよ。79年からDJを始めたので、70年代ってオンタイムではないんですけどね。その当時もSalsoulのレコードは買っていたけど、バックカタログの中から聞いてみると、時代時代のコンセプトだったりが発見できてすごいレーベルだなと再認識しました。
 

- 収録曲で何か特別に思い入れがある曲はありますか?

全部思い入れのある曲なんですけど強いて言えば、未発表だったLarry Levanがリミックスした「Bunny Sigler / By The Way You Dance」ですね。Larryと一緒にツアーをやっていた時に教えてもらった曲なので、そういった意味で思い入れがありますね。

 

- 曲を音質の良さを理由にプロモ盤を使用している曲が多く見受けられたんですが、普通、商品になったものの方が音質は良かったりするものではないのですか?

そうですね。でも片面に3曲とか4曲とか入っていたりすると、あんまり音が良くないし。45回転の片面1曲でプレスされていたりするほうが音がいいですよね。あと音圧の高さだったり。だから商品/プロモということよりも規格の中での良い悪いがあるんです。

 

- 制作した場所や機材は?

制作した場所は、レーベルのUltra-Vybeのスタジオでやりました。機材は、自分の私物をスタジオに持ち込んで作りました。ターンテーブル2台とUreiのミキサー、シンプルにそれだけです。コンピューター処理は、マスタリングをやってもらった時だけですね。

 

- 何テイクくらい録られたんですか?

4、5テイクくらいですね。全部流れが違うんですよ。収録している曲も、曲順も全部違うんです。全部を聞いた時、今回リリースすることになったミックスが1番しっくりきたんですよ。

 

- 未発表になったミックスも、ファンにはたまらないと思います。

いや、でもこれがベストなんで(笑)。
 

- では、次に音楽遍歴に関して伺わせてください。音楽に興味を持ち始めたのは、いつですか?そのきっかけや、当時聞いていた音楽などを教えてください。

音楽自体は子供のころから好きでしたよ。中学のころから、みんな楽器をやり始めたんですよね。フォークが全盛期っていうのもあったし。でも、僕は野球が好きだったんで野球ばっかりやっていて。だから音楽をやる側ではなく聞く側でしたね。高校に入っても野球は続けていたんで。練習が休みの日とかに(友達の家に)遊びに行くと、家が壊れるんじゃないかってくらいのボリュームでレッド・ツエッペリンを聞いていたりね(笑)。当時はロックが好きでしたね、自分でも買っていたし。
 

- では、DJをするきっかけは?

ディスコに行き始めたんですよ。高校時代からディスコに行っている友人がいて、その彼からいろんなことを学びましたね。フリークアウトっていうソウルバーがあって、そこに通い始めるとDJブースにあるレコードを自分で選んでかけてた。お客さんがいない時間からやらしてもらって、ピッチ・コントローラーもついていないようなターンテーブルで、ミキサーもチャンネルの切り替えが付いているだけのやつだったんですけど。でも、まだDJになろうなんて思ってもなかったんですよ。当時、昼間の仕事もしてたし。

ただ、その後に仕事を退職して、六本木のディスコに行ったり東京に遊びに行ったんです。それで、札幌に帰ったら、ちょうど洋服屋がオープンしたんですよ。ビレッジバンガードってジャズクラブの名前まんまなんですけど。オープニングに遊びにいったんですけど、もともとDJバーだったお店をなので、DJブースもあればレコードもあったんです。でも誰もDJがいなくて、そこのオーナーがDJやってみる?って言ってくれて、次の日からそこのDJをやってました。

 

- 営業中ずっと1人で?

そうですね。あと、トークもやる時代だったので。曲を紹介する程度で、あんまりしゃべってはないんですけどね。そこでしばらくやっていたら、ディスコDJの人とかも来るようになって、札幌でも有名なディスコの人に「お前、本気でDJやる気あるのか?」って言われて、「ありますよ!」って言ったら、「じゃあオーディション受けに来い」って言われて。当時はオーディションだったんで、札幌も東京も。
 

- オーディションって何をするんですか?

営業中にDJミックスを1時間プレイするんです。あとトーク。そのオーディションには通りましたよ。そこから見習い期間が半年くらいあって。お金をもらってDJをやり始めたのは、前の洋服屋からだったんですけど、自分流でやっていた素人だったんで。いろんなことを教わりながらDJをやったのは、この札幌のディスコが最初ですね。
 

- それから、東京へ?

そうですね、六本木でDJをやりたいなっていうのがあって。オーディションを紹介してもらって受けたら受かったんです。

- 話を戻して、そこからニューヨークへ渡られますよね。そのきっかけや理由は?

東京に来た時、沖縄にも半年くらい行ってたんですよ。それでアメリカを近くに感じてた部分と、六本木でやってても現実問題厳しかった部分もあったんで、1度北海道に帰ってお金をためて、まずは旅行でアメリカに行きましたね。

 

- 実際にアメリカに行ってみていかがでした?

自分が若かったっていうのもあるし、レコードとか自分が求めてるものがありましたね。そのころは、まだ円が安くて1ドル=300円前後だったかな。あまり物が買えなかったんですけど、おもちゃ箱みたいな街でした。街を歩いてても楽しいし、ホットドッグも美味いし。
 

- 誰かつてがあったんですか?

あったんですけど、1人で行動してましたよ。

- リアルタイムで体験された当時のパラダイスガレージはどうでしたか?

当時の文化の頂点じゃないですかね。そういう時代だったし。新しい音楽を初めて聞ける場所だったし、それをみんながすごい大切にしていた。教会的な場所だったのかな。ガレージに行けばエネルギーをもらえて、また1週間がんばれる。本当に特別な場所でしたね。ガレージがクローズしてから、ニューヨークにもいろんなクラブがあっていったんですけど、ガレージに匹敵する場所はなかったですね。

- Larry Levanは、何がすごかったのでしょうか?

ん~、人間性じゃないですか。物知りですし、センスというか感覚というか、そこは確実に長けてましたね。いろんなことができるから天才ではあると思うけど。ユーモアのセンスもあるし、いろんな部分でいろんな側面を持っている人だったから。音に関してもすごい詳しくて。そうじゃないとあの音響をコントロールできないから。

 

- 音の部分をもう少し詳しく教えてください。ガレージは、独特な鳴りだったんですか?

半端じゃない、口では言えないよ!ほんとに!数から音の繊細さから。音で人を殺せるんじゃないかっくらいの音もでるし、反対にすごく優しい音も出る。その人のコントロール次第で変わる音響なんですよ。その人がどれだけ分かっているか、コントロールできるかで、みんなが楽しくなるか辛くなるかが分かれるわけだから。本当に口では言えないよ。今、あれの音を再現した場所があれば、これがガレージの音だよ、空気だよって伝えてあげたいなって思いますけど。 
 

- でも僕は、それに近い僕なりの体験をしたことがあるんですよ。elevenで行われていたNORIさんのMusic Manに遊びに行った時、ものすごく感動しました。フロアに入るなり、すごく柔らかい音が鳴っていて、まず音いいっていうだけでこれだけ気持ちいいのだと思いました。そのパーティー自体も僕の思うクラブ感がそこにはあって。音に没頭し、いい曲がかかるとみんなが笑顔になる。目が合っただけで「今日やばいね~」って言い合って、お酒を飲ましてくれて。いいパーティーって人に優しくなれるんだなと思いました。オープン・マインドになるってこういうことかって思いました。

音ってやっぱりそういう要素あると思うし、アナログの良さってそこだったりすると思うしね。そういうのいいですよね。ガレージも毎週毎週最高だったかっていうとそうじゃないんだよね。そこが難しいとこなんだろうね。同じ環境でもLarryの調子だったり、お客さんとの相性だったり、いつも完璧ということではなかったよ。それは人と人とがやっているからこその面白味だと思うかな。 
 

- 今度、"LOOP"でやっていた「SMOKER」が"O -ZERO-"で「Tree」として復活しますが、どういったパーティーにされたいですか?

「SMOKER」は、割と古いことに拘ってやってたから「Tree」では新しいことをやりたいなと思ってます。名前もいろいろ考えて、みんなが集まる木「Music Tree」になればって気持ちを込めて「Tree」って付けたんですよ。環境も違うし音も違うし、だから楽しみですね。
 

- ノリさんの琴線に触れる音楽というのは、どういったものでしょうか?

なんだろう、難しいな。やっぱりグルーヴかな、ジャンル関係なく。

 

- グルーヴってニュアンス的な要素が強いと思うんですよ。楽曲を作っている人であれば、理論的に分かるかもしれないですが、普通のリスナーにとってグルーヴってなんとなく分かるけど、いったいコイツはなんなんだって部分があると思うんですよ。NORIさん的解釈でグルーヴを説明するとしたらどうなりますか?

NORI:全ての音色が揃ってないと、全てがかっこよくないと、生まれないもの。そういう音だと人にどんどん入っていくもの。全ての曲にグルーヴは無いわけではないけど、そこにアイデアがあると、どんどん惹かれてその曲を好きになる。僕も曲は作ってないからリスナーの1人ではあるんですよ。だからお客さんと立場的には一緒なんですよね。いいなと思ったものを伝えるのがDJなんで。

日高:相性でしょうかね。ドラムとベースとギターの。何十年やっているバンドだっていい時もあれば悪い時もある。その全てがかみ合った時に生まれるものがグルーヴだったりするんですかね。
※本ミックスCDには日高氏のライナーノーツが付属されている。

NORI:ドラムが強すぎても優しすぎてもダメだし、 みんながうまく重なった時にグルーヴが生まれてくるから。それを聞いている人たちがいいねって評価するわけだし。その中から自分は曲を選んでいるわけだし。

日高:DJはレコードでプレイしているからライブ演奏ではないですよね。ディスコの時代、70年代もそうだけど、スタジオで作りこむっていう作業、その美学がある。それをガレージだったり、公共の場でどう鳴らすか。そこで完璧に鳴っていたらOKっていうね。

NORI:そうだね。ガレージはある意味、実験室みたいな所でもあったね。新しい音楽を発信している。

日高:ガレージで流行り始めて、それがラジオで流れて。それでコマーシャルになって世界ヒットするわけだから。

NORI:その曲を、1番最初に聞けるわけだから、まさにパラダイスっていうか。そんな場所があればいいんですけどね。
 

- 例えば、当時のパラダイス・ガレージの雰囲気を日本に作るとしたら可能だと思いますか?

NORI:可能じゃない?あとは、みんなの意識じゃない?

日高:儲かるかどうか(笑)

NORI:それはそうだけど。でも、世界にここしかないみたいな場所が近くにほしいじゃないですか。

日高:1人のDJが毎週末ずっとやるって場所ってないですしね。

NORI:Larryって毎週金土ずっと1人でやってたんだよ。たまにゲストは入るけど、それを10年も。後期は、Victor RosadoとかDavid De Pinoをサポートに入れていたかな。

 

- すごいですね。。。

日高:経営者が1人のDJを信じる力、このクラブをどこまでのものにするのか?いろんな課題はあるんじゃないですかね。
 

- では、最後にファンの方へメッセージをお願いします。

NORI: 一生懸命に作ったミックスCDなので、聴いてみて下さい。

 

- Release Information -

タイトル:BACK TO MY ROOTS -DJ Nori's Salsoul Mix-
アーティスト:DJ NORI
フォーマット:ミックスCD
価格:¥2,500
発売日:6月19日

●トラックリスト
1. The Salsoul Orchestra Featuring Loleatta Holloway / Seconds (Shep Pettibone 12" Special Club Version)
2. The Strangers / Step Out Of My Dream (Shep Pettibone 12" Dream Version)
3. Logg / (You've Got) That Something (Greg Carmichael & John Morales 12" Version)
4. Skyy / Here's To You (Original 12" Version)
5. Rafael Cameron / Boogie's Gonna Get Ya (Francois Kevorkian 12" Instrumental Version)
6. Aurra / In The Mood (To Groove) (Original 12" Mix)
7. The Salsoul Orchestra Featuring Cognac / How High (Original 12" Version)
8. Bunny Sigler / By The Way You Dance (I Knew It Was You) (Unreleased Larry Levan 12" Remix)
9. Candido / Thousand Finger Man (Original 12" Version)
10. The Salsoul Orchestra / 212 North 12th
11. Claudia Barry / Sweet Dynamite (Tom Moulton Album Version)
12. Paul Mauriat And His Orchestra / Love Is Still Blue (Original 12" Version)
13. Loleatta Holloway / We're Getting Stronger (The Longer We Stay Together) (Walter Gibbons 12" Remix)

■詳細
http://www.clubberia.com/ja/music/releases/4291-BACK-TO-MY-ROOTS-DJ-Noris-Salsoul-Mix-DJ-NORI/

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