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「時間の音楽」

「時間の音楽」

ここにあるのは時間の音楽。

頭の中であの子の記憶の断片を探る。
「タンターン ンタンタンタンタンタン…」
Windows 95の起動音のように、ゆっくりとそれは現れる。一日仕事しなくても何とかなるかなと、地平線から出るのをギリギリまで迷っている怠け者の太陽の昇り方にも似ている。

グリンピースが苦手で、給食の時間に出ると、その緑色の物体を箸で丁寧に皿の隅へよける。
誰とも争ったりせず、成績は良くて、クラスでも一目置かれる女の子。けれど、どこか力が抜けていて、そこにみんなは安心するのだけど、僕も例外じゃなかった。力の抜け方はその瞳に特別よく表れていて、その視線の先にはたいてい心地の良い空間が広がり、そこではいつも色々な物事が自然と良い方向へと流れていくように思えた。
中高域が少し強めで、包み込むような温もりのある、混じり気の無い澄み切った声。その声が呼ぶ僕の名前が今でも頭に響く。
絵は決して上手くはなかったが、絵心があったと思う。どちらかというと細い線で描かれるスケッチは、無機質なものも今にも動き出しそうで、僕を惹きつけた。
あの子の転校が近くなったある日、教室で彼女は声を出さずに泣いていた。声をかけられず、僕はただ横目で見るだけだった。そのとき、教室に備え付けられた時計は、壊れているかのように、針が動いていなかった。

断片はそれだけ。それが増えたり減ったりしながら、あるとき突然空白ができる。そして、その後すぐにまた僕らは学校に戻っている。その繰り返しだ。運よく空白を狙って眠りにつけなければ、そのままそこから抜け出せないことが何度もあった。

彼女は来年結婚し、知らない人とたぶん幸せになる。

ミヒャエル・エンデの「モモ」に出てくる“時間どろぼう”は本当にいて、僕の時間の花を盗んだ。致死的退屈症になって、僕の体はもうほとんどが灰色。物語と違うのは、モモは時間をとりかえすのに失敗し、時間を司るマイスター・ホラは二度と眠りからさめることができないこと。でも、時間の国はやはりそこにあって、僕が代わりに時間の花をとりかえそうと試みる。一輪だけの花をしっかりと握り締めて。

ここにあるのは時間の音楽。抽象から具象へ、物語は進む。時計の針は止まったままで。

「おわかれのあいさつをしよう。」

入場料金■前売り券 2800 円(MIX-CD by Susumu Kakuda+1ドリンク付) 当日券3000 円(1ドリンク付) ※前売り券は下記メールアドレスからご予約可能です。MIX-CDは当日会場でお渡しします。大変申し訳ありませんが、80名の入場制限があります。入場券はお早めにご予約・お買い求めください。
前売り券販売店■Bum The Space 金沢市竪町6-3 (076)208-3677 NEW ACCIDENT 金沢市香林坊2-10-1-3F (076)255-2473
主催■KAKUDA Susumu
お問い合わせ、前売り券のメールご予約■wyatttrobertsdream@googlemail.com 角田 宛

アーティスト・プロフィール

Frank Bretschneider (Raster-Noton, Berlin)
ベルリンの音楽家/映像作家。Komet名義でも作品を発表する。SF小説のラジオ劇と映画に影響を受け、主にサイン波とホワイトノイズを作品の素材としている。1995年には、Olaf BenderとRastermusicレーベルを設立、その後Carsten Nicolai(a.k.a. Alva Noto)のNotonレーベルと合併、Raster-Notonとして共同運営している。

kyoka (Raster-Noton, Berlin)
これまでに坂本龍一等とのStop Rokkasho企画参加やonpa)))))レーベルから3枚のアルバム発表などをし、活動を続ける。2012年にドイツのRaster-Notonより作品「iSH」をリリース。同年4月にはsonarsound tokyoに出演、6月にはパリのセレクトショップcoletteのコンピレーションに楽曲を提供した。

Riow Arai
トラックメイカー/プロデューサー。アルバム『Rough Machine』等の作品でトレードマークと言える骨太なブレイクビーツと神業の如きエディットスタイルを確立する。多数のコンピへの参加やコラボ、リミックス等を手掛ける他、sonarsound tokyoやLOW END THEORY JAPAN等、幾多のイベントに出演。

Kyosuke Fujita
3000NDL、FERARRI、Kyosuke Fujitaと名義を使い分け、各都市でライブやDJ、楽曲制作等を行う。地元金沢では多数のパーティーをオーガナイズした。衣類を中心に藤多がクリエイトするブランド「WYATTT」は、自身が経営するオルタナティブ・スペース「Bum The Space」にて購入出来る。

Susumu Kakuda
DJ/インディペンデント・キュレーター。企画する行事のテーマは社会的な問題を扱ったものが多く、鋭い視点で時代性を捉えたキュレーションには定評がある。その他にも、iTunesで配信する情報番組「KANAZAWA MUSIC FORUM」ではナヴィゲーターを務めるなど、日々、金沢を傑出した文化都市にするために精を出す。

関連プログラム

相川 勝/ASUNA/penquo 展覧会
「ORIGINAL SOUND BIG BANG, AND SINCE THEN」
http://susumukakuda.tumblr.com/post/31120490189/asuna-penquo-original-sound-big-bang

Frank Bretschneider 特別レクチャー
「音と映像との相互アクション」
http://susumukakuda.tumblr.com/post/31120371870/frank