Yong-Bo Bae

トウキョウ・デジタルミュージック・シンジケイツ株式会社 代表取締役

クラブミュージック専門配信ストア「WASABEAT」を2007年より同社で運営する傍ら、インターネットラジオ局「Block.fm」のプロデュースに参加するなど、さまざまな音楽配信サービスの事業開発に携わる。2015年4月、デジタル配信とレコード生産販売のプラットフォーム「QRATES」をスタート。

https://qrates.com

変革の始まり

 2015年は自分の人生のなかで、仕事的にとてもチャレンジングな一年でありました。
 デジタル配信から受注生産でレコードを作るサービス「QRATES」のアイデアをひらめき、資金と開発チームを集めたのが昨年2014年。そして今年に入ってすぐ開発に取りかかり、ようやく完成しローンチできたのが4月末。ローンチさせるといろいろな世界中のメディアから取り上げてもらい、ユーザーも世界中からワサッと集まってきて、なんか凄いことになったなと思っていたら、いろいろと手が回らないことが社内オペレーションや提携先のプレス工場のほうで一気に露呈。それから全力でサービスの改善に明け暮れ、新しい機能やメニューも少しづつ実装し、ようやくですがサービスそのものは自信を持って使ってもらえるクオリティになりました。ユーザーの7割以上が欧米から利用してもらえて、世界の人に使ってもらえるサービスを日本で作れたことはとても自信にもなりました。
 こんな具合で、一年自分の仕事ばかりに明け暮れていて、その他の音楽業界がどうなったとかはまったく実感できていないのが正直なところなんですが、ひとつ挙げるとしたらApple MusicだったりLine Musicだったりといったストリーミングサービスがいよいよ本格的に日本で始まったことは何か変革の始まりになって欲しいと期待しています。実際、アメリカでもレコードがこんなに騒がれるほどのブームになったのは、いわゆるデジタルネイティブなキッズたちが大人になり、ストリーミングサービスで知って好きになった音楽をバイナルで集める流れができたからだと聞いています。デジタルをプロモーションツールとして高度に駆使しながら、さまざまな音楽製品を受注生産で作っていく「インフラ」を作りたい。そして、これをバイナルで実現しようというアイデアで「QRATES」はスタートしました。
 新しいアーティストや音楽を知るきっかけとして、ストリーミングサービスが提供しているプレイリストやラジオはもう手放せないものだし、どんどん音楽をリーズナブルに聴いて、本当に好きになったアーティストの音楽は“形ある作品=レコード”として手に入れるという流れは至極シンプルなことだと思います。このストリーミングによる波及がここ日本でどういうインパクトを与えるのか、大きな興味を持って観察を続けていく2016年になりそうです。
 幸いにもバイナルのビジネスを始めたことによって、さまざまな業界の熱い方々と新たにコネクトでき、目の前の世界が驚くほど広がっていった今年でしたので、来年も仲間や応援していただける方々とともに日本から世界を切り開いて行くのみだと思っています。どこかでお会いできましたらまたお声がけください! 良いお年を!