蔵元 健一

株式会社ウルトラ・ヴァイヴ コンテンツ事業部 副部長

国内外のインディー・レーベル流通を行っているディストリビューターです。

http://www.ultra-vybe.co.jp

 年内のリリースも一息付き振り返ってみると、2015年はクラブミュージックにおいてCDというフォーマットでのリリースが本格的に精査(淘汰)され始めた年だったかなと思いました。世界においてまだCDフォーマットが市場の大きなシェアを持っている日本とドイツでは、アルバムのメインとなるセールスはCDですが、それ以外の国ではアナログ盤とデジタルの2WAYに2分化したリリースも多かったように思います。その影響からか、日本市場のみCD化というタイトルも洋楽のマーケットでは増えてきましたね。
 今年は日本でのストリーミングサービスも本格化し始めた年でした。当社で流通を行っている国内外のレーベルもデジタル、CD、アナログに対するスタンスはさまざまで、今は過渡期といった感じなのかなと思います。来年の今頃はどうなっているのか想像もつきませんが、アーティストやレーベルにとって明るい未来であることを願います。
 リリースで印象に残ったのはDJミックスが多かったです。年明け早々にリリースされたニーナ・クラヴィッツの『DJ KICKS』、デジタルリリースに移行したOSTGUT TONのDJミックスシリーズでファンクションの『Berghain 07』、シリーズ50作目のアニヴァーサリー作品となったDJコーツェの『DJ KICKS』、世界へと活動のフィールドを広げるDJ NOBUの最新DJミックス『Nuit Noir』は、それぞれに強烈な個性を放ちながら今の時代にフィットした作品で良く聴きました。コンピレーションの形態ですが、年末に臨発で届いたリッチー・ホーティン久々の新作『From My Mind To Yours』も彼の本格的な音楽制作へのカムバックを想起させる素晴らしい作品でした。
 アルバム単位では今年15周年を迎えたDIALからリリースされたWhite Materialのボス、DJリチャードのデビュー・フルアルバム『Grind』、来日も実現したKompaktのデイヴ・DK『Val Maira』、奇才モーリス・フルトンのBoof名義による最新アルバム『The Hydrangeas Whisper』、ダスティー・キッドの4作目『Not So Green Fields』、NYハウスの重鎮ティミー・レジスフォードがリリースした最新作『BRANDED SHELTER』等は印象に残りました。彼はAIRでの最後の週末の公演が控えているのでDJプレイも楽しみです。上記のDJノブでも数曲使用しているNorthern Electronicsの作品は、アナログとデジタルでしかリリースされていませんが、とてもクオリティーの高い作品をリリースしていました。
 日本人アーティストではゴンノさんがMule Musiqからリリースした最新アルバム『Remember The Life Is Beautiful』が素晴らしい作品でした(リリースパーティーでのアグレッシブなライブも最高でした!)。レーベルではネットレーベルからスタートした横浜の若いクルーが運営しているレーベルTREKKIE TRAXがCDとアナログをリリースして注目を集めました。彼らのようなネットレーベルで世界と日本、あらゆるダンスミュージックのジャンルを自由に行き来している新しい世代は、今後日本でもっと注目されて欲しいと思います。
 2016年もよろしく御願いします。