2010-07-26 UP

Tokyo Black Star × No Milk ―謎の音響ブランドPhononに迫る―

「ちょっと考えられないぐらいのイノベーションが、僕らの周りで起こっている感じです」(Isao Kumano)

 

―神奈川県某所。渋谷から電車で30分、そこから車で15分のところに、その秘密のスタジオはある。「ホントに大丈夫!?」と、若干不安になりかけたころに、その場所が見えてきた。アーティストたちの間では「首都圏近郊で1番音のいいスタジオ」として、ちょっとした名の通っているこの秘密基地で、夜な夜なナノレベルの実験が繰り広げられている。このスタジオの主こそが、通称「熊野さん」ことTokyo Black StarのIsao Kumano(まんま)。このヘンピなところで、ケーブル、謎の液体、見たこともないようなフシギな装置に囲まれて、某ヒップホップからテクノまで、さまざまなアーティストのマスタリングをしている。と同時に、ソコは日本一、いや世界一イノベイティブで、好奇心に満ち溢れた、いい大人たちが集う「音の実験場」なのだ。

 

参加しているのは、元某音響メーカー重役や、謎の音響マニアのおじさま(失礼?)をはじめ、熊野さんのパートナーであるAlex from Tokyoなど。その平均年齢は50歳以上。唯一平均年齢を下げているのは、現場切り込み隊長ことNo Milk。

 

このインタビューシリーズは彼らが繰り広げる、プロユースハイエンド音響ブランド「Phonon」の謎、不思議、魅力に迫るものとして、今後も数回続く予定。今回はひとまず、「Phononって何ぞや?」というところから始めてみましょう!

 

■Phonon

http://www.phonon-inc.com


HAL Shioya (clubberia inc.)

─ まずは、Phononの謎を紐解くに先立って、それぞれのミュージシャンサイドでのお話を聞かせて下さい。Tokyo Black Starは先日リリースされた、フランスのセレクトショップColetteによるコンピレーション「colette ville」に楽曲が収録されましたね。これにはどういった経緯で参加されたのでしょうか?また内容について簡単に教えてください。

Alex : coletteから直接オファーが来たんだよね、このコンピのセレクションをしている人が、だいぶTokyo Black Starのファンで。内容はCOLETTEが世界中の大都市を飛行機で飛び回るっていう「colette ville」っていうコンセプトになってるんだよね。12インチやアルバムに入っていた「Sepiaphone」ていう曲があるんだけど、その曲は去年の秋にDixonが"Innervisions"から出したミックスCDの最後に、Dixonがエディットしたバージョンが収録されていて。彼はとくにその曲が好きで「それをぜひ入れたい」っていうことで。内容もすごくバラエティに溢れてて、バンドっぽいものからエレクトロっぽいものまで。今っぽいcoletteらしいものだよね。ファッショナブルで、落ち着いてて、洗練された感じ。

熊野:アートワークもペンで描いたみたいな、かわいい感じの。Bonjour RecordsとかiTunesで買えるようになるんじゃないかな。

Alex : リリースパーティーもあって、ちょうど僕もそのときヨーロッパを飛び回ってて、タイミングよくリリースパーティーにも出られたんだ。毎週の水曜日に夏限定で、セーヌ川沿いのエッフェル塔の下でRespectっていうオーガナイザーチームがやっている「ete d'amour」っていうパーティーがあって、そこでやったんだけど、リゾートっぽいところでとてもよかったよ!ガンガン踊るっていうよりは、もうちょっと社交的っていうか、おしゃれな感じで。

─ 最近はTokyo Black Starとしてはどんな活動をされていますか。

Alex : リリースとしては、今年の夏にベルリンのレーベル"Mood Music"から、リミックスを1曲出します。そのレーベルを主宰しているSasseっていうDJがいて。彼の「Reflections」ていう曲のリミックスなんだけど、それが7月中にリリース予定だね。
3~4年前に、イタリアのファッションカンパニーで"Slam Jam"のレーベル"Reincarnation"の1番最初のタイトルを出して。で、そこから新しいEPを9月に出す予定だね。
彼らと交流があって、この間Tokyo Black Starのライブでヨーロッパに行ったときに、ボローニャで「Robot」っていうフェスティバルがあって、彼らもそのフェスに関わっていたり。すごいおもしろい動きをしてるんだよね。遊びもして、ちゃんとファッションビジネスもやって、音楽も、パーティーもやって。CARL CRAIG & THE INNERZONE ORCHESTRA「Live In Rome」っていうDVDを出してたりとか、Daniele BaldelliのCOSMIC SOUNDのミックスCDを出したりとか、すごいおもしろい動きをしてて。ずっと彼らと交流を持って、これからも一緒にいろいろやりたいなと。ちょうどアルバムを出したときも、僕らとInnervisionsとSlam Jamで一緒にスカーフを作ったんだよね、シルクの。それを限定ボックスセットに入れて。

熊野 : あとはね、Shigeru Tanabuさんが"UnderTone Recordings"っていうレーベルを始めたのかな。で、藤枝伸介さんのフリージャズみたいな、現代音楽みたいな曲のリミックスをやって、今度リリースされるんですよ。ダンスミュージックとかそういうカテゴリの音ではなかったんだけど、これがまた音響的に攻めようかと思ったら、どこからそうなった(?)っていう感じになっちゃって。原曲がすごくいいんだよね、和っぽくて。琴が入ってたりしてしびれるんだよね。配信日は未定だけど、iTunesとかBeatportで買えます。
このレーベルはチャレンジしてる感があるんだよね。1枚目はテックハウスだったのかな。で、Tanabuさんもリミックスやってて、僕はそれではベルリンっぽい感じのリミックスで。だから割とダンスミュージックっぽいことをやっていくのかなと思っていたら、今回がフリージャズっぽい感じだったから、おもしろいなぁと思って。曲聴いて、アレックスに「これどう?」って言って聞いたら、「Yeah!」って。で、そのままTanabuさんに電話して「Tokyo Black Starでやっていいですか?」って。

─ 次はNo Milkさんが"YORE Records"からリリースするスプリットEP「Tokyo Connection EP」についてなんですが、まずタイトルは?

No Milk : 「ダイナマイト☆ポップス」「ガラスの三十代」っていうタイトルです。

一同 : (爆笑)

No Milk : レコードの盤にはそう書いてあるんですが、残念ながら配信はカタカナや日本語が入っているとそれができないらしいので、配信用には英題がついています。今回のリリースは日本人アーティストによるEPで、東京でディープハウスをやっているRodenionとKez YMと3人で1枚を出しています。せっかくだから日本語が入っているおもしろいジャケにしたいっていうリクエストがAndy VazってYOREのレーベルオーナーからあって。「YORE」って「昔」っていう意味らしいので、盤自体にも「昔レコーズ」ってプリントされているんです。正規リリースで"YORE"から25番目のリリースになるんだけど、せっかくだったら遊び心が入った感じにしたいって言われて。みんなそれぞれ邦題と英題と両方用意して、アナログ盤だけはカタカナとか漢字を使ったりして。ヨーロッパの人が手にとっておもしろいんだろうなって。

─ どういった経緯でリリースに至ったんですか?

No Milk : 今回の話はKez YM君が"YORE"と専属契約しているから、Kez君が「次のリリースのタイミングで一緒にスプリット盤出しませんか?」っていう話をしてくれて。だから発起人はKez君なんだよね。
日本人のコネクションで作ったものがヨーロッパにディストリビュートされるのは、すごくおもしろい経験だし、もっといろいろできることがあるのかな?って思ったりしてて。配信では"whatpeopleplay"が、たまに日本人のアーティストをピックアップしてくれるので、そういう意味ではああいうドイツのシーンとうまく関わりができて、そのうちむこうに行けたらいいなって思ってます。

─ 今後のリリース予定はありますか?

No Milk : Ryo Murakamiのやっている"PAN"っていうレーベルから年末ぐらいにEPを出す予定ですね。2010年の年明けのカウントダウンパーティーにたまたまRyo君と居合わせて「今年はいろいろやろうよ」って話が進んで。"PAN"は新しいレーベルで、今はまだ1枚ぐらいなのかな。そこの3番目でリリースする予定です。

─ 最近3人が関わっているウワサのプロユース音響機器ブランド「Phonon」について伺いたいんですが、まず「Phonon」について、はじめたきっかけや、何ぞやというところを教えてください。

熊野 : 僕がスタジオをやってまして、そこでマスタリングなどもやっているので、音質の研究も常々やっているわけです。そこで村山さんていう元某企業の取締役の方がいるんですが、その方と最初電線の研究を始めたんですね。一緒に電線研究を始めたところ、割といいものができて、仲良くなったわけです。そしたら「こんなのもあるよ」って言って、僕がどんどん仕事にそれを導入して、いい結果が出てきたので「メーカーを作りましょう」みたいな話になり今に至ります。
扱っているモノの幅は広くて、液体から、見たことないような装置から、普通に業務に使えるような電線からヘッドフォンまで。音に関わるもの、音響製品の総合ブランドということですね。

─ どんな製品がありますか?

熊野 : まず前のHideo Kobayashiさんのインタビューに出てきた「Phonon Liquid」っていう液体ですね。これはケーブルやら、いろいろな信号が流れているところに塗ると、びっくりするほど音がよくなるというもので。これは今楽器屋さんで取り扱いしてもらっているので、一般の方でも買うことができます。
あとはおもしろいもので「PHD」というのがありまして、これは今までの音を出す装置とまるっきり違うやり方でいい音を出すものなんですが、それを渋谷のHarlemさんの導入していただくことが決まりまして。6月末から現場でガンガン聴けるようになっています。みんなびっくりするぐらい音がいいです。

No Milk : 空間自体の閉塞感がなくなったりとか、音の輪郭がはっきりわかって、体に染み入るって感じで。音の立ち上がりを正確に再生すると、耳のフォーカスが楽に出来て、音楽がより楽しくなると思いますよ。

─ 「PHD」とは、何者でどういう仕組みなんですか?

熊野 : これは普通のスピーカーとはだいぶ違うんですよ。超音波を出していて、超音波を感じられるというものなんですが。超音波って聴こえないはずなんですが、その音が伝わる効果があります。それに慣れちゃうと、それがないと曇ったメガネで見ているみたいな感じですね。これは体験してもらわないと、なかなか伝えるのがむずかしいんですけど、やっぱりまずはHarlemさんに行ってもらって、聴いてほしいですね。
あとはヘッドフォンを出しますので、そのテクノロジーをヘッドフォンに応用しています。これは今いろんな人に聴いてもらったり、評価をもらっているんですが、評判がとてもいいです。プロフェッショナルの中でもトップの人たちにすばらしいって言われてますね。今のところダメって言われたことはほぼないですね。それぐらい自身があります。ホントはどの製品もそのぐらいのレベルにあるんですが、ほかと比べるものがないものが多いので、少しずつみんなに体験してもらいたいですね。

─ つまり今までこの世の中になかったものができているということですよね?

熊野 : そうです。特許を取得していたり、申請中だったり、本当に独自のものですね。ちょっと考えられないぐらいのイノベーションが、僕らの周りで起こっている感じです。

No Milk : ほとんどが新しい発想のおもしろい製品です。

─ ほかにどういうクラブで体感できますか?

熊野 : 「PHD」は今のところHarlemだけかな。あとはWAREHOUSE 702さんにも1回使ってもらってますね。

Alex : elevenには1回「Time Warp」のときにデモで使ってもらって、すごい興味は持ってもらってますね。あと「gallery」だね。クリプシュのシステムでやばかったんだよね。

No Milk : あとはゴールデンウィークにUNITであった、dj KENTAROやHIFANAの KEIZOmachine!やDJ UPPERCUTが出ていたイベントで使ってて、非常に評判よかったですね。エンジニアのUrbanさんも「スタジオにいるみたいだから、調整が目に見えるようにできて楽しい」って言ってくれて。来てたお客さんが気づいてくれてたかどうかはわからないですけど、いい音だったのは間違いないですね。

─ アーティストの方々からの評判はいかがですか?

熊野 : アーティストの人たちは直感的に音の伝わり方がわかるので、みんないいって言ってくれてますね。Hideo KobayashiくんとかTokotoさんとか、あとはごそっと買ってくれたのがDJ HAL君。ドスモッコスのモリキ君は「全部ほしい」って言って、ほとんど全部スタジオに揃えてくれてるんですよね。metalmouse君はPHDを導入してくれましたね。STEREOCiTIもプライベートスタジオでPHDを使っていますね。

Alex : 僕もヨーロッパでツアーしているときにみんなに聴かせたりとかして、ヘッドフォンのほうはAmeのフランクだったり、Dimitri from Parisとか、Dixonとかに聴かせてます。Steve Dash(注)と一緒にIntegral SoundsをやっているGeorgeにもサポートしてもらってて、すごいいい評価をもらっています。あとCarlos Mendesっていうグラミー賞をもらっているエンジニアで、CommonとかJustin Timberlakeを手がけている人もヘッドフォンが欲しいって言ってくれてて。海外に関しては始まったばかりだけど、トップスタジオに何件か行っていて、今コメントを待っているところです。

(注:世界中のクオリティの高いクラブを手がけるサウンドシステムデザイナー)

─ 今後「PHD」を体感できるところはありますか?

熊野 : いろんなところから「出してほしい」っていう話はあるんですけど、人数が本当に少ないからね。行ってると本業ができなくなっちゃうからさ。

No Milk : まずはHarlemで体感っていうのが、現状のクラブでは唯一できるところなので、ぜひそちらで体感してみて下さい。

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