河村 祐介

OTOTOY編集部/ライター/中年(初等科)

remixお取り潰し後、LIQUIDROOMを経て、現在は音楽配信&メディア、OTOTOYへ

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ストレージのなかの文化

 今年前半は頭がおかしくなったように中古のCDを買い集めていた。ここ数年はスカ、ロックステディ、ルーツ・レゲエ、ダブのリイシューCD。「アナログで」という方々もいるが、データを抜き出せる利便性とライナーノーツというふたつの点で、これらのジャンルに関しての収集のメディアとしては、クリアな音質とコストパフォーマンス(アナログの良盤は天井知れず)を含めて、これが一番という結論に至った。が、最近のナイスなクオリティの7インチはモノと割り切って買ってしまっている。
 ダンス・ミュージックはどうだろうか、数百円と安くなった90年代から2000年代初頭の名盤を集めてはデータにしている。数テラのハードディスクにはこうしたデータが並んでいる。新譜に関しては4年ほど前からヴァイナルを買うのをやめた、だって高いんだもん。2000円近くで多くて4曲、データならロスレス(MP3なんて金出すか)で下手したら20曲ほど買える。所有を切り捨てれば、聴けぬものなどないと割り切ってしまえばそれでなんとかなる。年代にして、60年代から2016年代までの、偏ってはいるがある趣向の音楽としてはそれなりのものが詰まっている。
 ふと考えたことがある、いまこの次の瞬間、死んだら。CDは大量のゴミとして捨てられる、ハードディスクは無頓着な親類が下取りに出し、とあるアジアの大国のジャンク屋に流れ、流れてフォーマットされる。フォーマットされて次の持ち主は、にぎにぎしい顔で自らのPCにつなぎ、バックアップを取る、かつてスタジオワンのレアCDから抜き出された極上のロックステディが書き込まれていた部分に、大量のエロ動画を書き込まれていく……。