
台風12号の影響により開催中止を余儀なくされたMetamorphose2011。関係者にとっては11年目に迎えた試練の日となったはずだ。
その日、LUNAR STAGEに出演予定だった2562ことDAVE HUISMANの1日の予定は目まぐるしく変わる。その晩、幸いにも都内のクラブ、UNITでのプレイが決まったが、2時間だったプレイ時間は1時間と短くなった。「1時間ではDJの流れを作りきれない。」と、やむを得ずライブセットへと変更となったが、DAVEにとっては、実に史上6回目のライブセットだという。夕方の6時だから、あと5時間ほどある。アテンドのユウサク氏はライブのための機材を探しに楽器店を走り回ることになる。
プレイが始まるころには、フロアは熱気で溢れ返っていた。フェスティバルに行きそびれた、音に飢えたクラウドたち。すれ違うのが大変なくらいで、エントランス前には長蛇の列、入場規制もかかったほどだ。
そのライブから一夜明けた次の日、ランチにオーダーしたお寿司がなかなかテーブルに出てこない、そんなタイミングで私たちは合流した。昨晩の疲れを見せずにインタビューに応じるDAVEの表情は、とても穏やかだった。
Photo by Asami Uchida
Interview & Text by Posivision
─ まず、あなたのバックグラウンドについて教えてください。「2562」という名前はあなたの住む街(オランダのデンハーグ)の郵便コードだと聞きましたが、生まれもハーグなのですか?
2562: 生まれはアムスやハーグに近い別の街で、何年かしてからハーグへ移ったんだ。
─ 小中学のころは、どんな音楽を聴いていましたか?
2562: 子供のころの僕にとって、すでにダンスミュージックはすごく特別なものだった。まだレコードショップやクラブにも通わない年齢のころだったから、わずかに入ってくる情報、例えばメジャーなハウスミュージックのコンピレーションやラジオのチャートを繰り返しチェックしたりして。憧れるクールな世界のものだった。当時は今ほど簡単に情報が手に入らなかったから、なおさら魅惑的に思えて、余計夢中になる…そんな感じだった。
─ 家族に音楽好きはいましたか?
─ 音を作り始めたきっかけは?
2562: ダンスミュージックが好きでDJをしていたから、そのうちに自然と自分で作りたいと思い始めた。「こんな音があったらいいのに」というところが始まりだった。でも、音楽を作るにはコンピューターの使い方やいろいろな複雑なことを覚えないとならないだろう?それが難儀で躊躇していた時期もあったけれど、あるとき決心して、CUBASEを買って勉強を始めたんだ。
─ 作り始めたころはダブステップではなくテクノでしたか?
ああ、A Made Up Sound名義で。
─ ダブステップと出会ったのはいつですか?
2562: 05年頃、ロンドンのRINSE FM(http://rinse.fm)を聞いていて知ったんだ。ダブステップは知っての通りUK発の音だから、当時オランダではまだパーティはほぼなくて、音源も手に入りづらかった。
─ それで作り始めたのがTectonicからのリリースとなるAerialのサウンドだった、ということですね。Tectonic主宰のPinchとは元々知り合いだったのですか?
2562: いや、彼らの音の趣向がいいなと思ってまずAppleblimへトラックを送ったところ、気に入ってもらってPinchも送るといいと言われてコンタクトを取った。そこからAerialのリリースへとつながった。
─ Pinchは、イギリスのブリストルをベースに活動していますが、あなたもブリストルへ行きましたか?
2562: ああ、ブリストルでは何度もプレイするチャンスがあって、09年には彼らがやっているパーティSubloaded(http://subloaded.co.uk)でもプレイしたよ。Yusaku Shigeyasu: 僕もFREE ROTATION FESTIVAL (http://www.freerotation.com) でプレイした前後の2週間ブリストルへ行きましたが、本当にいい街ですよ。人口が50万人ほどしかいないんですが、アーティストは東京と同じくらい、もしくはそれ以上の数がいる。学生も多いし、緩やかで音楽や芸術が育まれる素地があるのかもしれないですね。
写真左:2562
写真右:Yusaku Shigeyasu
─ 今もデンハーグに住んでいるのですか?
いや、1年前にベルリンへ移ったんだ。ガールフレンドがリサーチの仕事をしているんだけれども、ちょうどベルリンの機関からの仕事を受けることになって、それで移る際に僕も一緒に行くことにしたんだ。それまでもギグでUKやドイツを行き来していたから、移るのは自然なことだったんだ。
─ ベルリンは住むのにもきっといい場所ですよね、物価も安くて…
2562: たしかにクリエイターも多いし音楽をやるにはいい環境だと思う。ただ、物価に関して言えば、どんどん上がってきているのも事実。新聞に載っている貸家やアパートの値段を見ると、この1年の内にもみるみる上がってきているのがわかる。海外からの投資家がビルや不動産を買って土地の値段も上昇している。だからある意味、今までは「風変わりでエキサイティングな街」だったベルリンはこれから変わっていくだろうね。家賃の高騰に伴って、活動が苦しくなってきているアンダーグラウンドなクラブやイベントも多くて、ちょうど集会を開いているよ。この事態にどう対処していこうかって。
─ アーティストも沢山ベルリンへ移り住んでいますね。ベルリンでオススメのクラブはありますか?
今度ベルリンを訪れたときには、HARD WAXのオーガナイズするパーティ「WAX TREATMENT」をやっているクラブ、HORST(http://www.horst-krzbrg.de)へ行くといいと思う。音もすごくいい。
─ FUNKTION-ONEを使っているのですか?
Yusaku Shigeyasu: FUNKTION-ONEではありませんが、すごくいい音だと評判でKILLASANっていう大阪のサウンドシステムからわざわざ機材を取り寄せて使っているそうです。
─ ベルリンへ行ったらぜひ訪れたいですね。ところで、フェスティバルはいかがですか? いろんな国でプレイしているかと思いますが…。
2562: フィンランドのヘルシンキで開催されるFLOW FESTIVAL(http://www.flowfestival.com)やポーランドのUNSOUND(http://unsound.pl/en)などでもプレイして、今度はベルリンのBERLIN MUSIC WEEK(http://www.berlin-music-week.de)でプレイする予定だよ。
─ 各地でプレイしていますが、それぞれのシーンの違いはどうですか?
2562: 正直な話、その違いは僕にとってはあまり重要なことではないんだ。ある国でプレイをしたとしても、僕が見たのはほんの一部の、ひとときのことであるから、シーンがどうだとは語ることはできないんだ。
─ オランダのシーンについてもですか?
─ わかりました。話の中心をあなたの作品、楽曲制作に戻します。あなたの作品は、1st、2nd…とリリースのたびに驚きがあります。いつも新しい試みをしていると感じるのですが…
─ 2011年のはじめに3rdアルバム「Fever」をリリースしましたが、これはTectonicからではなく、あなた自身のレーベルWhen In Doubtからリリースされていますね。自身のレーベルを設立しようと思ったきっかけは?
2562: これも自然なことだったんだ。そろそろ自分でやってもいいころじゃないかと。アートワークをセレクトしたり、リミキシングやマスタリングをオーガナイズしたり…。
─ アーティストによっては、曲を作ることに専念したいから、レーベルの運営やプロモーションなど、音を作る以外のことをやりたがらない人もいますが、あなたはどうですか?
音楽を作るのが好きだけど、おそらく、毎日好きなだけ時間があって作るのと、やらなければならない仕事をこなしつつ、その間に「ああ、音楽にもっと時間を費やしたい!」「こんな音が作りたい!」という気持ちが積もってから作るのでは、違うものが出来上がるんじゃないかと思う。
─ 毎日美味しいものをお腹いっぱいに食べたら、もうあまり食べたくなくなってしまったり、お腹が空いていると食べたい気持ちが募ったり…ということと同じでしょうか?
─ どんな環境で曲作りをしていますか?
2562: 1年前まではハーグのスタジオで全て作っていた。スタジオといっても自宅にCubaseといくつかの少ない機材があるだけで、ガールフレンドと小さな部屋に暮らしていたから、音楽を作るのもご飯を食べるのも同じ部屋で…。でも全てがそこから始まったんだ。2562というコードのついた郵便物が届くその部屋で、ひたすら音楽を作り続けた。そのころは、まさか自分が音楽だけで生活していけるとも思っていなかったし、そこで作ったものが僕のことを、日本やベルリン、それに世界中のいろんなところへ運んでくれるなんて思いもしなかった。だから今、実は自分の名義の「2562」に少し違和感を感じ始めてるんだ。2562という名前には、その場所から生み出されるものという意味も込めていたから。
─ 現在の住所、ベルリンでのコードは?
2562: 102XX。フリードリッヒスハイン辺り。ちょっと覚えづらいよね。
─ ベルリンのスタジオはいかがですか?
2562: ベルリンも自宅兼スタジオで、どこか別の場所へスタジオを構えてそこへ詰める、というスタイルではない。だいたい、生活をしている中で音作りのヒントを得ることが多いから、すぐ近くにあって作り始められる方がいいんだ。例えば、シャワーを浴びていたり散歩をしていたり、いろんな瞬間にインスピレーションが来る。それがリズムだったりフレーズだったりその時々によるけれども、それをCubaseで切り貼りしたり、いろいろと試してみる。
─ 本や映画、アートからインスピレーションを受けることもありますか?
2562: 全くなくはないけれども、毎日チェックして聴いている音楽からヒントを得ることがすごく多い。
─ どこで音源を手に入れていますか?
本当に数多くの音が聴けるから、インターネットで情報収集をすることが多いけれども、週に1回はレコードショップの実店舗へ足を運ぶことにしている。ベルリンにいる今だと、HARD WAX(http://hardwax.com)などによくお世話になっている。本当に沢山の音楽が溢れている中で、信頼できるバイヤーのフィルターを一度通った音楽が集まっているレコードショップというのは、とても貴重な存在。オランダだとCLONE RECORDS(http://clone.nl)とRUSH HOUR(http://rushhour.nl)。
─ あなたの音楽人生に大きな影響を与えたアルバムやアーティストを教えてください。
2562: まず挙げたいのがBOARDS OF CANADAの「Music Has the Right to Children」と「Geogaddi」。とてもエモーショナルな音で、ある種の感情を喚起させられるんだけれど、実験的でもあり独自なサウンドなんだ。だから心を掴まれる。あとは、MATTHEW HERBERTなどの美しいハウスミュージックからも影響を受けた。クラッシックなドラムンベースだと、GOLDIEの「Timeless」はとても重要な1枚で、僕の音楽の世界の幅をぐっと広げてくれた。HERBIE HANCOCKのジャズも好きで、どのアルバムとは特定できないけれども"Maiden Voyage"は間違えなく僕の中でのベストトラックのひとつ。
─ 音楽を通じて伝えようとしていることはありますか?
「これを伝えたい」と言葉で説明できるものはないけれども、制作のときの感情がそのまま音楽に込められていることはあるよね。結果として僕の作った音楽を聴いて共感してくれる人が何人かあれば、それはすごくうれしい。
─ 機材としてはどんなものを使っていますか? もし秘密でなければ教えてください。
2562: このインタビューが終わったら、E-MUのサンプラーを買いにいこうと思っているし、特に秘密にするつもりはない。けれども、あまり重要な話ではないと思うんだ。ソフトウェアもハードウェアも、その人に合ったものを使えばいいと思うし、大事なのは、表も裏も知り尽くしてそれを十分に使いこなして自分の思い通りのものを作れるようにすること。「何を使うか」よりも「どんなものを作るか」。道具を使いこなして、他人と違ったものを作り上げること。それが大事だと思う。
─ ありがとうございます。これは、音楽を作る全ての人、それに音楽だけでなく何かを作る人全てに向けて言える言葉だと思います。そろそろ時間が近づきました。これからの予定について教えてもらえますか?
2562: 今年はレーベルを作ってそれに時間を取られたから、来年はもっと音作りに専念したいと思ってる。「作りたい!」という欲求が積もってきたからね。あとは、When In Doubtのレーベルからは、まだ自分の音しかリリースをしていないけれども、今後は注目するニューカマーの音も出していきたい。まだその名前は時期が来ないと明かせないんだけれどね。はっきりクリアにプランを決めて…というようにはあまりしたくないんだ。レーベル名「When In Doubt」にあるように、はっきりしなくてもいいと思うんだ。
Yusaku Shigeyasu: その時その時、自分の心が決めたことに従って動けるようにする。そんな感じ?
2562: ああ。
Yusaku Shigeyasu: その時その時、自分の心が決めたことに従って動けるようにする。そんな感じ?
2562: ああ。
─ 最後に、日本の読者へメッセージを。
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