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King Street Sounds presents Nick Jones Japan Tour 2010

■Nick Jones
アメリカで何十年も前からプレイしている決して若くないDJの多くが、「当世風のテッキーなサウンドもこなせるDJでなくてはならない」という先入観を持っておられるようで、そんな場面に遭遇するたびに私は、正直、失望してしまう。もちろん本人が好きなようにDJをして、それで皆がついてくれば最高だけれども、でも本当に聴きたいのは、「今でも俺は現役でやれるんだ」という強がったDJよりも、「俺の一番の得意なスタイルで皆に楽しんでもらいたい」というストレートな音楽表現。そう思いませんか?
今回一年振りの来日となるNick Jonesは、故Larry Levanのサウンドスタイルを継承する、ガラージ特有の黒いグルーヴとスピリチュアルなミックスが身上。Love Lite, 21 Hudson, Tracks, Zanzibar, Black Box, Sound Factory Bar, The Shelter, Body & Soulと、多くの伝説的クラブでプレイし、Tony Humphries, Timmy RegisfordのWBLS、Kiss FMのミックスショウにも度々ゲストとして迎えられるなど、ニューヨーク、ニュージャージーから発信されるダンス・ミュージックが世界を席巻していた歴史的な時代に、シーンの中心で活躍した稀有な存在だ。最近では2005年にはキングストリートの12周年アニヴァーサリー記念CD 『King of NY 2』 を Andre Collins と共に手掛け、素晴らしいミックスを披露した。またスタジオワークにも精通し、Wave Music, King Street Sounds, Nite Groovesなどのレーベルから数々のヒット曲を生み出し、代表作の一つともいえるColonel Abrams をフィーチャーした "As I Take You Back"は今年5月にリミックスが発売されTraxsourceのチャートを上昇中。いま再び注目を集めている。
ニックが、誰かに「お前はどんなDJをするんだ?」 と尋ねられた場面に遭遇したことがある。そのとき「俺はオールドスクール・ハウスだよ、聴きに来いよ」 と堂々とそして柔らかな表情で答えた彼の姿は、はたから見ていてとても頼もしかった。実際のプレイも安定していて人間味に溢れ、何よりも優しさと温かさに満ちている。音楽は、冷えた心を暖める、愛しい誰かが作ってくれたスープのような存在になれる。誰かが洗ってくれた心地よいタオルケットのような存在になれる。けれどもそれは「相手を喜ばせるために自分に何ができるか」をちゃんと心得ているプレイヤーだからこそ可能であって、ニック・ジョーンズはそれが出来る素晴らしいDJだ。数多くのDJが来日する昨今、リスナーの耳も成熟してきたいまだからこそ、是非多くの人にニックのDJを聴きに来ていただきたいと思っている。 (Nagi - Dazzle Drums)